今年1月10日、忘れらんねえよは〈15周年集大成ワンマン 忘れらんねえよのすべて〉をZepp Shinjukuで開催。ほぼソールドアウト状態の会場をむせかえるような熱気が包み、その節目に大きな足跡を残した。終演後に発表されたのが、全4ヵ所を〈とあるバンド〉とともに対バン形式で廻るスプリットツアー〈酒クズとツレ伝。〉だ。そしてついに本日、その〈とあるバンド〉の正体がPK shampooであることを明かした。通常はツアー各地に対バン相手を招くスタイルの〈ツレ伝〉を、このような変則的なツアーにしたのは、ヴォーカル&ギター・柴田隆浩のヤマトパンクス(PK shampoo/ヴォーカル&ギター)への格別な思いがあるからだろう。〈酒クズ〉というタイトルも酒瓶に自我を埋めずには生きていけない彼にとって最大の賛辞なのだ。というわけで2人を都内の居酒屋に召集し、トークバトルを開催。お互いの共通項そして対照的な性格を炙り出してみた。この2人、マジで酒クズです(笑)。
今日は〈酒クズ〉対談です。
柴田「そういえばヤマトくんが『俺は酒クズじゃねぇ!』って反論してるって聞いたけど、酒クズでしょ?(笑)」
ヤマト「いやいや、まず酒クズの定義がなんなのかっていう話ですよ」
柴田「俺はいいイメージあるけどね、酒クズ。破滅的に呑む人、燃え尽きる人、みたいな。ある意味、カート・コバーン的な感じ。だからこれ、褒め言葉なの」
ヤマト「アルコールだけじゃなくて生き様っていう意味合いも?」
柴田「そうそう。で、酒を呑むことで自分にオーバードライブかけまくる、みたいな。この人も燃え上がるように呑むじゃん。命を燃やすように呑む(笑)」
ヤマト「あなたも人のこと言えないけどね(笑)」
そういえば忘れらんねえよの15周年お祝い動画で、ヤマトくんは「打ち上げに出ないで走った逃げた人の15周年はめでたくないと思います」という秀逸なコメントを残しておりますが。
柴田「おまえは負け犬だろう、と」
ヤマト「下人ですよ(笑)」
柴田「ははははは、下人!」
本当に走って逃げたの?
ヤマト「走って逃げました。僕らの主催イベント(註:PK shampoo主催イベント〈PSYCHIC FES〉。2023年11月18日開催)に忘れらんねえよも出てもらったんですけど、僕らのライヴ後に柴田さんが『本当によかった!』って言いながら熱い抱擁をしてくれたんですよ。僕、すごい汗だくなのに」
想像するだけで暑苦しいです(笑)。
柴田「や、それぐらい感動したの!」
ヤマト「ハグされて、ベタ褒めしてくれて。尊敬してる先輩からそこまで言ってもらって嬉しいじゃないですか。『で、打ち上げ会場なんですけど』って言おうとして、『打ち上げ会場なん……』ぐらいで『帰るよ』『いやいや、ちょっと!』『いや俺もう帰るから。帰る帰る』って走ってどっか行っちゃって」
柴田「や、隣りの店で呑んでたんですよ。だから逃げてない」
ヤマト「それで打ち上げ終盤ぐらいに戻ってきて。だったら最初から来たらええやん!って」
柴田「その打ち上げのメンツ的に絶対イッキがあるのはわかってて。でも俺、イッキとか無駄だと思ってるから」
イッキがしたくなかったと。
柴田「だって意味ないじゃん。あと翌日、歌の練習しないといけないから喉もキープしたかったし。俺がそこにいない正当な理由はちゃんとあるわけですよ(笑)」
ヤマト「みんながドロドロの終盤に来て、もう1回同じ抱擁して『本当によかった』とか言ってるんですよ。で、『ちょっと1杯ぐらい呑みま……』って言ってる途中にまた帰ったんです。だから正確に言うと、2回背中を見せてるんです(笑)」
柴田「なんでイッキしなきゃいけないの?」
ヤマト「イッキやろうとは言ってないですよ。普通にちょっと1杯、せめて乾杯ぐらいはしたいじゃないですか」
柴田「酒相撲ってくだらないよ。時間の無駄」
ヤマト「あんな楽しい時間、他にないですよ(笑)」
柴田「もっと楽しいことあるよ!」
ヤマト「ないです。あれは人生のサビですよ(笑)」
柴田「サビじゃねぇよ!」
ヤマト「あんな楽しい時間ないですから(笑)」
PK shampooスタッフ「でもあそこまでダメな打ち上げ、初でしたね」
柴田「ですよね〜〜〜! 行かなくてよかった!」
スタッフ「『お疲れ様でした、乾杯!』って言った瞬間、5本くらいチン◯ンが出てるんですよ」
柴田「5本? その感じは……悪くない(笑)」
その話はもういいです(笑)。そもそも2人の馴れ初めは?
柴田「前にも〈ツレ伝〉に出てもらって……何年前だっけ?」
ヤマト「2年ぐらい前じゃないですか?」
柴田「前から曲はめちゃくちゃいいと思ってたけど、あの時のライヴは正直、大感動するほどじゃなかったの。でも〈PSYCHIC FES〉ですげえ感動して!」
あの、馴れ初めを聞いてるんですが(笑)。
柴田「好きに喋らせてよ。PKを知ったのは曲から。京都の歌、あるでしょ?」
ヤマト「〈京都線〉?」
柴田「そう! あれがクッソよくて! ヤバい!って。そのうちライヴもヤバいっていう噂が漏れ伝わるようになってきて。たぶんまだバンドが上京する前。で、他のも聴いてみたら……大好き! めちゃくちゃ天才じゃん!って思って、それで〈ツレ伝〉に呼んだんです」
忘れらんねえよのことは?
ヤマト「大学のサークルの先輩がめっちゃコピーしてたのがきっかけで知ったんですけど、もちろん好きだったんで、〈ツレ伝〉に呼んでもらえたのが嬉しかったですよ。〈わ、有名な人だ〉みたいな(笑)」
有名人(笑)。
柴田「自分ではそう思えないんだよね。もともと自己肯定感が低いし、忘れらんねえよってダセぇイメージがあるから。音楽IQが低くて工夫がないバンド、みたいに思われてるんじゃないかって、いろんなバンドの人と会うたび思うの。〈お前、本当は俺のことバカにしてるんだろう〉って」
ヤマト「後輩のバンドとかにそういうことを思っちゃうのはなんとなくわかります。同期だと仲間意識みたいなのがあるけど、〈なんだよあいつら〉みたいな感情は世代間の中で出てくるんじゃないかと」
柴田「世代間の中?」
ヤマト「要は、先輩なのか後輩なのか」
柴田「なるほど……」
対バンして本人と会った印象は?
柴田「やっぱりつねに呑んでる人っていう感じ。天才が呑みながらライヴやって、終わったあとも呑んでる。ずっと呑んでる!みたいな。それが初印象のすべて。なんでこんなに呑むんだろう?って」
その時ヤマトくんはどういう感じでステージに立ちました? 爪痕残そう、みたいな?
ヤマト「いや、特にそういうのは考えなかったですね」
柴田「そこがカッコいいよね。自分をよく見せようっていうのがない」
ヤマト「どっちかっていうと、初対面の人にはハードルを下げておいたほうが楽やろうなっていう(笑)」
柴田「なるほどね」
第一印象をあえて悪くしておけば、あとは上がっていくしかない。
ヤマト「そこまで考えてやってるわけじゃないですけどね。でもウィキペディアとかに書かれてる情報って誇張されてるし、だいたい会う前から印象が悪いんですよ。かなり頭のおかしいヤツだと思われてて。でも実際会ってみると、〈意外と謙譲語を使えるんだ〉みたいなハードルの越え方を知らず知らずにやってるっぽくて(笑)」
柴田「そう、俺もびっくりした! 礼儀正しいじゃん!って」
ヤマト「それで拍子抜けされることも多いですね。〈どんなパンクスが来るんだ?〉って向こうは思ってるから」
柴田「〈ヤマトパンクス〉だけに(笑)」
ヤマト「逆に『めっちゃいいヤツじゃん!』みたいに好かれたりすることもあります」
柴田「でも自分そのものを誇張してるわけじゃなくて、素なんですよ。なんかドキュメンタリー感があるというか。特に〈PSYCHIC FES〉はそれの極みで本当に感動したの。素のまんまステージに上がってワーって演奏して帰っていく、みたいな。カッコよ!って。自分を作ってない人の音楽だなって」
それに対して忘れらんねえよのライヴはどうでした?
ヤマト「これ、ディスってるように聞こえるかもしれないんですけど……」
柴田「全然ディスってもらっていいよ」
ヤマト「この人、やっぱり繕ってるなと(笑)」
柴田「めっちゃディスってるじゃん!(笑)」
ヤマト「はははは。自分の中にあるものを出すために、めっちゃブースターを踏んだりコンプレッサーをかけたりすることができる人だなって。僕にもそういう部分はあるんですけど、この人はその筋のプロというか。ステージ上がった瞬間の爆発の仕方とか、俺たちもこういうやり方を学ばないとな、追いかけないとって」
柴田「うわ〜〜〜褒められてるぅ〜〜!」