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BUCK-TICK『異空-IZORA-』を携えたツアーがスタート。初日公演で観た前向きな生命力

text by 石井恵梨子

【LIVE REPORT】
〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉
2023.04.19 at J:COMホール八王子



〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉。シンプルにそう題された旅の初日を見てきた。最初から最後まで、まさに『異空 -IZORA-』の世界だった。


当たり前のことかもしれない。新作が出るたび、その内容に基づいた世界観を魅せるというのは、彼らが35年間ずっと続けてきたこと。インストも含めて新曲すべてが披露されたのも珍しい話ではないだろう。ただ、本編でそれをやりきり、アンコールは過去の名曲を散りばめてちょっとした祝祭感を味わう、といった展開がないことに驚いた。徹頭徹尾『異空 -IZORA-』ワールド。この傑作に対する自信と手応えを改めて思い知った気分だ。


暗い、と言ってしまうと語弊があるが、『異空 -IZORA-』はリアルに重たいアルバムである。それは主に櫻井敦司のメンタルに依るもので、戦争、犠牲になる子供たち、さらには自分たちに迫りくる終わりの予感、逃げ場がどこにもない閉塞感といったものが、さまざまな物語として昇華されている。それらを全曲表現するとなれば、どんどんヘヴィに、シリアスになっていくのは避けられないはず。だが、それなのに、徹頭徹尾『異空 -IZORA-』ワールドと書いたコンサートは、決して重苦しいものではなかったのだ。


具体的な曲名は控えるが、新曲と過去曲を繋げることでアルバムとは違うニュアンスを生み出していく、その選曲マジックが本当に素晴らしかった。シングルの「無限 LOOP -LEAP-」は近年の空想的ラヴソングとセットになることで時空を超えた昭和歌謡ムードを醸し出していたし、同じくシングルの「太陽とイカロス」は、かなり久々のロックンロール・ナンバー、さらには90年代発表の懐かしい曲に挟まれることで、また別の物語を語り始める。「太陽とイカロス」で目前に迫る死を唄う櫻井は、その強烈なストーリーを崩さないまま、そのあとの癒し、慰め、救済される魂までを描いていくのだ。


これが、ずっと継続と更新を続けてきたバンドのすごさ。同じメンバーで同じ時間を共有し、常に最新アルバムに向かって創作を続けてきた。最新曲と30年前の曲が並んでも全体の構成は崩れない。いや、むしろ新曲をより輝かせるために昔の曲があったのではないかと思えるくらい、これまでやってきたことが今を補完している。『異空 -IZORA-』の重さとは、むろん現実に直面して生まれたものに違いないが、過去の楽曲や経験があるからこそ、シリアスになりすぎず今も均衡を保っていられる。そのことにメンバー自身が気づいているのでは、と思うシーンがいくつかあった。


過去の経験が今を補完する、その最たる例が「Boogie Woogie」だろう。櫻井いわく「35年以上前のストーリーを、最新技術を使って再現する」ロックナンバーは、街から街へと移動し、夜になるたびステージに繰り出してきたBUCK-TICKのヒストリーを振り返るものだ。普段はバラバラな5人だが、この日は今井寿と星野英彦がどことなく似た衣装で、中央の櫻井を挟んでシンメトリーを描いているのもよかった。後方でがっちり構えるヤガミ&樋口兄弟、作風の違う2人のギタリスト、そしてカリスマ的なヴォーカリスト。この調和なんだよなぁと今さらすぎることを思う。今井がもう杖を持たずにステージに立ち、どこまでも奔放に両足をばたつかせていたこと。ラストに向けて狂い咲いてゆく櫻井のストーリー表現力の凄まじさ、さらには時空が歪む今井のギターソロのことも、忘れずに記しておきたい。


そんなステージをさらに高めていくのが客席の声だ。まだマスクはあり。しかし声出しはOKになったことが、どれだけメンバーの力になっているかが表情から伝わってくる。万雷の拍手、全員で唱和するサビのメロディ、曲間に聞こえてくる「あっちゃーん!」「今井さーん!」などの呼びかけ。以前なら、漆黒の世界観を壊しかねないものと思えたそれは、3年ぶりに聞くと、本当に心強い勇気というか、バンドの支えに他ならないと気づくのだった。


継続してきた過去があるから、と同じ意味で、これだけのファンがいるから、『異空 -IZORA-』のようなアルバムは堂々と世に出ていけたのだろう。戦争、死、トラウマ、歪み……。言葉にすれば絶望に近いものばかりだが、それらは作品という物語になり、受け止めるファンがいてこそエンターテインメントになる。コロナがあったから気づけたことかもしれない。迫り来る終わりの予感に震えながら、しかし、確実にBUCK-TICKは続く。前向きな生命力。それしか感じないツアーの幕開けであった。



文=石井恵梨子
写真=田中聖太郎


〈BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-〉

2023.5.13(土)ハイスタッフホール 大ホール(観音寺市民会館)
2023.5.14(日)倉敷市民会館
2023.5.20(土)ロームシアター京都 メインホール
2023.5.21(日)神戸国際会館こくさいホール
2023.5.27(土)パシフィコ横浜 国立大ホール
2023.6.3(土)日本特殊陶業市民会館フォレストホール(旧:名古屋市民会館)
2023.6.10(土)本多の森ホール
2023.6.11(日)長野市芸術館 メインホール
2023.6.17(土)オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)
2023.6.18(日)オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)
2023.6.24(土)上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
2023.6.25(日)福岡サンパレスホテル&ホール
2023.7.1(土)札幌カナモトホール(札幌市民ホール)
2023.7.9(日)仙台サンプラザホール
2023.7.15(土)高崎芸術劇場 大劇場
2023.7.17(月・祝)静岡市民文化会館 大ホール
2023.7.22(土)東京ガーデンシアター
2023.7.23(日)東京ガーデンシアター


BUCK-TICKオフィシャルサイト

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