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【Archive/Live Report】Mrs. GREEN APPLE/音楽と人2023年10月号

彼はあの頃の自分に「もう寂しくないよ」と言ってあげられる日を探していた。その願いがこの日、ついに叶ったのだろう



心の底から安堵した。ここまで不安がないまま終始穏やかな気持ちで彼らのステージを観るのは初めてのことだった。そして今、ようやく気づいた。彼がこのバンドで成し遂げたかったのは、あの頃の自分をここに連れてくることだったのだろうと。


アリーナツアーから間を置かず開催されたドーム公演。しかも彼らにとって最大規模の会場であるだけでなく、ここは結成10周年を祝う特別な場所でもある。これまで以上のスケールとショーアップされたステージと、鍛錬を重ねたプレイとパフォーマンスで楽しませてくれることは、開演前からの確定事項みたいなものだ。さらに彼らは『ANTENNA』リリース以降、さまざまなメディアに採り上げられると同時に多くの音楽/トーク番組にも出演を果たし、世間からの高い認知を得たばかり。フェーズ2開幕から1年あまり、ついにMrs. GREEN APPLEは令和を代表する国民的バンドとしての地位を確立したことを、この場所で証明することになるのだ。しかし、そうなることに感慨深さを覚えつつ、どこかで寂しさや不安のようなものも感じていた。初めて彼らと出会った小さなライヴハウス。17歳の少年が必死に背伸びをしながら、デビュー前夜の葛藤と不安を「CONFLICT」という曲に託したあの夜。あの頃の彼らに再会することは、もう二度とないのだろうと。


バックネット裏の関係者席へ向かいながらステージを見下ろす。巨大なパルテノンがそびえたつステージとアリーナへ十字方向に伸びる花道が壮観だ。すでに3万人以上のオーディエンスがフィールドを埋め尽くす圧倒的な景色を前に、思わず身構えてしまう自分がいた。実は〈NOAH no HAKOBUNE〉ツアーの時もそうだった。これだけ多くの人たちの思いを、3人はどこまで受け止められるのか。たくさんの人から求められる存在になったことに対する責任や使命を、背負うことができるのか。そんな不安を密かに感じたものだった。でも「今の僕らなら大丈夫だよ」と、きっと大森は答えるだろう。そう確信できるほど、〈NOAH no HAKOBUNE〉ツアーで3人が見せてくれた笑顔は、とてつもなく清々しかったのだ。


海底に沈んだ幻の古代都市が蘇るオープニング映像からの幕開け。ノアの方舟に続く物語が「ANTENNA」とともに始まる。大舞台の始まりに3人は身を固くしているのかと思いきや、大森は楽しくて仕方がないといった表情で唄っていることに驚かされる。さらに〈憂鬱も抱きしめて どこまでも行ける そんな気がしてる〉という歌詞に合わせライトスティックを振り回す客席の光景に胸が締めつけられる。休止や脱退を仲間と共に乗り越えることができなかったら、大森は〈憂鬱を抱きしめる〉こともできなければ〈どこまでも行ける〉とも思えなかったし、そもそもこの歌を書くこともここに立つこともできなかったはず。そんな歌を今、3万5千人の仲間と分かち合っているのだ。その横でタッピングというプレイを軽々と披露する若井は、いつのまにか渋いレスポールのギターが似合う男になっていた。一方の藤澤は今まで見たこともない精悍な顔つきで鍵盤と向き合っている。


メンバーひとりひとりにフォーカスを当てれば、彼らの仕草や表情に感慨深さを感じるものの、いざステージを俯瞰すれば「サママ・フェスティバル!」で投下されたウォーターキャノンをはじめ、ひたすらスケールのデカいエンターテインメントに圧倒されるばかり。照明、映像、特効といったこの日のライヴを彩る演出の数々が、バンドにまつわる個人的な思い入れや海底都市という舞台設定も吹っ飛んでしまうほど規格外なのだ。この日のライヴが終わる頃には、きっと彼らは非日常的かつ近寄りがたい存在として生まれ変わるのだろう。アイコン、あるいは偶像。それが彼らに課せられた新しい使命なのだ。大森の孤独感をそのまま吐き出した「umbrella」や、大切な人を失ったことで生まれた「Soranji」も、自分以外の誰かのために捧げる歌として大きな多幸感に満ち溢れていた。


しかし。演出のために100トンの水を使っても、総勢20人以上のキャストが花道に入れ乱れても、彼らは近寄りがたいアイコンになるつもりはなさそうだった。それどころかMCでは戯れあっていつまでも曲に入らなかったり、3人だけのトライアングルで「BFF」を演奏したり、バンドが置かれている状況とは対照的な〈いつもの彼ら〉がいつまでも居座っていたのだ。というか今までのミセスのライヴにおいて、ここまで彼らが等身大のままステージに立っているのを観たことがない。「ダンスホール」の演奏中にダンスまで披露してしまうアクロバティックなパフォーマンスですら、彼らのユーモアや茶目っ気が溢れかえっている。バンド史上最大規模のライヴをどうしてキミたちはそこまで楽しむことができるんだ? プレッシャーは?  3万5千の気持ちを背負う覚悟は? いや、そんなことよりも大事なことがあるんだよ、と言いだしそうな彼らがそこにいた。そしてアンコール。「我逢人」を唄う大森を観て、ようやく気づいた。今、彼はあの日の青春をやり直しているのだ。


「もっと大勢の人の前でライヴをやったら……学生生活を取り戻せるのかなって思ってるんですけど。この寂しい感じとか」


デビュー当時のインタビューで、彼はこんな本音を漏らしていた。メンバーといても寂しいし、デビューが決まっても寂しい。その理由を、彼は人並みの学生生活を経験していないことに求めていた。だからこそ、彼は多くの人前でライヴをやることで青春を取り戻したいと思っていたのだろう。この10年、彼はその思いを遂げるために生きてきた、ということなのか。そして今、彼はあの頃の自分とともにステージに立っているのかもしれない。


歳も重ねたしいろんな経験を積んだ。大人のフリじゃなく、本当に大人にならなきゃ前に進めない辛さも味わった。でも、もういいよ。ここまで来れば大丈夫。彼はきっと、中学時代の大森元貴にこの景色を見せてあげることができたのだろう。ずっと心配していたのは、彼があの頃の自分を忘れてしまうこと。だから、彼はずっとこの日を10年待ち焦がれていた。あの頃の自分に「もう寂しくないよ」って言ってあげられる日を探していた。その願いがこの日、ついに叶ったと、強く思えるようなライヴだった。 

文=樋口靖幸
写真=田中聖太郎、MASA、石井亜希、河村美貴、山内洋枝、金谷龍之介


DVD / Blu-ray
『ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”』
2024.01.12 RELEASE

  1. Opening
  2. Viking
  3. アウフヘーベン
  4. CHEERS
  5. 私は最強
  6. VIP
  7. Blizzard
  8. Hug
  9. 私
  10. StaRt
  11. ニュー・マイ・ノーマル
  12. Loneliness
  13. インフェルノ
  14. Love me, Love you
  15. HeLLo
  16. ダンスホール
  17. Folktale
  18. norn
  19. 鯨の唄
  20. 青と夏
  21. Magic
  22. Soranji
  23. ケセラセラ
  24. En1. Feeling


DVD / Blu-ray
『DOME LIVE 2023 “Atlantis”』
2024.01.12 RELEASE

  1. Opening
  2. ANTENNA
  3. Speaking
  4. サママ・フェスティバル!
  5. アンラブレス
  6. アボイドノート
  7. Love me, Love you
  8. umbrella
  9. Soranji
  10. 青と夏
  11. ロマンチシズム
  12. フロリジナル
  13. BFF
  14. 僕のこと (Atlantis ver.)
  15. 私は最強
  16. Loneliness
  17. 絶世生物
  18. ダンスホール
  19. Magic
  20. En1.我逢人
  21. En2.庶幾の唄
  22. En3.ケセラセラ


DVD / Blu-ray
『ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE&DOME LIVE 2023 “Atlantis” 完全生産限定 SPECIAL COMPLETE BOX』
2024.01.12 RELEASE


TOWER RECORDSで購入
HMVで購入
Amazonで購入



Mrs. GREEN APPLE オフィシャルサイト

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