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山中さわお、8thアルバム『Booty Call』ツアー完走! やっと取り戻した理想の夜について

text by 平林道子

【LIVE REPORT】
山中さわお〈BOOTY CALL TOUR〉
2023.07.13 at 渋谷CLUB QUATTRO



通算8作目となるソロアルバム『Booty call』を携えての全国ツアー最終日。場内が暗転し、開演を知らせるSEが鳴ると同時に沸き起こった大きな拍手と、フロア中に響き渡る歓声が、ステージに登場するメンバーを出迎えた。3年前では当たり前だった、でも前作ツアーにはなかった光景。そしてなにより、ステージ中央に立つ山中さわおが、ずっと取り戻したかったライヴハウスのあるべき姿がそこにあった。


アルバムのタイトルナンバー「Booty call」で〈いつか手放した理想はここにある〉と宣言し、ライヴは幕を開けた。続く新作収録のポップなロックチューン「Balalaika」のイントロとともに、勢いよくフロアに身を乗り出し、ギターを掻き鳴らす山中。そして「今夜俺たちは孤独じゃない。熱い夜にしよう」という言葉を挟み、新作の楽曲を中心に、窮屈な日々が続いた3年の間に生まれたナンバーたちがテンポよく鳴らされていく。


この日、山中とともにステージに立つのは、安西卓丸(ex.ふくろうず/ベース)、木村祐介(ArtTheaterGuild/ギター)、楠部真也(Radio Caroline/ドラム)というお馴染みの面々。さらに今回のツアー中盤戦に参加していた関根詩織(Base Ball Bear/ベース)を加えた4人は、近年の山中作品には欠かせないメンバーだ。


「このメンバーでもうひとつバンドをやってるという感覚がしっくりきている」と、新作のインタビューで語っていたが、時にビートに合わせ、山中、木村、安西がネックを左右に振ったり、曲間のブレイクでドラムの楠部を中心に輪になって向き合うなど、実に息の合った姿をみせていく。気心知れた仲間と全国各地で音を鳴らし、充実した夜を共に過ごしてきた喜びと楽しさ。それが音に乗ってフロアに伝播し、オーディエンスもまた、両手を挙げたり、歓声を飛ばしたり、思い思いのやり方で身も心も躍らせていった。


「Boogie Box」を終え、鳴り止まない拍手と歓声に、思わず「すごい人気あるな」と口にした山中は、バンドメンバーの中でもとりわけ付き合いの長い、ドラムの楠部と初めて一緒にスタジオに入った、ソロ・セカンドアルバム『退屈の男』(2012年作)のレコーディングの話をし始めた。当初は、「The Beautiful Lip」の1曲だけの予定だったが、思った以上に互いのフィーリングが合い、「20分で新しい曲を作るから」と楠部を呼び止め、急遽もう1曲録音した――そんなエピソードを持つナンバー「Do you like a walk?」からスタートした後半戦。


「POP UP RUNAWAYS」でグッとギアを上げ、「ロックンロールはいらない」、「アインザッツ」へとなだれ込んでいく。7年ぶりのソロツアーがコロナ禍の影響で中止になり、その憤りと落胆を吐き出すかのように生まれた「ロックンロールはいらない」、「アインザッツ」は、疾走感溢れるロックンロールサウンドとは裏腹に深い哀しみが横たわるナンバーだ。ゆえに、これまでライヴ会場で爆音の中で聴いても、胸の奥がギュッとなって仕方なかったのだが、この日続けざまにプレイされたこの2曲がもたらしたものは、圧倒的な一体感であった。


どこか初期衝動にも似た瑞々しいエネルギーを漲らせ、4人がぶちかますロックンロールが、渾身の歌声が、オーディエンスの熱狂を呼び起こす。そして、「アインザッツ」のラストのサビで、〈思い出は全部 塗り潰したんだよ 空っぽになった 昨日までと違う世界〉という歌詞を、〈思い出をやっと取り戻したんだよ 空っぽじゃなかった 昨日までと違う世界〉と唄い放った山中。もはや怒りや哀しみを乗せた痛切な叫びではなく、この3年の間、ロックンロールを諦めなかった山中と、この日ここにいる我々のアンセムのように力強く響き渡ったのだった。


高揚感に包まれるフロアを嬉しそうに見渡しながら、「まるで最後の曲みたいなテンションになってるけど、まだまだやるよ」とクールダウンを促す山中。その後のメンバー紹介を兼ねたMCでは、今回のツアーを振り返ったり、最近の出来事を語ったりしながら、それぞれの言葉でオーディエンスへの感謝を述べていった。そして「悪魔のパブに連れてってやるよ!」という言葉を合図にガツンと4人が音を鳴らし、「The Devil’s Pub」へ。さらに「Desert me」「ヒルビリーは かく語りき」を、ツアーを経てより強固になったバンド・グルーヴでドライヴさせていく。そしてオーディエンスのハンドクラップとともに始まった「Mallory」から、「the end」と一気に駆け抜けていったのだった。


フロアからのアンコールの声に応え、まずは、山中がハンドマイクで唄う「Muddy comedy」、軽快なロックンロール・チューン「Vegetable」を披露。ダブルアンコールでは、今回のツアーを共に廻った、もうひとりの仲間である関根を呼び込んだ。ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エール(現在the pillowsの「LITTLE BUSTERS」がCMソングとしてOA中)で乾杯し、〈もっと世の中に浸透してほしいこと〉というお題で、オーディエンスとコミュニケーションをとりながら、しばしのトークタイムが設けられた。和気藹々と言葉を交わす5人の雰囲気からも、今回のツアーが楽しく充実したものであったことが伝わってくる。


この日、幾度となく「楽しい」と口にしていた山中。ダブルアンコールで関根を呼び込む前、「最高だ!」「ありがとう! いやぁ、楽しかったわ」と、フロアに向かって感謝を伝えたあと、「俺たち出会うべくして出会ったんだろう。これ以上のことなんかねえよ!」と言葉を続け、その喜びを全開させた。先のインタビューで「この3年、ものすごく苦しかったけど、そんな時でも絶対的な味方がいて、ものすごく愛情を受け取った」と語っていたが、きっと今回ツアーを通して、自身の音楽を求め、必要としている人たちとの絆を、改めて実感することができたのだろう。


そして最後は、the pillowsのナンバーを弾き語りで披露。このツアーのラストナンバーとして山中が選んだのは、「ジョニー・ストロボ」。〈永遠じゃなくたって価値がある夜〉と唄う、山中流のファンへのラヴソングを柔らかな唄声で届け、ライヴは幕を閉じたのだった。


理不尽に自由を奪われてしまったロックンロールの、ロックバンドのあるべき姿を取り戻し、濃密で深い愛情を確認しあえた夜。いつか手放した理想はここにあったのだ。



文=平林道子
写真=岩佐篤樹


【SET LIST】
01 Booty call
02 Balalaika
03 Peacock blue(is calling me)
04 セクレト ヴィスタ
05 allegory
06 Lame town
07 愛のパラダイス
08 トランス バランス
09 Grave Keeper
10 オルタナティブ・ロマンチスト
11 Boogie Box
12 Do you like a walk?
13 POP UP RUNAWAYS
14 ロックンロールはいらない
15 アインザッツ
16 The Devil’s Pub
17 Desert me
18 ヒルビリーは かく語りき
19 Mallory
20 the end
ENCORE 01
01 Muddy comedy
02 Vegetable
ENCORE 02
01 DAWN SPEECH
ENCORE 03
01 ジョニー・ストロボ(弾き語り)


NEW ALBUM『Booty call』
2023.04.26 RELEASE

※ライヴ会場・通販限定リリース

〈CD〉
01 Booty call
02 Balalaika
03 セクレト ヴィスタ
04 allegory (Booty version)
05 Lame town
06 トランス バランス
07 Grave Keeper
08 Boogie Box
09 the man
10 the end

〈DVD〉
01 セクレト ヴィスタ [MUSIC VIDEO]
02 Recording of Boogie Box



山中さわお(バンド)
〈Top Of The World〉
9月30日(土)  荻窪・TOP BEAT CLUB
w/Radio Caroline


the pillows × 怒髪天
〈B.M. I LOVE YOU 2023〉
9月6日(水) 心斎橋・BIGCAT
9月7日(木) 名古屋・Electric Lady Land
9月13日(水) 渋谷・duo MUSIC EXCHANGE


山中さわお オフィシャルサイト

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