『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回の担当である四十路編集者とnoodles・yokoさんが語り合う韓国ドラマコラム第8弾は、「韓国時代劇ドラマ・ベスト5」と題して、時代劇をテーマに語ります!
今回は韓国時代劇ドラマについてです。
「前回も話したけど、周りの友達に時代劇の韓国ドラマをオススメしても、『時代劇か……』って感じで、敬遠されがちで。たぶんそれって、日本の時代劇のイメージもあるからなのかな?って思ったりするんだけど、韓国は、けっこう若手俳優がメインで、ラヴコメを時代劇で描く作品とか多いよね」
そうですね。日本でいうところの歴史大河系の正統派から、〈フュージョン時代劇〉と呼ばれる、時代設定は昔だけど、史実を飛躍させたものや、もはや史実は関係ないストーリーの作品がけっこうありますよね。
「そうそう。今回は、それぞれのオススメ/お気に入りベスト5を紹介しながら、韓国時代劇について話をしていかない?」
そうしましょう。タイムスリップものでも、メインとなる舞台が過去であれば、時代劇という括りで! まず、私の5位は、『雲が描いた月明り』(2017年作)ですかね。
「え、もうそれ出ちゃうんだ!?」
いろいろ悩んだ末ではあるんですけど。これ間違いなくyokoさんも挙げる作品ですよね。で、4位が、『王女の男』(2011年作)。これは史実をモチーフにしてるけど、ストーリーは完全にフィクションのメロドラマで。パク・シフとムン・チェウォンが主人公ですね。
「観たことないな。どんな内容なの?」
簡単に言うと、朝鮮版ロミオとジュリエットみたいな感じですかね。敵対している家の娘と息子が、お互いの家のことは知らずに恋に落ちてしまうみたいな。朝鮮王朝初期にあったクーデター事件(癸酉靖難)が軸になっているんですけど。yokoさんの5位は?
「私の5位は『奇皇后』(2013年)。全51話で、かなり長いんだけどね」
チ・チャンウクとハ・ジウォンが主役の作品ですね。これは実在の人物が主人公なので、正統派ではあるけど、ヒロインを巡る2人の男性によるラヴストーリーも軸になってますよね。
「そうそう。私は、完全にタファン(チ・チャンウク扮)派だったけどね(笑)」
高麗人のハ・ジウォンさん扮するスンニャンと結婚する元の皇帝ですね。チュ・ジンモ扮する高麗の皇太子派(のちに即位して王になる)ではなかったんだ。
「そうね。チュ・ジンモさんがちょっと苦手なタイプだったっていうのもあるけど(苦笑)、情けない部分もあるけど、スンニャンに一途なタファンを応援してたな。でも、陰謀とか復讐とか、いろんな人間ドラマがしっかり描かれているのも面白かったところではあって」
味方だと思ってた人が、実は敵だったみたいなこととか。
「そうそうそう! 話数長いけど、王室舞台の韓国時代劇は、いろんな伏線とかどんでん返しとかがあるから、ハマって観てしまうよね」
すごくわかります。では4位は?
「『麗〈レイ〉~花萌ゆる8人の皇子たち~』(2016年作)かな」
ああー、しまった! すっかり抜け落ちてた……。
「私たちの(笑)ナム・ジュヒョクも出てるし、ヒラバヤシちゃんが好きなカン・ハヌルも出てるのに」
いや、ほんと。や、これはいいドラマですよね! なんでこの作品が頭に浮かばなかったんだろう……。
「あはははは。ヒロイン役のIUちゃんかわいいし、他の出演者もいい俳優さんばっかりだし、タイムスリップものでストーリーもよくて。好きな要素が揃ってる! 3位は何になる?」
『花郎〈ファラン〉』(2016年作)ですかね。我らが(笑)パク・ソジュンが出てるし、あとこれは韓国時代劇の入門編としてもいいんじゃないかなって思います。
「時代設定が昔なだけで、現代劇っぽい青春ドラマだし、歴史背景とか全然知らなくても観れるからね」
これも、yokoさん選んでますよね?
「もちろん! 『花郎〈ファラン〉』は2位。主人公を演じるパク・ソジュンももちろんかっこいいんだけど、観てて皇太子役のパク・ヒョンシクのほうがいいなって思ったりして。だからやっぱり私、世子(朝鮮王朝における皇太子の呼称)に弱いんだなと思った(笑)」
世子好き(笑)。『雲が描いた月明り』のパク・ボゴムも世子役ですし、『麗〈レイ〉』に至っては、メインキャストみんな皇太子候補ですからね(笑)。
「確かに! だから面白いわけだ(笑)。でもさ、世子役が似合う俳優とそうじゃない人ってあるよね」
ああ。我らがパク・ソジュンは、世子役は合わないかも。それこそ『花郎〈ファラン〉』でのパク・ヒョンシクの役をパク・ソジュンがやったとしたら、あそこまで魅力的な皇太子にはなってなかったような気がするし。
「きっと世子様顔じゃないんだろうな。あと御曹司とかも、いまいち合わないというか……」
やっぱ、パク・ソジュンは〈隣のオッパ〉なんですよ(パク・ソジュン回参照)。
「そうそう。だから『キム秘書はいったい、なぜ?』のパク・ソジュンはもったいないんだよなぁ……ってこれ何回もここで言ってるね(笑)」
や、私も同感なんで、声を大にして言っていいと思います(笑)。
「でも世間的には、『梨泰院クラス』の次に『キム秘書〜』を観て、パク・ソジュンにハマったっていう人が多いんだろうけど(笑)。でも『キム秘書〜』って、ストーリーはよかったのかな?」
うーん、どうだろう……? 私は、ドラマよりも原作漫画のほうが好きですね。漫画は、すごく面白かった。
「そうなんだ……って、すっかりパク・ソジュン話になっちゃっているよね(笑)」
ですね、話を戻しましょう(笑)。yokoさんの時代劇ベスト5の3位は?
「えっとね、前回ここで紹介したけど、『九家の書〜千年に一度の恋〜』(2013年作)かな。これも朝鮮時代が舞台の時代劇だけど、ファンタジー要素が強い作品で」
『九家の書』の主人公は、神獣と人間のハーフっていう設定ですけど、韓国時代劇には、人間じゃない役どころのものも多いですよね。主人公が吸血鬼(『夜を歩く士(ソンビ)』)だったり、ヒロインが幽霊(『アラン使道伝』)だったり。
「そうかも。現代劇の割合がかなり多いから、時代劇と言っていいかわかんないけど、『青い海の伝説』とか『トッケビ』も、主人公は人間じゃないもんね」
人魚と鬼ですからね。
「その中でも『九家の書』は音楽もいいし、ストーリーもすごくよくて。とくに後半、切ないシーンが満載だし、これはファンタジードラマとして観てもらってもいいかも。2位は何になる?」
かなり前の作品だけど、『宮廷女官チャングムの誓い』(2003年作)ですね。これは、私の中の第一次韓国ドラマブームの時にハマった作品で、もう何周も観てますね。
「まだ全話通してちゃんと観たことないんだけど、高視聴率だった作品だし、絶対面白いよね!」
韓国で歴代3位の最高視聴率で、57%を記録していますよね。
「歴代最高視聴率の1位は、『ホジュン~宮廷医官への道~』なんだよね」
そうそう、60%超えだったかと思います。まあ、『奇皇后』と同じく、『チャングム〜』も、全53話なので長いんですけどね。で、yokoさんの2位は『花郎〈ファラン〉』。
「さっき話した時、歴史背景とか知らなくても観れるって言ったけど、確かに全然わからなくても楽しめるけど、やっぱり観てると〈花郎〉ってなんだろう?とか、調べたりするじゃない」
新羅の時代に実在した、有事の時は戦地にも赴く兵士でもある青年集団ですよね。基本的には貴族の子弟が入ることができたという。
「そうそう。そうやって時代劇ドラマきっかけで韓国の歴史を知っていくっていうのも、ひとつの面白さでもあるかなって思うんだよね」
時代劇ドラマを通じて歴史を知ることで、より現代劇で出てくる韓国ならではの習慣や文化を理解できたりしますもんね。では、それぞれの1位を発表しますか。
「あ、ちょっと待って! ヒラバヤシちゃんの1位をあてるね。たぶんね……『トキメキ☆成均館スキャンダル』(2010年作)でしょ?」
正解! これは去年の「オススメベスト5」の回でも言ったけど、少女漫画の王道設定が盛り込まれてるし、これも舞台設定が朝鮮時代なだけで、普通の青春恋愛ドラマとして楽しめる作品だと思いますね。何しろこの作品に関しては、DVD、OSTはもちろん、原作本も買ってしまったくらいハマりましたよね。
「すごい!(笑)。あと、女の子が男のフリをしてるっていう設定も、韓国ドラマ多いよね」
そうですね。とくにフュージョン時代劇には多いかも。
「そうそう。私の1位は『雲が描いた月明り』なんだけど、これもそういう設定だもんね。まあ正確には男じゃなくて、宦官(去勢された男性の官吏)だったりするけど」
女性であることを隠して宦官として宮中に入ったキム・ユジョンちゃん扮するヒロインと、私たちの(笑)パク・ボゴム扮する世子様のラヴストーリーですね。
「これはもう、時代劇の中ではダントツ1位。音楽も好きだし、ランタン祭のシーンをはじめ、映像美もあって。これは本当にオススメ」
『雲が描いた月明り』と『花郎〈ファラン〉』が、お互いのベスト5に入りましたね。ちなみに今回挙げた10作品中、8作品が王室が舞台のドラマになりました。
「日本って王室とかが舞台の時代劇があんまりないよね」
そうですね。江戸時代が舞台だとしても、幕府内の陰謀とか権力争いに恋愛を絡めたドラマもあんまりない気がするし、よく時代劇の舞台になる戦国時代とか江戸時代って、現代的な要素を入れ込んだストーリを展開するのは難しい時代だったりするんですかね? アニメとか漫画では、時代劇ファンタジーとか多い気がするんだけど。
「だよね。それこそ『鬼滅の刃』とか『るろうに剣心』、ギャグ系だけど『銀魂』も時代劇でしょ。でもドラマだと、月9とかで、時代劇ドラマが取り上げられることってまずないじゃない。でも韓国では、バンバン作られてて」
しかも、K-POPアイドルとか若者に人気のある役者がメインを張ってる時代劇がけっこうありますからね。それこそ『花郎』は、SHINeeのミンホ、BTSのV、あと皇太子役のパク・ヒョンシクもK-POPグループ出身ですし。
「『麗〈レイ〉』にはEXOの子が出てて。時代劇に現役アイドルが出てるのも、あんまり日本ではないよね」
ですね。やっぱ日本では、時代劇は敬遠されがちというか、若者に馴染みがないジャンルなんですかね。
「小さい頃、おじいちゃんおばあちゃんがよく観てるものっていうイメージが強く残ってるっていうのはあるかも。そういう意味では、〈えー、時代劇か……〉っていう気持ちもわかるし、お堅いストーリーなのかな?とか、歴史知らないとわからないんじゃないか?って敬遠してしまう気持ちもわかるのね。でも、たぶん一番大きいのは、やっぱ日本ではファンタジー系のドラマがあまり好まれないっていうのもあるんじゃないかな」
アニメや漫画だとOKだけど、ドラマだとリアリティがあるもの、日常に近いものが求められるみたいな。
「だから、髪型とか出で立ち、生活様式とかに違和感があって入り込めないとか、そういうのもあったりするんじゃないかなぁ。でもさっきも言ったけど、韓国の時代劇ドラマは、時代劇の皮を被った、現代ドラマ的ストーリーのものが多いし、とくにフュージョン時代劇系は、歴史背景とか知らなくても、十分楽しめるからね」
そうですね。あと現代劇の割合が多いけど、『青い海の伝説』とか『トッケビ』も、時代劇シーンがけっこうあるから、そういう作品から韓国時代劇に慣れていくのもいいかもしれませんよね。
「そうだね。難しそうとか堅苦しそうとか思わずに、気軽に韓国時代劇も観てほしいな。面白い作品ほんと多いから」
文=平林道子
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