音楽と人編集部の視点でARABAKI ROCK FEST.19を届けしていく、この音楽と人編集部ARABAKI通信。2回目の更新は、初野外フェス参加となった若手編集スタッフより。
アラバキ1日目が終了した。
私にとって初のアラバキは真冬のような凍える寒さだったが、寒さも吹き飛ぶほど、数々のアーティストたちが熱いパフォーマンスを繰り広げた。昼間から夜まで1日をかけ、いろんなステージで、いろんなアーティストを観たが、その中でも特に心に残った3組のことを書いておきたいと思う。
17時すぎ、ARAHABAKIステージに登場したドレスコーズ。志磨遼平がステージ中央から伸びる花道で唄う姿は、〈唄う〉というよりも、〈何かを演じている〉といったほうがふさわしい。どこか遠くの、手が届かない別世界の存在のよう。思わず憧憬のまなざしを向けてしまう。だが、〈こんな音楽も本当はいらないだろう〉というフレーズが刺さる「ゴッホ」では、何のために唄うのか、生きるのか、と自分に問いかけているようだった。彼は花道でしゃがんで客席と同じ視線の位置で、語りかけるように唄うことも多かったが、それは求めてくれるオーディエンスとしっかり心を通わせたかったからだろう。そうしてまた、唄う意味を見つけ、彼はステージに立ち続けるはずだ。
日も落ちた頃、同じくARAHABAKIステージで、「おはようございます! a flood of circleです!」と佐々木亮介が高らかに叫び、ステージの幕を開ける。〈戦場で会おうぜ〉と唄う「Sweet Home Battle Field」では、オーディエンスに対して、そして自分たちに対して、壁にぶつかったとしても、めげずに転がり続けよう、というメッセージを放っているようだった。いくらステージの上で華やかに見えても、カッコよくても、彼らも私たちと同じくこの現実で生きていて、日々もがくこともあるだろう。だから、苦しみも喜びもすべて落とし込む彼らのロックンロールには希望がある。そのことが強く示されたステージであった。
アラバキで最も大きいMICHINOKUステージのトリを務めたのは、9mm Parabellum Bullet。今年バンド結成15周年を記念したステージは、ベストオブベストな選曲で構成された。さらに途中、さまざまゲストを迎え、ここでしか見られない組み合わせで楽曲を披露。それはお馴染みの面々との共演もあれば、新鮮な意外な共演もあり、この15年の間に、彼らが音楽を通して広げてきた繋がりと、信頼を垣間見ることができた。MCでは、宮城県出身の中村和彦(ベース)が第1回目のアラバキをチャリで観に行っていたことに触れたり、菅原卓郎(ヴォーカル&ギター)が自身が山形県出身であることにも触れ、「黒い森の旅人」は東北のことを思って作ったと話すなど、アラバキや東北への思いを語る場面があったのも印象的だった。彼らにとってアラバキでトリを務めることは、夢のようなことでもあったと思う。ゆかりのある土地で、15年の歩みをひとつ刻んだのであった。
オーディエンスもアーティストも、日々を乗り越えてこのアラバキの日にたどり着き、音楽を通して思いをわかち合う。そしてまた新しい明日、日常へ向かっていくのだ。
明日はいよいよアラバキ2日目、最終日だ。1日目に廻れなかったBAN‐ETSUステージや、ZAOステージでもライヴを観て、アラバキの雰囲気をすみずみまで体感したい。願わくば、快晴の下で。
文=青木里紗