4人でバンドをやって、力を貸してくださるチームがあって。そういう人たちに名前を呼んでもらえたら、そりゃ愛おしくなりますよ
めっちゃすてきな話。ご両親って、どんな方なんですか?
「母ちゃんは本の編集者で、父ちゃんは中華料理人。2人とも祭りでお神輿担ぐ人で、そこで出会ったっていう馴れ初めを聞いたことがあるんですけど。すごく筋の通った人たちですよ。勉強とか宿題やってないとかで怒られたことはまったくないんですけど、挨拶を怠ったとか、嘘をついたとか、約束を守らなかったとか、そういうことに対しては、こっぴどく怒られましたね。その筋の通った生き方は、今でも心底尊敬してます」
礼儀とか仁義とかを大切にされる方なんですね。ケンカしたりは?
「ないです! 俺、反抗期ないんですよ。というか、反抗する気にもなれなかったんで。絶対父ちゃんに力じゃ勝てないし、母ちゃんに頭で勝てない。何をしても絶対勝てないってわかってたうえで、2人がわりと放任してくれて。好きなことをやれって言ってくれたから、抑制されてなかったっていうのはすごくデカかったですね」
反抗することがなかったと。
「そう。〈こんな窮屈なの耐えられない!〉とか〈俺のことほっといてくれよ!〉っていうことがなかった。だって、『タバコ吸うならコソコソ吸うな。家の中で堂々と吸え!』とか言う親なんですよ(笑)。そりゃ反抗する気にもならないし、一個人として俺を見てくれてたなって思うので、自分のアイデンティティを確立する障害にはならなかったですね」
渋谷さんが昔から好きなものにどっぷりハマって、今のスタイルになっていったのって、ご両親が自由にさせてくれたことが大きいんですね。
「そうですね。あと早い段階から、大人の社会に自分を交ぜてくれたっていうのも、けっこうデカいのかな」
大人の社会っていうのは?
「小学校低学年の頃って、日曜日何するってなったら、普通は『公園で遊びた〜い』とかなんでしょうけど、俺は家にいたい派で。そしたら父ちゃんが『だったら映画観に行くぞ』って、小学生の頃から一緒に字幕映画観たりして。なんの興味もないのに『かっけぇぞ』ってハードロック聴かされたり。結果、すぐに自分でも興味持つんですけどね。あと、父ちゃんが仲間内で、いわゆる大人の会話してるところに一緒にいることも多かったから、わりとマセガキだったと思います。もともとヤンチャしてた人だから、そういう人の話って面白いんですよ。小さい頃から、いろいろな生き方とか、人のいろんな魅力を近くで見せてもらってたのも大きいだろうなって」
自分の道はこれしかないんだとか、こうしないといけないんだとかではなく、こういう生き方もあるし、こういう道も面白いんだって、いろいろ見せてもらっていたと。
「『自分で考えろ』って言われてた時間が長いのかもしれない。あれやれ、これやれって言われなかったから。そこで勝手にしろって放置するんじゃなくて、2人とも自分とたくさん喋ってくれたから、そこから得たものはたくさんありますね」
バンドを反対されたことはなかったですか?
「ないですね。たぶん失敗しても俺のせいだし、成功しても私たちがこういうふうにしたから今のあなたがあるのよ、みたいなことはおくびにも出さない人たちだから。まあ、失敗したら何らかの形で自分を救済してくれてたかもしれないけど、自分がやりたいって決めたものは自分でケツを拭けって人たちなんで。だから自分がちゃんとやれてるって自覚を今持ててるのは、親がそういうふうに接してくれたおかげもあるでしょうね」
渋谷さんやSUPER BEAVERが、自分で考えて、自分たちの足で歩くことを大事にする理由や、人と向き合うことをないがしろにしない所以を感じますね。
「うん。父ちゃんからも、母ちゃんからも、人としての強さをもらったと思ってるんです。筋の通し方や仲間の大事さ、人に対して熱く考えることとか。2人とも極端に人を大事にする人たちなんで。それで言うと、中学校卒業するまで一緒だった地元の友達も、同じような理由でカッコいいやつらなんですよね。そいつらと一緒にいたことも自分の人格形成の中で、かなりデカかったなって感じてます」
お友達も情に厚いタイプ?
「そうですね。筋の通し方がすごく素敵だし、絶対に嘘つかない。仲間が困ってる時に、ここまで人のことだけを考えて動けるのか?って、びっくりするような動き方をする人たちで。それぞれ別の高校に進学して、全然違う仕事をしてるんですけど、そこでも仲間に愛されてるし、ずっと憧れてますね。いろんな人に出会って、尊敬する人もたくさんいたけど、本質的にマジでカッコいい男だなって思うのは、地元のやつらが一番かな」
だから今も交流があるわけですもんね。
「そうですね。それぞれ得意なこと、好きなことを今仕事にしてるんですけど、50歳手前になったら3人で仕事しようぜとか、そういう話もしたりしてて(笑)」
リアルな(笑)。
「ですよね(笑)。でもそういう話ができる仲間がいるのは、すごくいいなと思ってて。両親のように尊敬できる存在がいて、尊敬し合える仲間もいる。それが励みになるんですよね。こういう2人から生まれた俺は絶対素晴らしい、こういうやつらと友達の俺は絶対最高だって、本気で思ってるんで」
曲の中に〈出会いが人生のすべてだ〉ってありますけど、この人がいなかったら自分の人生こうなってないだろうなって存在は必ずいますよね。両親もそうだし、友達や仲間とか、人によっては先生がそうかもしれないし。
「うん。そういう人たちがいなかったら、今ここに立ってないだろうし、こういう歌は唄えてないでしょうね。両親や地元の友達を経て、高校で今のメンバーと出会って、今も一緒にバンドをやれてる。すてきな3人と出会えたなって思うし、この4人でSUPER BEAVERをやって、力を貸してくださるスタッフとチームがいて。そういう人たちに名前を呼んでもらえたら、そりゃ愛おしくなりますよ」
そうですね。そういう人たちの中にいるから、渋谷さんがフロントマンらしくいられるっていうところはありますか?
「絶対ありますね! そうじゃなかったら、今はもっとふにゃふにゃだったかもしれない」
ふにゃふにゃ……想像できない(笑)。
「ははは。一番カッコいいバンドだってメンバー全員思っていてほしいし、スタッフにも一番カッコいいバンドのスタッフをやってるって思っていてほしい。僕はこのチームのフロントマンなので、カッコいいバンドであるためには、まず自分がカッコいい人間でいなきゃいけない。そのカッコよさは両親が教えてくれたものもあるし、これまで経験してきた中で感じたものもあるし。自分がしっかりやらなきゃなっていうのを、ワクワクしながら言える今は、すごく心地いいです。僕、もともとはチームプレイ苦手なんですけどね」
そうなんですか?
「運動も、水泳やボクシングとかランニングとかが、ひとりでやるものが好きで。基本的に誰かと一緒に何かするのは、あんまり得意ではないんですね。なんですけど、こうやってチームで動いてみて、ひとりじゃバンドはできないし、バンドだけじゃライヴはできないし、ライヴは聴いてくれる人がいないと成立しない。いろんなことが巡り巡って、ひとりで生きてないなってことを、すごく教えてもらってる現場なので。今でもひとりで何かをやったりするほうが、性に合ってるなって思う瞬間はあるんです。ただ、それを凌駕するくらい、チームで動いてる時が楽しいって思わせてくれる人たちと一緒にいる。ひとりでいるよりも、あきらかにこっちのほうが楽しいって思わせてもらってるので、そこはやっぱり周りにいる人に感謝ですね」
それが渋谷さんの唄う理由でもあるでしょうし、だからこそ「名前を呼ぶよ」みたいな曲を堂々と唄えるわけで。
「本当にそうですね。一方的に名前を呼ぶだけじゃなくて、呼んだ先で誰かが自分の名前を呼んでくれる。そういう関係をいろんなところで作れてるのはうれしいし、それが今すごく自信になってますね」
文=竹内陽香
写真=岩澤高雄_The VOICE
NEW SINGLE「グラデーション」
2023.04.19 RELEASE
■初回生産限定盤A(CD+Blu-ray)
■初回生産限定盤B(CD+DVD)
■通常盤初回仕様(CD)
〈CD〉 ※全形態共通
01 グラデーション
02 名前を呼ぶよ -Acoustic ver.-
〈Blu-ray、DVD〉 ※初回生産限定盤のみ
– 2022.12.25 ポートメッセなごや 新第1展示館 LIVE映像
SUPER BEAVER「都会のラクダSP ~東京ラクダストーリービヨンド~」
01 東京流星群
02 スペシャル
03 証明
04 ラヴソング
05 突破口
06 VS.
07 ひたむき
08 名前を呼ぶよ
09 未来の話をしよう
10 人として
11 your song
12 美しい日
13 アイラヴユー
14 秘密
15 東京
16 青い春
17 最前線
ENCORE
01 ロマン