『音楽と人』の広島地区担当としてポルノ先輩のことは常に気にしているが、先日放送されたNHK『SONGS』の特集はなんだかジンとくるものがあった。番組はポルノと故郷・因島の関係をまとめていて、2005年の地元小中高生無料招待ライヴや2018年の尾道凱旋ライヴの映像を使用。天候不良による苦渋の2日目断念の映像が流れたときはあの日のことを思い出して涙ぐむ場面もあり、一方ポルノがきっかけで因島に移住した人がいるという報告(10人近くも!)には目を丸くして喜んでいた。
番組から伝わってきたのは、改めて2人の人のよさだった。彼らの胸の中には常に故郷の島があり、そこに暮らす人たちと、多島美の光景と、ちりめんのように細かくきらめく瀬戸内の波光があるのだろう。離れていてもいつも心は傍にいる――2人の表情からはどうしようもなく「愛が呼ぶほうへ」惹かれてしまう不器用さと切なさが滲みだしていた。
本日リリースとなるポルノグラフィティのニューアルバムは『暁』という。オリジナルアルバムとしては5年ぶり。デビュー20周年の東京ドーム2days公演以降は2年弱のソロ期間も挟んだ。それゆえ“暁=夜明け”というタイトルは“新始動”したポルノ自身を指すのだと思ったし、「ここからもう一回サンライズしていくぜ!」という彼らの気合いの表れだと思っていた。
実際アルバムは熱いテンションに満ちている。岡野昭仁は全身で歌に没入し、新藤晴一は全曲の歌詞を担当し独自の世界観を突き詰める。パフォーマンスに迷いはなく、エネルギーは吹っ切れたように漲っていた。ポルノ不在の夜を抜け、灼熱の太陽=夜明けが戻ってきたような迫力があった。
しかし『SONGS』を観て驚いたのは、彼らは『暁』という言葉について、コロナや戦争など暗いニュースの多い昨今、ファンの人たちに少しでも明るい兆しを感じてもらいたい――それゆえのネーミングだったと語ったことである。『暁』は彼ら自身のことではなく、ファンに与えたいものだったのだ。
これがポルノグラフィティなのだろう。自分よりまずリスナーファースト。彼らが恋焦がれたロックとは、自身が信じる道をまっすぐ進むものかもしれないが、彼らはどうしても目の前の人を放っておけない。自身の理想と同時に目の前で待ってる人、目の前で泣いてる人がいるならば、結局後者に手を差し伸べてしまうのが彼らなのだ。
いつだって「愛が呼ぶほうへ」引き寄せられてしまうのがポルノなら、『暁』はそんな2人が愛する者に素直に顔を向けた、そんなアルバムと言えるのかもしれない。
文=清水浩司
NEW ALBUM『暁』
2022.08.03 RELEASE
■初回生産限定盤A(CD+Blu-ray)
■初回生産限定盤B(CD+DVD)
■通常盤(CDのみ)
〈CD〉 ※全形態共通
01 暁
02 カメレオン・レンズ
03 テーマソング
04 悪霊少女
05 Zombies are standing out
06 ナンバー
07 バトロワ・ゲームズ
08 メビウス
09 You are my Queen
10 フラワー
11 ブレス
12 クラウド
13 ジルダ
14 証言
15 VS
〈Blu-ray or DVD〉 ※初回生産限定盤特典
● STUDIO SESSION
〜稀・ポルノグラフィティ〜
これまでライヴで演奏したことがない楽曲から、厳選した数曲をスタジオセッションして収録
「Stand for one’s wish」
「むかいあわせ」
「オニオンスープ」
「サマーページ」
● Video Clips
「ブレス」
「Zombies are standing out」
「フラワー」
「テーマソング」