2024年に結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えた9mm Parabellum Bullet。彼らの記念すべき節目にあたり、〈9mm Parabellum Bullet 20th × 音楽と人〉と題し、これまでに発表されたアルバムに関する記事を順次公開していきます。毎月1作ずつ、9ヵ月に渡る特別企画。今回は、サードアルバム『Revolutionary』リリース時に行った、メンバーそれぞれへのインタビューの中から、このバンドのコンポーザーであるギター・滝 善充のインタビューをお届けします。
(これは『音楽と人』2010年5月号に掲載された記事です)
彼らは登場以来、この世にあるすべての音楽を我が物とすべく飲み込んできた。激アツの音楽はもちろん、ちょっと滑稽な音楽も大マジに、時には爆笑しながらも取り込んでいき、9mmにしかありえないロックとして爆発させてきた。それは痛快で新鮮だった。9mmは痛快なる最新鋭バンドとして登場したにもかかわらず、溺愛したくなるメンバーの親しみやすいキャラクターやエピソードもあった。そうしてシーンを興奮や感動や爆笑でかきまわしてきたのだ。
待望のサードアルバム『Revolutionary』完成。これまで4人が培ってきたもの、そして多くのロックファンの心を虜にさせてきたものがここにはすべて、ちゃんと詰まっている。しかしこの作品は、今までとは段違いのスケールを誇る強靭かつ重厚なロックアルバムでもあるのだ。
1曲目、菅原はこう綴り、唄う――〈今世紀最大のドラマ/世界中がベルを鳴らす〉
デカく出ている。そしてここに、今こそデカく出なくてどうするんだという思いを感じる。2010年を代表する、この時代を代表するロックアルバムを自分たちが作り上げたいという強い志がある。飛び道具的な新世代バンドとしてではなく、シーンの中心の世代、そのトップランナーたろうとする意志がある。その思いこそが、このアルバムを、このバンドをさらなる高みへと押し上げている。いくつかの曲は痛快、飛び道具といった言葉で括ることのできない重みと深さを持った。歌詞ひとつひとつの言葉の重みも増していて、熱さとクールさが同居する不思議な感覚をもたらしている。ストーリー性も今までになく強く、アルバム全体にもひとつの大きな物語が宿ってるようにすら感じる。
この傑作を作り上げるための苦闘、努力、バンドの強い思いがあった。その苦闘を経ても、愛すべきバカ話があり、そんな愛すべき4人もまた健在だ。
まずこのアルバムを作った感想から聞かせてもらいらいのですが。
「もう、やりきりました。セルフプロデュースだったんで、ずっとスタジオのコントロールルームのデスクにかじりついて、聴こえてくる音を全部、ドラムもベースもギターも聴き逃さないようにしてやろうと(笑)。で、全部がちゃんとカッコいい音が出てるなって確認しながらやってました」
今まではプロデューサーがとして、いしわたり(淳治)さんがいたわけですけど、より客観的になれたもんですか? それとも主観的な要素が強くなってきたと思いますか?
「いや、本気で取り組むぞってセルフプロデュースで取り掛かると、主観も客観も両方バランスよくできるようになって。主観で俺はこういきたいけど、客観でこれはどう思うのかな?とか、そうやってすごくいろいろ考えました」
それは今までと感覚は違いますか?
「そんなに感覚は変わらないんですけど、今まではもっと9mmを客観視しようとしてたところがあったんですね。でも今回は、主観なのか客観なのか、どっちがどうっちなのかわかんないぐらい、すぐに頭をパッパッと切り替えてました。やっぱり主観は大事ですね。自分の趣味というか、そこは大事にしました」
自分の趣味、それはアルバムのどこに出てますか?
「例えば、アルバムの後半、ちょっと暗い泣きメロみたいな感じで、メロディがエゲツない運び方になってるんです。半音ずつ下がるコード進行があったり、無茶苦茶なギターソロが入ってきたり(笑)。そこは主観を強くして」
では、一番大変だったのは?
「時間がなかったところ(笑)。9月に曲を作っていたんですけど、ちょうど武道館のライヴがあったから、かなりデカい柱を2本同時に抱えていて。それでけっこう頭のがパンクした上に、武道館終わったら、ちょっと腑抜けになってしまって(笑)。曲作りも思うように進まねぇ、どうしよう……みたいなところで、心の準備が整わないままアルバムの制作に突っ込んでしまって」
今回、ゴツゴツした曲が多い印象を受けたんですよね。
「それは僕も思います。アルバムに向けた曲を集めてみたら、ゴツい曲がけっこう多いなっていうのが、最初の印象でした。ゴツいし、速いし、イケイケ感もある。そして暗い(笑)。それが『VAMPIRE』と対照的で面白いなと思いました。その時、ストイックな気分になってて、本格的に音楽を突き詰めてやろうみたいな空気だったから。それが強く出てますね」
滝さんにそう思わせたのはなんでしょうか?
「それはですね、武道館とか、リリースにおけるいろいろな用事ですとか、ほかの私的な細々としたこともあって、音楽に集中できない時期があったからです。それでちょっと頭がパンク気味だったから、きちんと整理してアルバムに向かおうと思って。それで気持ちがストイックになっていったんだと思います」
じゃあ今回、具体的にこういう方向に振り切れようとか、もっと突き詰めて深くやろうとか、そういう話をされたんですか?
「それはなかったですね。やっぱ曲が揃ってからじゃないと方向性もわからないんで」
揃ってから、けっこう重たい曲が多いなと思ったと。
「うん、ゴツい、速い曲が多いなと」
では滝さんから見て、今回のアルバムは前作『VAMPIRE』と比べて、どこが違いますか?
「『VAMPIRE』と比べると、職人的なストイックさがあると思いますね。あと『VAMPIRE』や『Termination』は、ドライで湿気が少ないコードワークとメロディにしてたんですけど、このアルバムの後半は、ジメジメ湿っぽい感じのメロディになってます。それはけっこう大きいですね」
それは何かに引っ張られたところもあるんですか?
「いやぁ、じめじめ湿っぽいメロディがあるのはですね、ほんと時間のない中で、自分の地が出てしまったんです(笑)。ドライにハッタリかませる余裕もなかったっていうか」
余裕がないから、自分の地が自然に出てしまった、と。
「そう(笑)。でも個人的にはすごく好きです。自分の何かが気づかないうちに滲み出てる感じで。〈光の雨が降る夜に〉とか〈キャンドルの灯を〉とか、個人的にすごく気持ちいい」
そのじめっとした湿っぽさを、自分がずっと持ってるんだというのは、滝さん自身わかってたんですか?
「わかってましたね。今まであんまり出そうとはしてなかったですけど、今回は出ちゃった」
それは、9mmというバンドのイメージの中では、あんまり出すもんじゃないと?
「はい。このバンドが活きるのって、ドライでメタリックで硬質な曲がカッコいいと思うんですよ。そういう中に、自分のじめっとした部分がエッセンスとしてふりかけられてるくらいが、ちょうどいいと思ってたから。このアルバムの後半の曲に関しては、そのフタが緩んで、多めに出ちゃいましたけど(笑)」
つまり、9mmというバンドのイメージは、早期から明確にあったってことですよね。
「速い、暗い……あとなんだったかな(笑)。わすれちゃったけど、そういうイメージでやろうって話してました、みんなで。でも、そこには別にしがみつくこともなく、自由にやればいいなと思ってます。ずっと前から、そんなに自分の居場所は決めてなくて。いまだに転々としてる感じです。このアルバムもかなり転々としてると思うんで」
あんまり居場所をひとつにしたくない感じですか?
「そうですね。基本、あっちこっち手を出したい人たち集まってる感じなんで」
でもそういうのって、けっこうバラバラになりますよね?
「バラバラになりますね(笑)」
それをひとつにしてるものって何なんだと思います?
「それは……単純にその曲がいいか/悪いかでしかないです。どんなジャンルでも曲がよかったら、ほんとに素晴らしい曲ができてたら、音楽性の不一致による解散なんてことは絶対に起こらないと思うので。そして、そのフレーズなら俺はこういうことやりたい、みたいなのも思いつくし、やりたいことが曲の中でみんな達成されているんだと思いますよ」
『Revolutionary』という言葉からは、どんなことを感じますか?
「革命的な感じ、ですかね」
それは直訳です(笑)。
「うん、直訳(笑)。でも…………なんだろうなぁ、イメージとかはとくにないですね。何かの意味っていうより、テンション的だったような感じです。このくらい言ってやろうぜ! 根拠はないけど革命だ!みたいな。リスナーひとりひとりの持ってる、そういうテンションに呼びかけてる感じというか」
何かを変えたいとか、そういう具体的な何かじゃなく。
「そうじゃなく、テンション的なものですね。でもそれが、何かを変える始まりだったりすると思うから。身近なことも、世界的なことも、変えていくのはひとりひとりの心だから」
でも9mmってバンドをやってきて、明らかに自分たちの立ち位置だったり状況が変わってきてる、その実感はありますか?
「状況は変わってきてるとは思います。でも実際ライヴをやったりしてる感触は、ここ1、2年……3年くらいは、変わらないなって思うんですよね。最初に初ワンマンやった時に〈うわっ、今日かなり盛り上がってんなぁ〉って思った次のライヴから、そうあまり変わってない(笑)」
はははっは。今までずっと一緒ですか。
「そのワンマンを境に、棒立ちだったお客さんが一気に熱気ムンムンにパッと変わって。そこからはもうずっと、な感じがしますね。それに、僕は9mmのギターではありますけど、9mmが頑張れてるのは、自分のおかげでもメンバーのおかげでもなくて、いろんな人のおかげだったりするんで。なんか自信持って〈俺はやってきたんだ!〉みたいにはなかなかならないですね。みんなそうだと思いますよ、うん。絶対4人だけじゃこんなとこまで来れるわけがない」
わけがない、と思いますか?
「うん。そんなに行動力はないですから。いろんな人に引っ張られなかったら、たぶんずーっと部屋でエフェクターと曲を作ってるオタクだったと思いますよ(笑)。だって最初は、曲作ってライヴやって、お客さんの反応とかとくに気にせず、自分たちがどういうアクションができたか、絵としてどういうライヴができたか、に向かってましたから。ライヴの固定カメラで見る引きの絵があるじゃないですか。その絵が、音も含めてどんだけ熱くなるか、カッコいいか、みたいな」