平凡なサラリーマンの父親と半グレ組織の戦いを描く人気漫画を実写化した、佐々木蔵之介主演のファミリー・サスペンス『映画 マイホームヒーロー』。昨年放送されたドラマの最終話から7年後を舞台に、完結編を描く本作の見どころやキャストの魅力を、青山貴洋監督にたっぷり教えてもらいました。主人公に罪を着せられ、逃亡生活を送る半グレ役を演じる、なにわ男子の高橋恭平くんの撮影裏話も必見です!
(これはQLAP!3月号に掲載された記事です)
家族を守る父の“最後の戦い”をオリジナル脚本で描く『映画 マイホームヒーロー』。実写化の経緯や、制作する上で大切にしたことはどんなことでしょう?
漫画『マイホームヒーロー』の映像化にあたり、ドラマだけでは世界観が描き切れないため、映画との同時製作で企画がスタートしました。映画に先立ち昨年放送したドラマでは、原作の一部とよばれる第6巻までを下地に、平凡なサラリーマンの哲雄が娘の零花を守るため、娘の恋人を殺害して半グレ組織と戦い、さらに組織の上層部であった恋人の父親を山中に埋めるまでを描きました。制作側としても罪を犯した哲雄の結末をきちんと見届けたいという思いがあり、映画では最終回から7年後を舞台に、半グレ組織だけでなく、警察官となった最愛の娘にまで追われることになる哲雄の最後の戦いを描いています。
映画はオリジナル脚本になりますが、原作者の山川直輝先生から構想メモをお借りして、原作の世界観やキャラクターから逸脱しないように心掛けました。また、完結編の物語を考える上で一番大事にしたのは、家族の話として終着させるという点。今作はクライムサスペンスですが、実は誰にでも起こりうる出来事で、湧き出る感情を描いた人間ドラマでもあります。ぜひ家族で一緒に楽しんで見ていただけるとうれしいです。
主人公・哲雄役の佐々木蔵之介さん、娘役の齋藤飛鳥さん、妻役の木村多江さん、哲雄に罪を着せられた恭一役の高橋恭平くん。ドラマから7年後の役を演じたそれぞれの役作りや芝居の印象は?
蔵之介さんは、7年間、罪を隠して生きてきた哲雄の追い込まれ方を素晴らしく体現してくれて、きっと哲雄は蔵之介さんじゃなかったらできなかったと思います。それから蔵之介さんには相手の演技を引き出す力がある。蔵之介さんの芝居に引っ張られて、 若い役者たちが新たな一面をたくさん見せてくれました。零花を演じる齋藤さんは、警察官になり父親を追い詰める重要な役どころ。役の変化に驚いていましたが、体を鍛えるために自らジムに通ってくれて、プロ意識の高い方だなと感じました。
妻・歌仙役の木村さんは、原作から出てきたようなハマリ役。歌仙には映像では描けていない背景もあるのですが、原作と映像をうまくチューニングしてくれたと思います。哲雄に罪を着せられた恭一役の高橋くんは、芝居が急成長しましたね。ドラマ中は自分がアイドルっぽく見えるのではと不安があったようで、映画の撮影前に『金髪にしてもいいですか?』と提案してくれたんです。全てを失い逃げていた恭一の心情と真摯に向き合ってくれてうれしかったです。
映画版ならではの注目シーンや見どころを教えてください。また、そのシーンは役者とどのような話をして作っていったのでしょう?
主人公の哲雄は、娘の命を救ったヒーローではなく、あくまで罪を犯した人間です。齋藤さんとは、父親の愛と犯した罪を知った零花が、どんな思いでそれを受け止めるのかをしっかり話し合いながら撮影を進めていきました。車中でハンドルを叩き、行き場のない思いや言葉にならない心の叫びをぶつけるシーンは、現場で見ていて思わず引き込まれましたし、零花の複雑な感情が表現されているのでぜひ注目してほしいです。
また、哲雄と恭一が7年ぶりに再会するシーンも、哲雄が自身の罪と向き合う重要なシーン。高橋くんとは、自分に全ての罪を着せた哲雄を許す必要はないけれど、恭一も大事に思う母親がいるので家族を思う気持ちはきっとわかるはずという話をして、恭一の気持ちの着地点を一緒に探りました。蔵之介さんの迫力ある芝居に負けずに挑む高橋くんの気迫もすごく、2人でのシーンの集中力は本当に素晴らしかったですね。
哲雄と半グレ組織のバトルを描く上でこだわったことや、アクションシーンの撮影で印象的だったことはありますか?
哲雄は、あくまで平凡なサラリーマン。銃も触ったことのない中年男性が、いきなり犯罪組織とドンパチやり始めたら、リアルではなくなりますよね。 なので、作中のバトルシーンでは、普通の中年ができそうなこと以上はやらないように意識して、その分、ミステリー小説好きな哲雄の知識を武器にやれることを探りました。犯罪組織を捕らえるための仕掛けを用意したり、銃や肉弾戦に頼らずともスリリ ングに感じられる演出にしています。
また、ドラマでの哲雄と恭一の対峙シーンの撮影では、高橋くんはアクションの動きは俊敏なのですが、優しさが出ていて。蔵之介さんから『殴られるときは顔をそむけたほうが勢い良く見えるよ』とアドバイスをもらったり、すごく頑張っていたんです。ところが映画の撮影では、高橋くんのアクションがより強くなっていて。一皮むけて成長したなぁと感じました。
緊張感漂うシーンも多いサスペンス作品ですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
映画はシリアスなシーンが増えたこともあり、現場はドラマよりも幾分ピリッとした空気感。だからこそ家族4人が集まるシーンは、和やかな雰囲気にほっこりしましたね。空き時間も木村さんがみんなに優しく話し掛けて笑い合ったり、本当の家族のように和気あいあいとしていました。
また蔵之介さんと高橋くんの共演シーンでは、高橋くんが自分の納得できない芝居について蔵之介さんにアドバイスをもらう場面も。人見知りの高橋くんですが、蔵之介さんとは関西弁で仲良く話していたり、蔵之介さんがまるで父親のように高橋くんの芝居を見守る様子が印象的でしたね。
文=室井瞳子
青山貴洋監督
あおやま・たかひろ/1978年2月6日生まれ、愛知県出身。数々の人気ドラマを手掛ける演出家。『映画 マイホームヒーロー』が劇場長編映画デビュー作となる。近年に手掛けたドラマは、『マイ・セカンド・アオハル』『ユニコーンに乗って』『ドラゴン桜』など。
『映画 マイホームヒーロー』
(ワーナー・ブラザース映画配給/3月8日より全国ロードショー)
監督:青山貴洋
出演:佐々木蔵之介/齋藤飛鳥、高橋恭平
宮世琉弥/音尾琢真/立川談春/津田健次郎、木村多江 ほか
©2024 映画「マイホームヒーロー」製作委員会