ここ数年、年1ペースでスプリットツアー〈ジャンピング乾杯ツアー〉を開催している怒髪天とフラワーカンパニーズ。2024年は、イベント〈CRAFTLAND〉と、毎年10月恒例の怒髪天主催の〈ドハツの日〉に、特別編として〈2人のビックショー〉的な合同ステージを展開。またフラカンのベーシスト、グレートマエカワが、怒髪天のライヴにサポート参加するなど、さらに関係値を深めた1年を両バンドのフロントマンに振り返って――もらいません! フラカンの新作『正しい哺乳類』収録の「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」に絡め、ラッコ愛が高じて曲まで作ってしまった鈴木圭介と、同じくラッコ沼にどっぷりの増子直純による熱いラッコトークをどうぞ!
(これは『音楽と人』2025年2月号に掲載された記事です)
いつか2人にラッコ愛を語ってもらえないかと思っていたのですが、ついにそのタイミングがきました!
増子「なかなかラッコの曲はロックバンドで作らないでしょ」
鈴木「単純に今、一番気になっているものを歌にしたらできたっていう感じで」
増子「まあ自分の好きなものとか、自分の思うことを歌にしていくのが、我々の仕事ではあるんだけど。でもいくら作ったとしても、メンバーがOKしないよね、普通。だからすごいなと思ったよ。やっぱフラカン狂ってんなって(笑)」
鈴木「ブログに、増子さんが僕のことを書いてくれてたんですけど、〈圭介(狂人)〉って書いてあって(笑)。それ見てびっくりしましたよ」
増子「あはははは! いや、本当狂ってんなと思ってさ。でも、あれだよね、ブルーオーシャンだからね。誰も触れていないわけじゃない、ラッコの歌は」
鈴木「だから、誰かに唄われる前に出しておかなきゃ!と思って」
増子「まあ、そんなすぐに誰かが出すこともないだろうけど(笑)」
くくくく。ただ〈ジャンピング乾杯TOUR 2023〉で、一緒にツアーを廻っている時は、まだ、ラッコ好きであることをお互い知らなかったんですよね。
鈴木「やっぱツアー中にわざわざラッコの話はしませんからね」
増子「今日みたいに圭介が、ラッコのトレーナー着てたらね、〈おー!〉ってなったかもしれないけど」
鈴木「そうそう。〈ジャンピング乾杯ツアー〉が終わって、スタッフにラッコにハマってるって話をしたら、『あれ、増子さんもラッコの写真をブログにあげてたような』って言われて。それで見てみたら、鳥羽水族館にいるラッコのメイとキラの写真が出てきて!」
まさかこんな近くにラッコ好きがいたんだと(笑)。
鈴木「それですぐLINEしたら、鳥羽水族館の顔はめパネルで、にっこり笑ってる増子さんの写真が送られてきて、〈わおー!〉って思った(笑)」
それぞれ、ラッコ沼にハマったきっかけというのは?
鈴木「3年ぐらい前、コロナ禍の頃にYouTubeで動画を観たのがきっかけかな。それこそ鳥羽水族館の公式がたまたま引っかかったのか、動物の動画を観ていたら、誰かがあげたやつが出てきたのか、ちょっと記憶があいまいなんですけど」
増子「たぶん俺のほうが気持ち遅いんだよね。半年、1年ぐらい遅い気がするけど、たぶんSNSで流れてきた動画を観て、だったのかな……? あっ、違う。テレビの特集だったかもしれない。いろんな動物の特集をやってて、それでラッコもやってたのかな」
どちらも、コロナ禍に動画きっかけでラッコ沼にハマったわけですね。
鈴木「ご飯食べる姿もいちいち可愛いし、しばらくずっとその動画を見るくらいハマっちゃって。それで、コロナ禍が落ち着いてから、鳥羽水族館に行って」
増子「もう日本には、ラッコは3頭しかいないし(註:昨年12月取材時/1月4日に「福岡・マリンワールド海の中道」のリロが亡くなったため、現在、国内飼育のラッコは2頭のみに)、みんな高齢だから、これは急いで行かなきゃいかんと思って、俺も見に行ったんだけど、もう尋常じゃないくらい可愛くてね」
鈴木「実物見たら、本当にやばいですよね!」
増子「やばいね! やっぱ犬とか猫とか、愛玩動物と呼ばれるものって、たいてい可愛くなるように品種改良されているじゃない。でもラッコは、ナチュラルに可愛いから。実物見たら、みんな虜になるよ。〈こんなに可愛い生き物がいていいの?〉っていうぐらい可愛いからさ」
愛玩動物にはない、ナチュラルな可愛さという意味では、他にも人気の動物っているじゃないですか。例えばパンダとか。
増子「パンダって、よく見たらただの熊だもん」
鈴木「熊が白黒になっただけでね」
増子「まあ、パンダの子供は、めちゃくちゃ可愛いけど、どんな生き物も、だいたい子供は可愛いわけよ。でもラッコはさ、大人になっても可愛いからね。しかも我々の好きなメイとキラは、もう大人通り越して、おばあちゃんだから」
鈴木「年寄りになって、より可愛いっていうね。あと普通、他の動物ってイラストにすると実物より可愛くなるでしょ。でもラッコに限っては、実物のほうが断然、可愛い」
増子「実物には敵わないよね」
鼻の形とかコアラにも似てませんか?
増子「全然違うね。コアラって怖い目してるし」
鈴木「あとね、コアラはサービス精神ゼロだから」
増子「そう。ラッコは、もうファンサが、素晴らしいから」
ファンサ(笑)。ずっと見てられる感じですか?
2人「見てられる!」
鈴木「それこそラッコ水槽の24時間生配信動画は、もう何時間でも見てられる。たぶん家にいる時、それしか見てないかも。テレビも見ず、鳥羽水族館のチャンネルをずっとつけっぱなし」
増子「本当、可愛いよね」
鈴木「もうなんでも許せる。おそらく食べることしか考えてないですよね。両方ともメスだし、年齢的にも交尾をすることもないから、本当食べて寝るだけっていう。それがいいですよね」
増子「ほんと生き物らしいというか」
まさに「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」の〈食べたいものだけひたすら食べて寝る/今を明日を生き抜くため 正しい哺乳類〉の歌詞、そのままですね。1980年代にラッコブームがありましたよね。それこそ『ラッコ物語』という映画が公開されたりもして。
鈴木「それね、この間ビデオを見つけて観ましたよ。内容はつまらないですけど(笑)、ラッコしか出てない映画なんで、今度お貸しします!」
増子「ありがとう。でもあれだ、昔のアイドルの映画と同じ感じだね。内容はつまらないけど、主演でその子が出てるから観ちゃうみたいな」
鈴木「そうそうそう(笑)」
ブーム以降、全国各地の水族館にラッコがいたわけですけど、先ほど増子さんがおっしゃってたように日本には今3頭しかいないんですね。
鈴木「ブーム全盛期は122頭いたらしいです。でも結局3頭しか残らなかったっていうのは、飼育と水族館での繁殖が難しいのと、あとはやっぱりエサ代が尋常じゃないから、維持費の問題もあるのなかって」
増子「何しろ食うって言うからね」
鈴木「脂肪がないらしいんですよね。アザラシとかは脂肪で体温を保つらしいんですけど、ラッコは毛で体温を調節してるから、身体自体はすごく細くて。しかも30年くらい前にアラスカのほうでタンカーが座礁して、そこに住んでるラッコが油まみれになっちゃって。毛で体温調節できなくなって、大量に死んじゃってね」
それが原因で、絶滅危惧種になってしまったんですか?
鈴木「あと毛皮の乱獲。ミンクの3倍の価値があったらしくて」
つまりそれだけ暖かいってことですよね。
鈴木「だから最高位の貴族に提供するための毛皮だったらしくて。それで乱獲されちゃって、数が減ったって本に書いてありましたね」
増子「ろくなことしないよね、人間って」
鈴木「そう。全部人間のせい」