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怒髪天、the pillowsによる初の対バンツアーから見えた、両者の深い繋がりと共鳴し合う理由

text by 平林道子

【LIVE REPORT】
怒髪天×the pillows〈B.M.I LOVE YOU〉
2022.09.12 at Spotify O-EAST



〈増子伝説〉と呼ばれるロック界の都市伝説の中で、個人的に好きなのが、今から30年ほど前、山中さわおのことを新宿の大ガード近くで半日以上待ち続けていたという話。自身にまつわる数々のエピソードは、増子いわく「すべてフィクションですから(笑)」とのことだが、まだ携帯電話が普及してない時代に、新宿という多くの人が行き交う街で、待ち合わせもせずに出会えたというのは、今に続く両者の関係、縁の深さを物語るエピソードだなと思うのだ。


怒髪天とthe pillowsによる東名阪スプリットツアー〈B.M. I LOVE YOU〉。怒髪天メンバーの新型コロナ感染により延期となってしまった東京公演の振替、ようやく迎えたツアーファイナルが9月12日に行われた。タイトルにある〈B.M.〉というのは、彼らが所属するバッドミュージックの略。いわば事務所のお祭り的なツアーなわけだが、馴れ合いのような空気は一切なし。ピロウズの真鍋はMCで「戦友でもあり盟友でもある」と怒髪天のことを語っていたが、同じ時代をそれぞれのやり方で戦ってきた仲間であり、道なき道を歩き続けてきた両者らしいガチンコ対バンとなった。


先攻は怒髪天。「よく来たぁー!」と威勢の良い増子の言葉と、擬音だけなのにまさしくロックバンドの歌であるとわかる「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」からライヴをスタートさせ、序盤から全力全開のパフォーマンスを見せていく。


誰一人わかってくれなかったとしても、己を信じ、恐れることなく己の道を突き進むだけ、というバンドの矜持を示すと同時に、このあとに控えるピロウズへのエールにも聴こえた「ド真ん中節」を終え、息を整えながら「バカみたいだと思うよ、俺も。でも、向き合ってくれてる人が目の前にいて、気持ちを伝える時にカッコつけて気持ちを渡せるほど、俺は器用じゃない」と話す増子。これまで以上に4人で音を鳴らす喜びや楽しさを全身に漲らせながら、目の前にいる人たちへの思いを託した歌と、それを直接手渡すべく、ありったけの力を込めて届けていく。それがコロナ禍以降の、今の怒髪天のライヴスタイルだ。


MCでは、前日に放送された『関ジャム』のこと(註:ライジングサンでのライヴ映像が流れた際、番組ゲストのTOSHI-LOWが、増子のことを「ロック界一の悪魔超人」とコメント)や時事ネタなどを交えつつ、面白おかしくトークを展開。しかもこの日は、「日本でも有数のめんどくさい形の定規」など、可愛い後輩である山中のことをいじり放題(笑)。あまりにも止まらない増子のおしゃべりをベースの清水が、「もういいって!」と制し、ようやく曲へという流れもまた怒髪天スタイルといえようか(笑)。


そしてライジングサンでも披露した「あおっぱな」のセルフカヴァーから、〈ロックバンドが理想や夢歌わずにどうする〉と投げかける「HONKAI」。最後は、こんな時代だけど笑って楽しく過ごそうぜとばかりに、全中高年世代の自己肯定ソング「オトナノススメ」で陽気に締めくくり、「あとはよろしく!」と、the pillowsにステージを譲った。


怒髪天からバトンを受け取ったピロウズは、「ターミナル・ヘヴンズ・ロック」、「ビスケット ハンマー」と、世の中に対する憤りや怒りを、軽快なロックンロールに乗せてシニカルに唄い放つナンバーの連打から、「増子さん、めちゃくちゃ言ってたな!」という山中のぼやき(笑)を挟み、〈道なき道を行こう/踵を鳴らして〉と怒髪天からのエールに応えるかのように「MY FOOT」へと繋いでいく。


「空中レジスター」「Ritalin 202」を終え、MCでの増子の発言に改めて触れる山中。「言いすぎだろ!」と笑って反論しながらも、「めんどくさい形の定規、というのは認めざるを得ない」という言葉に、思わずフロアからは拍手が起きる。以前2人が対談した際、「ピロウズを好きになることは、山中の人格を受け入れるってことだ」と増子は言っていたが、まさにそういうことなのだ。


そんなMCのあと「ニンゲンドモ」、「Fool on the planet」がプレイされた。前者は、山中さわおという人間の社会や人に対する視点がみえてくるナンバーであり、後者は、何があっても信念を曲げずに生きるという宣誓のような歌なのだが、そのどちらにも感じるのは、彼なりの正義の在り方と自分と同じような人間に対する優しさだ。〈すべてが変わっても 僕は変わらない〉と唄い放つ山中の姿に、増子が先のMCで「めんどくさい形の定規」という言葉とともに「自分が道を誤っていないかどうか。その指針になる人物のひとり」と言った、その理由の答えを見た気がしたのだった。


ピロウズ流ロックバンド讃歌である「About A Rock'n'Roll Band」から「BOON BOON ROCK」、「Sleepy Head」と畳み掛け、グングンと熱量を上げていく。そしてもはやワンマンのような熱気にフロアが包まれる中、あっという間にラストの「No Substance」まで駆け抜けていったのだった。


アンコールでは、両バンドのメンバー全員がステージに登場。山中と増子を中心に、出会った頃のことなど懐かし話に花を咲かせ、なかなか曲にいかない(笑)。10分近く喋り続けたあと、ピロウズのシングル「New Animal」のカップリングで、怒髪天がコーラスで参加した「Finger post of magic」を披露。ピロウズの演奏をバックに、上原子、清水、坂詰からなるコーラス隊を従え、〈闇の中迷わず踏み出せるんだ/その先には道があるって信じ切っているから〉と、向かい合って唄う増子と山中。片や男気とユーモアを携えて、泥臭くストレートに、片やロマンチシズムやセンチメンタルを滲ませながら、シニカルかつパーソナルな視点で歌を唄ってきた。しかしどちらも、自分と同じように日々の中で感じる憤りや悔しさ、孤独感を抱える人たちに目を向けながら、何があってもバンドを、自分を信じて前に進もうとする様を音楽にしてきたように思う。スタイルや音楽性、表現の仕方は違えども、根底にあるものは、実はとても似ている気がする。


30年以上に渡って積み重ねてきたものというのも大きいが、何よりもお互いの音楽に対する姿勢や向き合い方に共鳴しあっているからこそ、長く良好な関係性を保てているのではないだろうか。互いを認め合い、心許し合える仲間がいる。なんて素敵なことなんだろう。演奏中ずっと楽しげで和気藹々とした様子の2バンドの姿を見ながら、そんなことを思ったのだった。


その後、怒髪天のメンバーを見送り、ピロウズが「ハイブリッド レインボウ」を演奏して、〈B.M. I LOVE YOU〉ツアーは幕を閉じた。30年前、増子と山中が新宿の街中で出会えたのは、たまたまの偶然だったかもしれないが、その頃から今に続く両者の関係、深い繋がりは、きっとこの先も変わることはないはずだ。


尚、現在『音楽と人』にて連載中の怒髪天・増子直純の対談コラム「俺meetsお前 酒脳会談」の次回ゲストにthe pillowsの山中さわおが登場! スプリットツアーを終えたばかりの2人がどんな会話を繰り広げたのか? ぜひ10月5日発売・11月号の誌面にて確認してみてください。



文=平林道子
写真=橋本 塁_SOUND SHOOTER


【SET LIST】
■怒髪天
SE 男祭
01 ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェーイ!
02 天誅コア
03 セイノワ
04 北風に吠えろ!
05 孤独のエール
06 杉並浮浪雲
07 ド真ん中節
08 あおっぱな
09 HONKAI
10 オトナノススメ

■the pillows
01 ターミナル・ヘヴンズ・ロック
02 ビスケット ハンマー
03 MY FOOT
04 空中レジスター
05 Ritalin 202
06 ニンゲンドモ
07 Fool on the planet
08 About A Rock’n’Roll Band
09 BOON BOON ROCK
10 Sleepy Head
11 No Substance

ENCORE
01 Finger post of magic(with 怒髪天)
02 ハイブリッド レインボウ


怒髪天 オフィシャルサイト
the pillows オフィシャルサイト

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