“ミシュラン三つ星”を目指す料理人の奮闘を描いた木村拓哉主演のドラマ『グランメゾン東京』が、満を持して映画化。2019年に放送されたドラマの続編となる本作は、木村演じる尾花がパリで新店舗『グランメゾン・パリ』を立ち上げ、仲間とともに“最後の戦い”に挑んでいく。本作の見どころやキャストの魅力を伊與田英徳プロデューサーに伺いました。見習いとして働く青年を演じるAぇ! groupの正門良規くんの撮影秘話も必見!
(これは2024年11月号に掲載された記事です)
映画『グランメゾン・パリ』は大ヒットドラマの続編。制作のきっかけや映画化する上で大事にしたこととはどんな部分でしょうか?
2019年放送のドラマ『グランメゾン東京』では、“カリスマシェフ”と称された尾花が料理界を追放され、東京で仲間と店を立ち上げ、“三つ星”を獲得するまでを描きました。ドラマが終わり、「日本の次はパリで“三つ星”に挑む尾花が見たい!」という思いが当然のように湧いてきて。コロナ禍のため時間は空きましたが、満を持して続編を映画で制作することになりました。
国の壁を超えて、日本人がフランス・パリで三つ星を取るのは簡単ではありません。けれども取材を通して、パリだからこそ異国の人や文化を受け入れる土壌があり、フレンチが自由な発想から生まれたということがわかって。パリで“三つ星”獲得に挑む大変さやおもしろさ、そしてフレンチの持つ豊かさが描けたらと思い、脚本の黒岩 勉さんと相談しながら作り上げていきました。
そして、この作品で何よりも感じてほしいのは、仲間とともに一つのことに向かう情熱。料理人が料理にかける熱がしっかりと伝わるように描いています。連ドラ、今冬放送のスペシャルドラマ、そしてこの映画があり、それぞれ単独でも楽しめますが、しっかりと物語がつながっているので、ぜひ合わせて見ていただけるとうれしいです。
主人公・尾花を演じる木村拓哉さんの役者としての魅力とは? また、パリでの撮影で印象的だったことはありますか?
尾花を演じる木村さんは正面から役を受け止める方で、しっかりとその役に向かって演じるところがすごいなと、ご一緒するたびに思っています。今作はパリが舞台ですが、ドラマからの延長線上で役を組み立てられていて。料理に人生をかける尾花が、日本での“三つ星”を取り、それから5〜6年経ってどう感じているのかを地に足をつけた形で演じられているんですよね。アイデアもたくさんお持ちなので、塚原あゆ子監督と現場で協議しながら一つひとつのシーンを作り上げていました。
今作では海外のキャストの方々も出演していますが、木村さんは海外の方でも、日本人キャストとの撮影とスタンスが全く変わらないんです。撮影中、文化の違いから意見がまとまらない場面もあったのですが、木村さんが「こういう芝居はどう?」と動きで提案してくださって。そのアイデアを見た相手が「それだったらいけるよ」と応じて、みんなが同じ方向を見た瞬間があったんですよね。 お芝居を通して、海外のキャストの方々とコミュニケーションを取られていたのが印象的でしたね。
ドラマに引き続き、鈴木京香さんや沢村一樹さん、及川光博さんなど、チーム・グランメゾンのメンバーが集結し、さらに新メンバーとしてオク・テギョンさん、正門良規くんも出演。それぞれの魅力やキャスティング理由を教えてください。
尾花とともに新店舗『グランメゾン・パリ』を立ち上げる早見役の鈴木さんは、ご自身も美食家であり、料理人に対してのリスペクトがある方。料理に対する奥行きの深さがお芝居に自然と出ているのがすごくいいなと感じましたね。尾花の才能を誰よりも理解するホール責任者・京野役の沢村さんは、とても研究熱心。あれだけのキャリアがありながら、貪欲に学ぼうとする姿勢に驚かされました。料理人になりたての頃から尾花とともに働くベテランシェフ・相沢役の及川さんは、パリにすごくなじんでいて、 それがおもしろかったですね。 きっとアーティストならではのパリのとらえ方があるんだろうなぁと感じました。
また、映画で新たな仲間として加わる2PMのテギョンさんとAぇ! groupの正門くんも魅力的。パティシエのユアン役を演じるテギョンさんは、彼のライヴも見させていただき、感情がストレートに伝わってくる方だなと感じて。その真っすぐさがユアンとマッチしていると思い、オファーさせていただきました。見習いの小暮を演じる正門くんは、真面目な青年の雰囲気が合っているなと。一つひとつ頑張っているけれど、ちょっと逆らったりもする現代風の青年を自然に演じてくれましたね。
本作はパリが舞台ということで、劇中では日本語のセリフと変わらない量のフランス語のセリフがあります。木村さんやキャストの方々のフランス語のお芝居はいかがでしたか?
今作は全編を通してパリが舞台なので、キャストの皆さんにはフランス語にも挑戦していただいたのですが、本当にフランス語のセリフが多くて。これはもう練習していただくしかないのですが、木村さんも「空を飛べない人に飛べと言っているぐらい大変」とおっしゃっていましたね。ですが、いざ撮影に入ると、皆さん昔からフランス語を話しているかのように流暢にお芝居をされていて、僕が思っている以上にすごく努力されたんだろうなと。僕らには努力の跡を一切見せず、さっとやっちゃうところが本当にプロフェッショナルだなとあらためて感じましたね。
また、フランス語だけでなく、 日本語に韓国語、英語の4カ国語が飛び交うシーンも映画ならではです。お芝居した瞬間に言語は壁がなくなるんだっていうのを現場で見ていて感じましたし、日本を飛び出してよりスケールアップした物語を楽しんでいただけたらと思います。
ドラマから変化したところや、映画ならではの見どころとはどんな部分でしょう?
ドラマも映画も“料理に対する情熱”というのは一貫したテーマなのですが、映画では仲間との絆がより深く描かれています。もちろん料理には個人の才覚が必要ですが、素材選びやレシピの考案、お店の経営をひっくるめると、チームじゃなければできないところがある。国籍なども関係なく一丸となって、総合力でパリを制するというところが一つの見どころになっているんですよね。
それに、やっぱりチームの一体感って感動するんですよ。尾花やユアンがぶつかり合いながらも仲間の絆に気付いてこれからどうするかを話すシーンでは、チームが一つになっていくのが感じられるし、空気を一つにしていく木村さんの芝居でしか出せないものがあるんです。
また、玉森裕太さん演じるシェフ・平古祥平ら“グランメゾン東京”チームとの絆を感じられる場面もあります。パリで“三つ星”を取るためにみんなで走っていく姿にきっと心を打たれると思いますし、ぜひ結末を見届けてほしいですね。
料理監修を務めるのは、アジア人として初めてフランスで三つ星を獲得した小林 圭シェフ。小林シェフに監修をお願いした経緯や料理シーンを撮る上でこだわったこととは?
実は前作の『グランメゾン東京』の放送直後に、小林シェフの三つ星獲得のニュースを耳にして。ドラマと現実がリンクするような感覚もあり、ぜひ小林さんに監修をしていただきたい!と、思い切ってお願いしました。
小林シェフの料理は目を引くものばかりで、料理は主人公の一人だと納得させられるような存在感があるんですよね。料理シーンの撮影にも立ち会っていただき、料理人のリアルな動きなどはもちろん、食材のどんな画を撮るか、塩をどう振りかけるか、さらに盛り付けまでこだわって、監督やカメラマンと試行錯誤しながら一番おいしそうに見える撮り方を追求しました。
続投キャストの皆さんはもう手慣れた手つきでしたね。 テギョンさんと正門くんも包丁さばきなどを教えてもらい、たくさん練習もしてくれて、撮影では上手にこなされていました。
最後に、髪形などのビジュアル面での注目ポイントもあったら教えてください。
ドラマでの尾花は黒髪でしたが、映画では金髪に変化しています。小林シェフが金髪なのもあり、敬意を込めて木村さんの提案で金髪にされたのですが、僕は全く想定していなかったので驚きましたね。でも一度目にしたら、金髪の尾花以外考えられないぐらい役にフィットしていて。異国の地であるパリでは、やはり料理人としての意志の強さが重要になるし、金髪もそれを示す要素の一つになるんだなと感じました。
正門くん演じる小暮は、実は最初はいかにも真面目な青年のイメージだったのですが、塚原監督のアイデアでカーリーヘアになり、同じく驚きました(笑)。でも、いざパリで撮影したら「いるな、こういう青年」と思わせられて。正門くんもそのビジュアルにアジャストして役を作っていて、さすがでしたね。
文=室井瞳子
伊與田英徳プロデューサー
いよだ・ひでのり/1967年5月6日生まれ、愛知県出身。数々のドラマ、映画のプロデューサーを務める。近年に手掛けた作品は、映画『七つの会議』、ドラマ『ブラックペアン シーズン2』、『DCU』など。
映画『グランメゾン・パリ』
(東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給/
12月30日より全国ロードショー)
監督:塚原あゆ子
出演:木村拓哉、鈴木京香、オク・テギョン、 正門良規、玉森裕太、寛一郎、吉谷彩子、 中村アン、冨永 愛、及川光博、沢村一樹 ほか
(C)2024映画『グランメゾン・パリ』製作委員会