【STAGE REPORT】
『少年たち 闇を突き抜けて』
2023.10.04 at 東京・新橋演舞場 ※ゲネプロ
1969年の初演以来、さまざまなアレンジを重ねて進化してきた伝統舞台『少年たち』シリーズの最新作。少年刑務所を舞台に、大人と社会への反抗心を持った少年たちが、自由を求めて刑務所からの脱獄を決意する姿を描く本作。戦争がもたらす悲劇や平和の大切さも強く問いかける。
今年は、岩﨑大昇、佐藤龍我、那須雄登、浮所飛貴、藤井直樹、金指一世ら美 少年が出演3年目にして初の単独主演を務め、構成・演出・振付は新たにSnow Manの岩本 照が担当。今までとは違う新しい“少年たち”の幕が開ける——。
大切な思い出、受け継いだメッセージをしっかりと守りながら、未来につなげる新しい『少年たち』——。出演3年目を迎え大きく成長した美 少年と、看守役としても囚人役としても長きに渡り今作に出演し続けたSnow Manの岩本 照の構成・演出・振付によって再構築された今年の『少年たち』は、ショーとしての見応えも、ストーリーへの引き込み方も、メッセージ性の強さも、観客を常にワクワクさせる素晴らしいミュージカルに仕上がっていた。
スクリーンに歴代のサブタイトルや映像が映し出されると、岩本のナレーションで幕開け。物語は20XX年、平和な現代の何気ない日常の風景から始まる。平和が当たり前だと思っていた日本で突然戦争が始まり街は崩壊。北と南に分かれて対立する社会の中で、生きるために罪を犯した少年たちが少年刑務所に集まってくる。戦前は共にダンサーを目指す親友同士だった那須と浮所、明るく大らかな佐藤、病気の弟を助けたい藤井、人を殺めてしまった過去を抱える元少年兵の金指らは、看守長(内 博貴)に抑圧された環境下でケンカを起こすこともしばしば。だが、戦争のショックで記憶をなくして幼い子供のようになった岩﨑が、ケンカのたびに争いを止めに入り、少年たちは徐々に心を通わせていく。そして未来のために、共に脱獄へ踏み出す。少年たちの罪にはあまりフォーカスせず、これからの彼らの未来に軸を置いた物語は、シリアスとエンタメの緩急が絶妙。その中で美 少年の6人は、ふとした一瞬も逃さず、それぞれが担う役の人間性を伝えていた。
一幕の「時の彼方」からジャズをベースとした迫力あるダンスシーンがたっぷりで、進化した美 少年のダンススキルが全開。今作に欠かせない名曲「闇を突き抜けて」「君にこの歌を」なども存分に聴かせ、照明や映像を使ったテンポ良く派手な演出の中でも、各々の長所や個性を生かしたパフォーマンスは丁寧にフィーチャーされ、一人ひとりが生き生きして見えた。また、同い年で同期の“うきなすコンビ”こと那須&浮所が親友兼ライバルの役だったり、昨年は日記を紡いでいく役だった金指が今年は岩﨑に日記を書くように勧めたり……。『少年たち』シリーズや美 少年のファンならなおさらグッとくる設定や伏線も満載で、さまざまな角度から楽しみ、考えることのできる作品に。それだけ濃厚な要素を全力で受け止め、よく理解し、自分たちらしく表現する美 少年6人の頼もしさと巧みは、彼らの努力のたまものだ。
終盤、佐藤が語る「戦争と無縁な人生、それが当たり前だと思っているのはこの国に住んでいる人だけだ……」という言葉。これは岩本がかつて今作で担っていた大切なセリフだ。作品の根底にある希望や平和への願いを岩本が見事に形にし、美 少年が観客に届ける。先輩から後輩へ。受け継がれる魂はやはり、尊く力強い。
闇を突き抜けて、未来に向かって駆け抜けて……。どんな時代でもどんな世界でも、彼らは希望を胸に夢を描き、まばゆい光を届けてくれる。アイドルとして誇り高く美しく輝くその姿に、今日もまた胸を打たれた。
文=関 亜沙美
写真=青木早霞
※QLAP!2023年11月号(10月14日発売)ではより多数の写真でレポートをお届けします
『少年たち 闇を突き抜けて』
東京・新橋演舞場:10月4〜28日
出演:美 少年 ほか