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INTERVIEW
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アンジーモーテル、金沢から東京へ。今どき珍しい、覚悟の上京を果たしたバンドが描く希望の形とは?

text by 石井恵梨子

金沢出身、と自己紹介すると、いいところですねと社交辞令が返ってくることは多くても、自分もそうだ、と言うバンドマンがほぼいないことが不思議だった。金沢に限らず北陸全体でそうである。ライヴハウスはある。地元バンドもいる。ただ、そこから揃って飛び出していくような勢いというものがなかなか生まれなかった。いや、今は地方のインディバンドが〈出発〉〈上京〉などと言い出すほうが珍しい時代なのだから、〈アンジーモーテル、金沢から上京〉のニュースはかなり異色なのかもしれない。結成は2019年。8割の内省に2割のロマンティックを溶かしたような歌をメインとするギターロックで、どの曲もシンガロングできる熱量があるのだが、最新シングル「青い光に包まれて」に込められた光の描き方には今までとは違う覚悟が感じられるのだ。正式メンバーを揃えて上京してからほんの数ヵ月、ギター&ヴォーカル、木下大雅に初インタビュー。



(これは『音楽と人』2025年3月号に掲載された記事です)



バンド名はミッシェル・ガン・エレファントの曲名からだそうですね。


「はい。音楽を始めたのは、大学入って、初心者でもやれます、みたいな、ゆるーい軽音サークルに入ったのがきっかけですけど。いざバンドやろうって誘われた時、名前が全然決まらなくて。何言っても『ちょっとパンチ足りんな』『意味がわからない』とかダメ出しがあって(苦笑)、だったら大御所の曲名なら何も言えないだろうと思って。それで自分のプレイリストからよさそうなやつ、カッコいい名前を選んだのがアンジーモーテルで。そしたらそのまま決まりました(笑)」


いかにもそれっぽいパンクやガレージロックをやりたかった、というわけではない?


「ではないですね。もちろん憧れてはいます、チバユウスケに。ただバンド名は、この曲名がカッコいい……っていうぐらいの感じで。もともとメンバーの好きな音楽もバラバラなので」


木下くんの音楽体験はどんな感じですか。


「音楽をちゃんと聴き始めたのは中学校ぐらいなんですけど、周りにバンドを聴く人も全然いなくて。ただテレビの音楽番組をとりあえず全部録画して、それを何回も見続けるみたいな感じでしたね。だから聴いてたのはJ-POPがメイン。あと、昔からZARDが好きで」


へぇ。物心ついた時には、もう亡くなられてますよね。


「そうですね。でも母親がめっちゃ好きで、車でずっと流れてるし、もう物心ついた時から聴かされるみたいな環境で。それが耳に馴染んでるからこそ、自分で音楽番組見始めた時も、やっぱりキャッチーで耳に入ってくる音楽が好きで」


………それがなんでアンジーモーテルになるんです?


「そう思いますよね(笑)。ルーツはJ-POPだけど、ロックバンドは大学入ってからちゃんと聴き始めて。それこそミッシェルとか毛皮のマリーズ、銀杏BOYZを友達に教えてもらって。そういう当時の衝動で、バンド名を付けたのもありますし」


今挙げたようなバンドって、毒々しさと突き抜けた個性がありますよね。そこに憧れたところも?


「いや、憧れてはないです。ただ曲が好きなだけで。憧れたとしても、自分はそういう性格でもないし」


目立ちたがりだったわけでもない?


「はい。バンド始めて、母親はびっくりしてました。もちろん父親も。そもそも自分がそんな目立とうとするタイプじゃなかったから、音楽を始めること以前に、〈人前に立つことやってるんだ?〉ってところに驚かれて」


実はそういう願望を抱えていたんでしょうか。


「あー、大学で軽音サークルに入って、何も楽器弾けないからヴォーカルしかやることがなくて。で、やってみたらなんか楽しくて。その楽しさがずっと続いてる感じはありますね。それまでライヴハウスも行ったことなかったから、〈音デカ!〉って驚いたりしたし。初めてライヴハウスでちゃんと観たバンドが滋賀のWOMCADOLEなんですけど、生で音浴びて……たぶんその衝撃が染み付いちゃってるんですね」


それって、俺も何かを吐き出したい、みたいな気持ち?


「いや? 単にみんなででっかい音出したい、みたいな」


ああ、もっとシンプルなんだ。


「なんか緊張感とか圧みたいなのがあって、自分もドキドキしたし、家に帰ったらその余韻が気持ちよかったんです。すごい爽快な気持ちで一日を終えられたなと思ったし、ほんと初めての体験だったんですよね。それで、ちゃんとデカい音出せるバンド組んでみたい、っていう気持ちになって」


ただ、アンジーモーテルのほとんどの曲って、ただ大声を出したい人の歌ではないと思うんです。


「はい。なんか……軸にあるのは、自分はハッピーなこと、幸せにフォーカスしたことはあんまり唄えないというか」


ないですね、今のところそういう曲。


「はい。それを自分で唄いたいとも思わなくて。なんか人と比べても焦燥感とか不安とか、やるせない、もどかしい感じが強いというか。もっと言ったら絶望的に自分が嫌いな部分、許せない部分。そこにフォーカス当てたい、っていうより……そうなっちゃうんですね。それをどう解釈したらいいのか、それでも自分が生活を続けるための希望にできないか、っていうところを毎回歌詞にしていて。それは自分が唄いたいからだけど、共感してくれる人が現状いてくれる。それはべつに聴いてくれる人たちが言ってほしい言葉を書くって意味ではないし、自分のために書いてはいるんですけど、結果として〈こう思ってるのは俺だけじゃないんだな〉って思えたりするんです」


それはもう、でっかい音出したい、と思っていたスタートとは違う話になってますよね。


「そうです。最初はとくに何も考えず書いてたんですけど。でも1年、2年経ってくると、歌詞書く時に何を大事にしてるのか、自問自答するフェーズがあって。そうなった時に、自分のネガティヴな部分、嫌いなところを……うーん、無理やりポジティヴに捉えなくてもいいから、それでもいいって思えるというか、自分がダメにならないような歌詞を書きたいんだと思って。全部嫌にならないように」


もともと、ネガティヴになりがちな性格ですか。


「そうですね。寝る前とか、めっちゃ考えて不眠症みたいになりますし。ライヴをした日は、思い返して〈もっと自分が言うべきことあったな〉〈違う言葉で伝えればよかったのかな〉とか、ありきたりですけど、あの時こうすればよかったのかな、みたいなことがフラッシュバックしてきて。そうなるとどんどん目が冴えてきてしまって。あと自分は大学卒業して、一昨年まで銀行で働いてたんですよ」


銀行! ……すごいな。


「そのまま働いていれば、まぁ悩みがないことはないでしょうけど、そこまで考えることなく生きていけたんかなって思うんです。でもバンドのほうが楽しくなっちゃって。ただ、平日働きながらだと思うように活動できないことも多くて、このままやったらそのうち終わるな、と思って。バンド終わって、とくに音楽に関わらず銀行員としてやっていくって考えたら、それはそれでしんどそうだなって思ったんです。〈やりたかった〉って思いながら、やらずに生きていくほうが自分はしんどい。それで、今はこういう生活してます」


あの、最初に毛皮のマリーズや銀杏BOYZに憧れたのかって聞いたら、自分はそういう性格じゃないって言いましたけど、むしろよっぽど大胆な道の踏み外し方してません?


「そうですかね?(笑)。でもギターの一輝(石原一輝)も正社員だったんですけど、去年辞めて一緒に上京してるんで」


今どき珍しいですよ、その行動力。


「あぁ……じゃあこれからは、そこはちょっと誇っていきます(笑)」


万人に褒められるかどうかは別ですけどね(笑)。でも、決めてしまえば、覚悟はできますよね。


「そうですね、もちろん。メンバーにも覚悟を決めてほしかったから上京を提案したところもありましたし。引っ越したのは去年10月ですけど、でも2024年の頭にはもう上京も決めてました。去年末に新しく入ってくれたメンバー2人(尾畑日和/ベース、澤田達希/ドラム)も、ずっとサポートで入ってくれてて、当時から上京の話もしてたんですね。で、結局ついてくることが決まって正式メンバーになったんで」


このタイミングで出るのが「青い光に包まれて」。今までにないくらい長尺の、エモーショナルな曲です。これはどんな気持ちから生まれた1曲なんでしょうか。


「これ、作り始めたのは2年前になるんですけど、同時期にニュースである記事を見つけて。それは、線虫が死ぬ時に青い光を発しながら死ぬっていうもので。その記事の最後には、もしかしたら人も最後には青い光を放っているのかもしれない、みたいなことが書いてあって。それが自分にはすごく綺麗なものに思えたんですね。もちろん死ぬことはすごく悲しいんだけど、ちょっとでも最期に綺麗なものを発しながら死ねるんだったら、それは自分的には希望だなと思って。そういう考え方と、当時見てた映画をリンクさせて書いていって……。結局この曲で何が言いたいかって、まぁネガティヴっぽい歌詞ではあると思うんですよ」


はい。


「ただ、ひとつゼロのラインがあって、それが死だとすると、その上にあるものが希望で、その下にあるのが絶望だとすると、気持ちがゼロの上にある時って、より上にあるものが希望に見えると思うんです。でも、下の、絶望の中にいる人って、ゼロすら希望だったり救いだって考えると思うんですね。自分はそこにフォーカスを当てて、〈じゃあ死ぬ時の希望って何だろう?〉って考えたら、それが青い光だなと思ったんです。すべて諦めて死んじゃうのは、もうどうしようもなかったんだなって思うことだけど、でも、最期に希望があるならいいのかなって」


おそらくだけど、そうやって誰かのことを救いたいっていう願望があるように感じます。〈期待させちゃってごめんね〉〈僕は何もできなかったよ〉っていう歌詞だけを切り取れば、ただ無力感のことを唄っているようだけど。でも本当に言いたいことはそうじゃないんだろうなと。


「そうですね。ちょうどこの部分を書いたのって一昨年の冬くらいで、いったんバンドからリズム隊が抜けるタイミングで。彼らも就職してて、忙しくて思うように活動できないっていう理由で辞めていったんですね。その数ヵ月前に自分は仕事辞めていて……」


仕事辞めてバンドに専念しようとした矢先にメンバーが抜けるって、相当キツいですよね。


「キツかったです(苦笑)。今後も不安だし、現状プラスに持っていけるものが何もない。そのことも唄ってますし。あとは、よく言いますけど、結局本気で苦しんでる人に対してプラスの言葉って気安く投げかけれないじゃないですか」


あぁ。「頑張れ」とか簡単には言えない。


「そう。頑張れとも大丈夫だとも言えない。でも言えなくなったら自分って何もできないなっていうのも思ったし」


〈何もできない〉って書いてる木下くんは、でも何かができる自分でありたい、もっと言えば何か動かすことができるバンドになりたいんだと思います。


「そうですね。もちろん自分に向けて書いてはいますけど、でもこの曲を初めて聴いた人が、仮に自分と同じような気持ちを抱えていたとして、〈これちょっと自分と似てるな〉って思えたら、それだけでちょっと気持ちが楽になったりすると思うんですね。そういう人がいてくれるなら自分は何かを動かせたってことになると思うし。その意味では、聴く人の心を動かしたいって気持ちはありますね」


強く心を揺さぶられる曲だし、ライヴで聴いてみたいです。2月には金沢で〈出発〉と銘打ったワンマン公演、そして下北沢では〈上京〉っていうイベントを企画してますね。


「そうですね。せっかく覚悟決めて上京したからには、もっと見せていったほうがいいし、見せていきたいなと思ったからこそ打つ企画でもあります」


そんなバンドが金沢から出てきたことがまずは嬉しいです。いずれどうなっていきたいと思ってます?


「そうですね……自分が作る曲って、まぁ唄ってること自体はネガティヴですけど、自分の音楽ルーツを絡めて、耳馴染みがいいものっていうのは自分でも意識してるんです。アンダーグラウンドよりはオーバーグラウンド。自分の歌は、そうだと思ってるし、やっぱりメジャーに行きたいですしね」


うん、ライヴハウスで暴れたいわけではないバンドなんだな、と。


「そうですね。もっと自分は歌を聴いてほしい。激しさよりも、ちゃんと音を伝えられる、ちゃんと見てもらえるバンド。一回一回のライヴでちゃんと何かを感じ取ってもらえるように、っていうことはつねに意識してます。今後、より多くの人に何かを感じてもらえるようになりたいです」



文=石井恵梨子
撮影=森川英里



NEW DIGITAL SINGLE
「青い光に包まれて」
2024.12.25 RELEASE

STREAMING / DOWNLOAD


〈アンジーモーテル pre. 『上京』〉
2月19日(水)下北沢SHELTER
開場 18:30 / 開演 19:00
ADV ¥2,900/DOOR ¥3,400
w/ジュウ、hotspring


アンジーモーテル オフィシャルサイト

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