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INTERVIEW
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椎名林檎という才能に向き合い、自分を見つめ直した坂本真綾の最新作について

text by 金光裕史

坂本真綾と椎名林檎。
この組み合わせ、ありえない組み合わせのようで、よく字面を眺めていると、ありかもしれない、と思えるから不思議だ。事実、作詞・作曲・編曲・プロデュース/椎名林檎、演奏/SOIL & ”PIMP“ SESSIONS、歌/坂本真綾という組み合わせによって生まれた新曲「宇宙の記憶」は、坂本の新たな側面を引き出した。そして同時に坂本真綾という存在は、どんなふうに手を加えようと坂本真綾にしかならない、という事実が露わになった。それを強く実感するのが、坂本の作詞・作曲による、カップリングの「序曲」。これが実に素晴らしい。自分には何もないという思いから、それが何なのか探そうとしたのが、彼女のシンガーソングライターとしての原点だが、それを突き詰めた先に何があるのか、表現者として俯瞰して歌にしている。それもまた、椎名林檎という才能に向き合い、自分を見つめたからに他ならない。坂本真綾の大切な1枚となった。



(これは『音楽と人』2019年8月号に掲載された記事です)



いろいろ話題のシングルですが、何よりいちばんグッときたのは「序曲」です。

「好きそうですよね(笑)」

真綾さんが手がけたこの曲の歌詞、ここ何年かの中でもダントツに素晴らしいと思います。

「それはありがたいです」

その話もじっくりしますが、まず今回、椎名林檎さんと一緒に制作に入ったきっかけを教えてください。

「ふふ。椎名さんと私がやるって聞いて、どう思いました?」

最初は意外だなと思いましたけど、正反対のようで、どちらも〈演じる〉ことに長けている人だな、って印象ですね。

「なるほど、編集長らしいコメント(笑)。これはまず、テレビアニメ『BEM』の主題歌を唄うことになって、どんな曲にするか会議をしてたんですよ。その時、椎名さんのお名前が挙がったんですけど、もうサウンドトラックはSOIL & "PIMP" SESSIONSが手がけることが決まってたんです。『BEM』は『妖怪人間ベム』のリメイクなんですけど、それにあたって舞台がニューヨークになって、ちょっとダークで、大人っぽい世界観になるって聞いて」

SOILをチョイスする理由がなんとなくわかりますね。

「そうなんですよ。この作品はこうしたいんだなっていうイメージが湧きやすかったんですね。アニメの主題歌を唄わせていただくことは多々ありますけど、多くの場合その主人公はティーンエイジャーで、歌詞の内容にも未熟さや青さを求められることが多かったんです。でも『BEM』は、私の年相応の世界観にグッと近づけていいんだ、って。そこが今回、嬉しかったポイントですね(笑)」

やたらポジティヴである必要もないし。

「そう! テーマが全体的にシニカルというか、人間が、自分たちと違うものに対していかに不寛容か、ってことを描いてる作品なんですよ。そういう、広い視野で物事をとらえるような歌になるといいなと思っていたところに、サントラはSOILだって情報を聞いて、これ、椎名さんにお願いするチャンスかも、と思ったんです」

椎名林檎とSOILの関係性は深いですからね。

「ずっとご一緒したかった方ですし、何の面識もありませんでしたけど、半分ダメ元でオファーしてみたんです。そしたらご自身のアルバムなどでお忙しいところを快諾していただいて」

なるほど。昔から憧れていたんですね。

「私の音楽をやってほしいかどうか、なんて考えもしませんでした。ただいつかお話してみたいとか、そういう憧れのような存在でしたね。デビューされた当時から、私と同年代と思えない大人っぽさと色気があって、作っているものに関しても、その頃聴いていたポップミュージックとは一線を画していて。この人は表現したいことがあってしょうがないんだな、って印象でした」

そういうところが真逆に感じるんですよね。

「私も、その頃はもうデビューしていましたけど、役者としていろんなものを演じることは好きだけど、自分本来の個性が何なのかわからなくなってて、それがコンプレックスだったんですよ。そんな時に見た椎名林檎さんは自分とは真逆で、ご自身の個性がどこにあるかわかってて、それをどうやったらうまく見せることができるか、まで知ってらっしゃる気がして。だから1歳しか変わらないのに、ご一緒したいって言うのにすごく勇気がいりました」


そしてプロデュースされた感想は?

「最高……それ以外の言葉が見つからない! 私は自分で詞も曲も書きますし、いろんな方にアレンジをしてもらっても、自分のイメージややりたいことはわりとはっきり伝えるほうです。今回も、歌詞は自分で書くべきか悩みましたけど、あえて詞曲にアレンジそして歌録りまで、全部椎名さんに身体を委ねることにしたんです。どうなるか予想もできませんでしたけど、それがすごく刺激的だったし、人に導かれる喜びを感じましたね。私、こうなるんだ、って」

しかし完全に椎名林檎の世界にどっぷりですよね。楽曲だけじゃなくて、資料の歌詞カードすら、文字組にフォントまでガッチリ指定されてて。これだけ見ると、すごくガチガチに縛られたプロデュースだったのかな、と思わされますけど。

「実はそんなことはなく、むしろとても柔軟で、こちらのオーダーをこと細かに聞いて、『BEM』の脚本も読んで、わからないことがあれば聞いてくれて。いい作品にしたいとか、納得いくものを作りたいって気持ちだけがあって、自分がこうじゃなきゃ嫌だとか、こうあってほしいとか、そういう押し付けは一切なかったです」

でも聴いてみると、椎名林檎に坂本真綾が立ち向かってる様を感じましたけどね。

「いえいえ、立ち向かってないです。会った瞬間、こうやってお腹見せてますから(笑)(と、猫がお腹を見せるポーズ)」

あはははははは!

「本当にそんな感じですよ。闘う場所すらなかったです。歌詞も1稿目から痺れました。こういう世界観がいいと思っても、なかなかこうは描けないですよね。椎名さんらしい語尾の置き方はあったとしても、それだけじゃなくて、陰と陽、男と女、全部相反するものがこれだけ並んでいても、ただの言葉遊びじゃなくて、一行一行に重みがあって。1稿目で〈素晴らしい! 自分で書きたいって言ったのが恥ずかしい!〉ってくらいの歌詞なのに、そのあと、歌入れの日までのたった1週間の間に、4稿か5稿くらい上げてくださって。ご自身で何度も推敲してちょっとずつ直してくださるんですよ」

でも曲を聴くと、どうみても椎名林檎の歌詞と曲なのに、真綾さんの声が乗ると、ちゃんと坂本真綾の曲になるんですよ。タイプの違うラスボス対決を見てるような……。

「ラスボスかどうかはともかく(笑)、私、これまでも素晴らしい方々とご一緒してきたじゃないですか。松任谷由実さん、コーネリアスさん、大貫妙子さんのような、その方自身が唄われてもぴったりな曲を、わざわざ私が唄うわけですけど、でもどうやっても私っぽくしかならないんですよね。だからそれはあまり心配してなかったんですよ。私が唄うと私のようにしか唄えないし、絶対そうなるってわかってるから」

達成感があったとしても、もしかしたらそれもまだ序章で、このあと本編が始まるのかもしれない。いい時も悪い時もそう思うんですよ

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