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INTERVIEW
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【特集】吉井和哉20th × 音楽と人 | AL『Hummingbird in Forest of Space』INTERVIEW(2007年10月号)

text by 青木優

2023年にソロデビュー20周年を迎える吉井和哉。『吉井和哉20th × 音楽と人』と題して、『音楽と人』の過去のアルバム記事を特別公開しています。今回は、約16年前にリリースされたアルバム『Hummingbird in Forest of Space』のインタビューを公開。

(これは『音楽と人』2007年10月号に掲載された記事です)



ものすごく熱くて大きな渦を描くカオスが見える。吉井和哉の何もかもが、これには詰まっている。『Hummingbird in Forest of Space』――前作『39108』からわずか11ヵ月というインターバルで到着したこのニュー・アルバムは、これまでの苦悩から頭をもたげ、広い視界を獲得することに成功した彼のヴィジョンが鮮やかに記録されているのだ。優しい心を持ちながら、そしてところどころで自分の素をポロッとこぼしながらも、その表情はどこか朗らかな彼。その居場所は、音楽を象徴するハミングバードがさまよう宇宙の森ではあるけれども……おそらくブラックホールの闇の中では、もはやない。ラスト・ナンバー「雨雲」で綴られる夢と楽しさとせつなさと悲しみが混在した人生観、その末に放たれる最後の〈I LOVE YOU〉は、吉井がひと回りデカい人間性を表現するようになった証左であると思う。 前作で『人生の上半期』に一区切りを付け、確実に次の段階に入った吉井。今回は途中で自身の表現とロックとの距離感という表明もあったが、この人の内部ではそれだけ多くの価値観や感覚が入れ替わっている最中なのだろう。生きていても脱皮と輪廻は続くのだ。輝きと永遠。そうした新しいきらびやかさに、高らかに乾杯を捧げたい!



セカンド・アルバムができまして。


「セカンド!? ああ、ああ、そうか。たしかにたしかに(笑)」


吉井和哉ではセカンドです(笑)。そういう実感ってないんですか。


「うーん……あんまりないですねえ。とくに今回は……『at the BLACKHOLE』とかもそうだし、イエロー・モンキーもそうだし、ルーツというか、自分のもの全部集約できてると思うので。だからあんまり分けて考えなくなりましたね」


あ、わかります。『そういえばこういう吉井さん、いたよな』みたいな。


「そそそそ(笑)。俺も自分で気づいた。『10何年ぶりじゃないか、この吉井和哉は?』とか。今になってこんなアルバムができると思わなかったですね」


前作とこの前のツアーの間に、ネクストは見えてたんですか。


「うん、豪快なものを作りたいなという。〈THANK YOU YOSHII KAZUYA〉のツアー中は自分のモチベーションが上がってたのでバンド時代の曲もやっちゃってたし、〈やっぱり俺は好きなことをやるのが好きなんだな〉みたいな。そのへんで〈遠慮のないものを作りたいな〉というのが、すごいあって。だから〈R&Bとかヘヴィ・ロックをやってみたいな〉〈新たな曲調に着手しながら豪快にやろう〉って思いました。で、自分の中で思い浮かべていたR&Bっぷり?は、そこまでできなかったんですけど(笑)。ただ、ノリの悪いものはあんまり入れたくないなというのはありましたね。通して聴いてみると、ある時に〈これ、ディスコ・アルバムみたいだなあ〉と思ったぐらい(笑)」


(笑)「Biri」とかそうですよね。


「〈Do The Flipping〉もよく聴いてみるとアバみたいだな、t.A.T.u.みたいだなって(笑)」


じゃあ描いてたのは、最初からロックンロール的なものではなかった?


「ロックンロールっていうのは、もうあんまり、自分の中では、ない……ですね。『俺はロックンローラーだ』って今、胸を張っては言えないね」


あららら。


「うん。残念なことに。やめます? インタビュー(笑)」


いえ(笑)。でも前のツアーにはむしろ〈腹くくってロックの世界でやってやる〉というのを感じたんですが。


「うん。まあアルバムん中で〈ワセドン3〉が『ロックンロール』とは言ってますけど。何て言うかな……もっと、おっきなくくりになったと思うんですよ、自分の中で。ロックンロールじゃないことは、ないと思うし。すごいロック・アルバムかっていうと、そんなこともないと思うし。ただ吉井和哉っていう人間だけがいる感じがするんですよね。昔はメロディであるとかフレーズ、言葉もそうですけど……『これはロックじゃないなぁ』とか、こだわってはいたんですよ。〈Shine and Eternity〉なんか全然ロックンロールじゃないし(笑)。なんだけど……もう、そういう歳じゃないだろうなと思ったんですよね」


はあー! そうですか?


「うん……人間ってやっぱり質感じゃないですか。ものが欲しい時って、安いから欲しいっていう人もいるけど、僕とかはもう、あんまりそうは思わないんですよ。お金があるとかじゃなくて、我慢してでも質感のいいものを買いたいなっていう。そういうのが今、音楽も含めて全部興味があるので」


なるほど。そこではロックという定義からハミ出ちゃうんですね。


「そそそそ」


だけどめちゃめちゃ人間くさい作品ではあると思うんですよ。今までのソロもそうだったけど、今回はいっそう、いろんなものが入り混じってて。


「(笑)ま、結局言ってることはLOVINSONの時とべつに変わんないけど、目のつけどころが変わっただけっていうか。あと精神状態が違うだけ。べつに全然悩んでるし、悩みは誰だってあるんでしょうけど、それをどう表現するかが今回は違うだけで」


ですね。今はちょっと違うものを表現したいんだなという気がします。


「うん。こう見えても、けっこう時代は意識するんですよ。すごい……フレッシュなものをみんな求めてるような気がしてて。空気が。スコーン!と抜けてる人っていうのが圧倒的に見えるんだと思うんですよ。だから悩んでようが開き直ってようが、抜けてるものが作りたいなあっていう。空気が淀んでないような……〈ワセドン3〉なんか、たしかに暗い曲ですけど、全然淀んでないと思うし。ほんとに痰が絡んでるような声もありますけど(笑)、そのまんまだし。とにかくアメリカのミュージシャンと楽しくやりたいというのが、まず第一にあって。ほんと楽しい、音楽が好きだっていう、その空気感だけを入れたかったんですね」


はい。でもたしかに過去ほど悩んでいないのは伝わりますが、かと言って見つかったわけでもない。


「そうですね。ま、たぶん自分の人生は悩むのがテーマだろうから(笑)。ただ、どうせ悩むんなら楽しく悩もうっていうのが今回のアルバムです。『そっか、そういう悩みが来たかぁ』みたいなね(笑)。今回もちょいちょいトラブルはあったんですけど、明るく過ごしてたらタナボタがいっぱいあって。すごい良かったです。『気の持ちようで人間は良くなるんだな』と思って」


そうですか。えーと、そしてすごく感じるのは、邪悪な吉井和哉がそこかしこに復活してることです。


「……またぁ(笑)。してないですよ! 邪悪じゃないもん、だって俺(笑)」


それは「マンチー」の〈爆発の股間〉であったり、「上海」の〈性愛なだれ込み〉、「Biri」もそうだし……。


「エロいってこと?」


エロいです! 「ルーザー」にも「Pain」にもそういうところがあるし、ここまで欲望が噴出してる作品はすごいひさしぶりだなぁって。


「うん、『SICKS』(97年)以来? まあ約10年経って……一周したんじゃないですか」


今こういうものが出てくるような予感ってありました?


「……股間?」


ヨカンです! 曲作ってる時の!


「(笑)予感はありましたね。正直、エロいこと言うの、好きなんですよ。ただ……一周期前の30歳が言う下ネタと40歳が言う下ネタって、やっぱ微妙に違うんですね(笑)。かわいがられなくなるんですよね、40歳の下ネタって。そのへんでどう折り合いをつけてくかってのもあったんですけど。でも、だいたいエロいことを言う時ってのは『自分は生きていたいんだ』っていう時なんですよ。〈Pain〉なんてそういう曲だと思うんですけど」


あー、そうですね。


「うん。男だしね。オスだから。自分の中ではエロいことを唄うのと言葉遊びは直結しているんですよ。エロいことが唄えない時は、言葉遊びがあんまり唄えない時。で、LOVINSONの頃ってあんまりエロい歌詞ないですけど、あれはあれでエロさを違う形で表現できてたと思うんです、ファーストとか。でも『39108』の時は全っ然クリエイティヴじゃなくて……歌詞に関してね。で、困ってたんですけど、〈THANK YOU〉のツアーやってる時からテンションが上がってきて。けっこうエロいステージングとか、あったじゃないですか。あとローリング・ストーンズのカヴァーとか自分で訳した日本語で『ああ、こういうのやっぱいいなあ』とまた蘇ってきて(笑)。それで復活したんじゃないかな」


そうですか。30代前半までは、そういうのが普通にできてたんですね。


「やっぱねえ、『SICKS』の時が自分の歌詞は一番オリジナリティがあって。あの時ってそういうのに夢中になってた時期だったから……まあ〈天国旅行〉って曲だったりね。え、〈つくしんぼう〉?とか、そういうのがすごくうれしかった時期で」


う、うれしかった(笑)。


「それはほんとに精神状態が、自分がハッピーだったんでね。そのあとの『PUNCH DRUNKARD』(98年)は自分の中で問題がいろいろ起こってた時期だったから、言葉遊びしてるんだけど、かなり……。ブレると怖いんですよ、ああいう言葉遊びの曲って。『なんて不幸なんだ』ってなっちゃうと、やっぱブレてくると思うんで」


はい。ということは今はだいぶいい状態なんですか。


「今はいい状態ですね。そんな、病気の人みたいに言わないでよ(笑)」


いや、もしや何かあったのかと思ったんですけどね。プライベート的に。


「(笑)プライベート的に? ……まあ、いろいろありますよ。それは」


それが歌詞にも、いい方向に作用したのかなと。


「うん……いやぁ、どこまで言っていいか、わかんないけど(笑)……なかなかそのバランスも難しいですね。遊びまくってる人がいい曲書けるかっていうと、またちょっと微妙だと思うし。そうだなあ……やっぱりあんまり悪人になっちゃうとダメだなあとも思うし。なんか中年のミュージシャンって……ミュージシャンに限らないかもしんないけど、エロに行くか政治に行くか、どっちかだって言いますよね?」


あ、聞いたことあります。


「うんうん、ね? すごいわかるんですよ。俺やっぱLOVINSONの時、政治に行ってたと思うんですよね」


ああ、ニューヨークも行ったし。


「そうそうそう、〈HATE〉って曲作ったり……ちょっと戦争絡みのね。それはそれで良かったと思ってやってたんですけど…………難しいね。はい」

俯瞰で見ると最低に見えると思う。でも音楽を邪魔した場合それを全部切る!っていう生き方をしてる

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