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【連載】言の葉クローバー/REIKOが救われた映画『Everything Everywhere All at Once』

text by 音楽と人編集部

心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は、12月4日にファーストEP「Debut」を発表したシンガーREIKOが登場。奇抜なストーリー展開を得意する監督コンビ・ダニエルズの作品で、彼が号泣したという言葉について語ります。


(これは『音楽と人』2025年1月号に掲載された記事です)



nothing matters

映画『Everything Everywhere All at Once』


 

作品紹介

『Everything Everywhere All at Once』
監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイトナー
生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色カンフーアクション作品。通称・エブエブ。第95回アカデミー賞にて7部門を受賞した。2022年公開(日本公開は2023年)。



心がなかなか弾まないなって感じた時に、気分転換で映画館にひとりで行くことが多いんです。そういうタイミングで行った映画館で、たまたま出会ったのがこの作品です。


主人公は、破産寸前のコインランドリーを経営している女性で、ある日、別の宇宙からやってきた夫とそっくりな人に、「あなたがこの宇宙を悪から救わなきゃいけない」と言われて、その悪と闘うことになるんです。けど、その宇宙を脅かしていた悪というのが、実は自分の娘で、彼女が、世界のあらゆるものをベーグルに乗せると、真ん中の穴に崩れ落ちてブラックホールみたいに取り込まれて……って、すでに何を言ってるんだか?って感じですよね(笑)。そのくらいカオスな映画ではあります。


今回選んだ言葉は、まず中盤に出てきて、最後にもう1度出てくるんですけど、同じ言葉を使ったセリフなのに、まったく意味合いが違うものになってるんですよ。まず娘が、主人公である母親にベーグルを見せた時に「nothig matters」って言うんです。僕の中の解釈では、ベーグルは死のメタファーで、娘が世界のすべてのものをベーグルに乗せていくなかで、「nothig matters=何も重要じゃない」ってことに気づいたっていうのは、だから生きる意味もないし、頑張ったって何もない、っていうマインド。つまり虚無を表してるなと思ったんです。僕自身、虚無に近い感情に悩まされたことがあったんで、「nothig matters」と言った娘の気持ちにすごく共感して、爆泣きしました(笑)。


で、映画が進んでいくうちに、世界を脅かす悪である娘は、実はベーグルの中に入ってすべてを終わらせたいだけなんだということに主人公が気づいて。最終的に娘がベーグルに入ろうとするのを阻止するんです。そのあと今度は母親が娘に向かって「nothing matters」って言うんですけど、そこには「We can do whatever you want」という言葉が一緒になっていて。〈だから何も重要じゃない〉じゃなくて、〈何も重要じゃないからなんでもできる〉っていう。その主人公の言った「nothing matters」に、僕も救われた気がしてまた号泣しちゃって。映画館を出る時には、もうこの映画が大好きになってました。


ベーグル以外にもいろんなメタファーが溢れてて、ものすごく面白い作品なので、友達にもよくオススメするんですけど、カオスな世界観ではあるので「観たけど、よくわかんなかった」って言われちゃうことが多くて(笑)。でも僕は、これからもこの映画を人にオススメしていくと思います。それぐらい大好きな作品ですね。


REIKOオフィシャルサイト

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