来年2月にデビューから30年を迎えるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。バンドのデビュー30周年の節目に始動したプロジェクト〈THEE 30TH〉に呼応した『音楽と人』2025年11月号の表紙巻頭特集に続き、本サイトでも彼らの歩みを振り返ります。第7弾は、メンバーそれぞれの課外活動を経て、レーベル移籍後に制作された7thアルバム『SABRINA HEAVEN』。今回は、このアルバムのリリース時に行ったメンバーへのソロインタビューの中から、ドラム・クハラカズユキのインタビューをお届けします。


(これは『音楽と人』2003年3月号に掲載された記事です)
ドラムのアルバムだと思った。いや、より正確にいえば、最初に『サブリナ・ヘブン』を聴き終わったときの感想が、キュウちゃんどえらいカッ飛ばしてんなぁ、だったのだ。別にリズムが走ってるとか、一人ハメを外してるとかではない。全然ないのだが、それでもクハラカズユキが腕まくりをしておっ立っているアルバムだと、直感にビンビン訴えてくる作品なのだ。そして、その直感を確信に変えてくれたのが今回のインタビュー。何よりもまず〈ミッシェルのタイコである自分〉を誇るその笑顔は、充実と自信に満ちていた。
アルバム、とにかくもう、めちゃくちゃカッコ良かったです!
「ありがとうございます!(←にっこり)」
その笑顔はやっぱり、自分たちでも手応えアリまくり、っていう。
「そうです。毎回、新しいの作ったあとって、〈いやぁもう最高傑作!〉って思うんですけど、今回も同じように思ってて。うん。で、けっこう友達とかにもチラチラ聴かせて、いいねって言われるとすごく嬉しいですね」
毎回いいって思うのは当然としても、今回はオフがあり、改めて活動再開という展開ですよね。そのことで気分の差は?
「うーん、でもあんまり。3ヵ月休んでたってこと以外、まったくないですね。録る前にスージー・ツアー廻ったし。あんまり(日程は)長くないんだけど、でも、あのツアーをやって、そのままレコーディングに入れたのは良かったですよね。まんま〈やりまっせ!〉って行けたかなって」
はい。以前本誌でも軽くやりましたけど、もう一度昨年の流れをまとめていきますね。01年秋にツアーが終了してオフに入り、ROSSOが始まり、うつみようこさんとの共演(うつみようこ&YOKOLOCO BAND)もあって。あの期間は、今振り返ってどういうものだったと考えています?
「んー……幕張終わった段階で、次に4人で集まるのが翌年の3月1日っていうのはもう決まってて。で、何しようかなぁと。とりあえず、せっかくだからいろんな人とバンドできたらなぁって思ってて。まぁ、ようこちゃんのやつはその前の年からやってたんだけど、アルバム録ろうって話になったから、そこに参加して。そこでやって得たものが、またミッシェル始まった時に、うまい具合にフィードバックできたかなぁって。やってる時はそこまで考えてないんだけど、結果そうなるかな、っていうか、結果そうなった」
合わせる人によってリズムも変わるでしょうし、発見もあるだろうし。
「うん。間、みたいなの。うまく言えないんだけどね。人にはいろんな間があるんだなーと。そういうのはちょっと面白かった」
そこで逆にミッシェルの良さもわかったりするんじゃないですか? 浮気してみて帰る港、じゃないですけど(笑)。
「あぁ。そういうのもあるんじゃないですかね、多かれ少なかれ。『やっぱお前が最高だぜ』って(笑)。『なんやかんや言ってもお前が一番いいよ』っつう感はあるし(笑)」
以前、呑み会で偶然会ったとき、まぁ酔っ払ってたからでしょうけど、「正直ROSSOは悔しかった」って言ってて――。
「え、俺んなこと言ってたっけ? くくくく。そうね、なんか……なんかしたいと思ってたんですよ、オフの期間にね。で、先にチバがROSSO立ち上げてさ、いいなぁって。いや単純にアルバム出すとかね。ま、ようこちゃんとアルバム作ったから、俺ん中ではおあいこなんだけど(笑)。やー、でもそれはね、ちょっとした言葉のアヤでございまして。うざったい女みたいなもんですよ。今までずーっと俺の前にいたオトコが突然違うパートナーとやるって言い出して。酔っ払った時に、ハンカチをこう、キーッ!ってするみたいな(爆笑)。んで、いざ戻ってきたら〈……ねっ?〉(←勝ち誇り笑い)っていう」
はははは! でも、オフの期間に何かやりたいといっても、まったくバンドからかけ離れてたものという発想はなかった?
「一応あったんですけどね。その、ようこちゃんのアルバムを作る時に『一人一曲、曲を作ってきてください』って言われて。で、MTRとか買ってですね、これからは宅録だ!と思ってですね、始めたはいいんだけど、ドラムの打ち込み方がわかんなくて(笑)。しょうがないからそのMTRを近所のスタジオに持ってって、どっか適当にマイク立てて生ドラム叩いて録音して。そのMTRをまた家に持って帰ってギター入れたりして。そのまま、この機会に俺は一人で宅録マスターするぞと計画立てたんだけど………今はそのMTRもタンスの奥底に(笑)」
くくく。もったいない。
「もったいないねー。かなりの高性能なのに。なんかそれはギターがね、いろんな音に変わる性能がついてるんですよ。マーシャルの音になったりさ。でも、それが楽しい、の段階で終わっちゃった(笑)」
ふはははは。じゃ、音楽以外で思い切って何かした、とかは?
「なーんもないですねぇ。………うん……言うほどオートバイも乗ってませんしねぇ。けっこう長かったけど……何してたんだろうなぁ? うーん、覚えてない。ただドラムはね、ずっと叩いてなきゃって思ってたんですよ。休みに入って最初の何週間はボヤ~ンとしてたんですけど、やっぱタイコ叩きたいなって思って。ちょうどYOKOLOCOもあったんで、良かったなと」
で、夏になり、〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉もありで、帰ってきた!って実感はありました?
「いやぁ。別に毎回、ツアー終わったら一ヵ月くらい休むんで。それがちょっと長かったくらいの。去年の3月アタマにみんなで集まって、徐々にライヴとかやり始めて、いろんな断片をチバが持ってきたりして。始まってしまえばいつもの感じっつうか」
自然ですよね。「サンダーバード・ヒルズ」は前からやってたし、ああいうインプロっぽい、即興性の高い作品になるかと思ってたんですよ。でも案外そうじゃなくて。初期っぽい直球の曲もあり、新しさもありで。
「うん、すごい自然な流れでしたねぇ。ただ、前のアルバムの時も思ったんですけど、今回、この作品、すごい……タイコが肝になるなっていうか。頑張らんといかんなっていうのは思ってましたね」
タイコが肝っていうのは、やる側としては嬉しいものですかね。
「うん……なんちゅうかな………まぁリズムが肝っていうのは毎回そうなんですけど、より、今回はそう思ったっちゅうかね」
実際そういう作品ですよ。ドラムが鳴ってる。すごくドラムが聴こえる作品。
「ドラムはね、今回初めてドラム・チューナーの方を導入したんですよ。今までいなくて、初めてドラム・チューナーの人についてもらって。俺なりチバなりが言った曲のイメージを〈こんなのどう?〉って音にしてくれて。それはすごい気持ち良くてね。そこにノセられたっていうか、気持ち良く録れた。すごいいい相乗効果」
そういう音の良さプラス、リズムがめちゃくちゃ突っ走ってる印象なんですよね。いざ聴けばタイトだし合ってるんだけど、音そのものがガンガン走ってる感覚。
「いやー、走り屋なんでね(笑)」
や、実際リズムは合ってるんですよ。でも印象として加速してる。そこに私はパンク魂を感じたりもしたんですけど。
「あぁ、うん。でも、〈ウワーッと思いっきりやったれ!〉っていうのはあったし。わりとその、自分がこういう感じになればいいっていう、そこに近いものが出せたんで。それは大きな収穫かな」
その感覚は今まで以上に強い?
「うん……いや、毎回そうなってく感じ。毎回、いい意味で力抜けてく。最初のデビュー当時のレコーディングとか、緊張したりして堅いタイコだったりするんだけど、それがだんだん、いい意味で慣れてきて。わりと素に近い感じで叩けてる。それは長くやっててこうなったんだろうけど」
けっこうレコーディング中は冷静なんですか?
「んー、曲にもよりますけどね。すごい冷静というか……腰据えてやる曲もあれば、ガツン!といったれ~!って曲もあるし。ヘンに考えると、妙に縮こまった感じになるっていうのは自分でもわかってて。でもそれをコントロールするのは難しかったりするんですけど」
ちなみに「ヴェルヴェット」の最初、あれは何を叩いてるんですか?
「あれはドラム缶ですね。スカパラの横浜アリーナでチバが叩いたドラム缶。それを頂いたんですね(笑)。事務所に置いてあって。それで〈これ叩こう〉っつって」
インパクトありますからね、あのオープニング。それ以外でもまずドラムに耳がいくアルバムですし。それは別に、今回取材のために意識して聴いたんじゃなくて。
「実はミスタッチばりばりですけどね(笑)。でもそういうのを含めて、全然構わないって感じで」
それは初期衝動なんですかね。あるいはパンク魂というか。
「……どうなんですかね? あんま深く考えてないんですけど。うん………まぁ……僕そんなパンクとか精通してないんで(笑)」
