今年でバンド結成25周年を迎える10-FEET。アニヴァーサリーイヤーの幕開けを飾る企画第1弾は、彼らの楽曲をカヴァー、リミックス、フィーチャリングなどさまざまな手法で、多彩なアーティストが集結する『10-feat』のリリースだ。コラボレーション・アルバム『6-feat』シリーズの第3弾となる今作は、岡崎体育、氣志團、クリープハイプ、G-FREAK FACTORY、dustbox、Dragon Ash、Hakubi、ヤバイTシャツ屋さん、山下康介楽団、WANIMAら計10組が参加。彼らが主宰する野外フェス〈京都大作戦〉でお馴染みのメンツから意外なアーティストが手がけた楽曲は、どれも10-FEETへの愛とリスペクトに溢れているだけでなく、参加アーティストらの本質や個性を際立たせる仕上がりとなっている。というわけでリリース日に合わせてTAKUMA(ヴォーカル&ギター)への取材を実施し、10組のアーティストから届いたコラボ曲について語ってもらった。
最初に聞きますけど、この『6-feat』シリーズって、どういう思いからスタートしたんでしょうか。
「〈京都大作戦〉的な感覚ですね。同じような思いが延長線上にあるというか」
舞台がライヴになるか、こういう音源になるかっていう違い?
「もともとはそうですね。〈京都大作戦〉って他のバンドと僕らがセッションすることもあって、それがそのまま音源になったらおもろいなっていう。でもセッションを録って音源にするっていうのもアレやし、リミックスとかカヴァーとかフィーチャリングっていうなんらかの手段を使ってもらいつつ、面白いものにしてもらえたらっていう」
遊び心のある企画ですね。
「でも自分たちもそういう企画に参加してカヴァーをしたことあるからわかるんですけど、その大変さというか、遊び感覚でお願いするような感じではなく。僕らもカヴァーするなら熱量とかモチベーションもそうやし、もっと言ったらフェスとか対バン以上に時間と労力を割いてもらうようなオファーでもあるんで」
それこそ一枚の作品の中で自分がどう爪痕を残すか?みたいな気持ちもあるでしょうし。
「そうですね。だから究極の遊び心ってことですよね」
で、誌面(音楽と人2022年5月号)では今作に参加したアーティストの中からヤバイTシャツ屋さんとの座談会をやってますが、こちらではそれ以外のアーティストが手がけた曲について話をしていきたいと思います。ランダムにいきますが、まずは「ヒトリセカイ feat. dustbox」。今回の中で大作戦のステージが浮かんでくるような曲で。
「そうなんですよね。その時の演奏を録音したの?ぐらいな(笑)。しかもしっかり自分たちの曲にしてるんで、ここまで完璧やったら〈この曲あげようか?〉って思いますよ」
dustboxとは長い付き合いだと思いますが、どんなバンドでしょうか。
「自分たちの洋楽のルーツにめちゃめちゃこだわって20年以上やってるパンクロックのバンドです。初期の頃は日本語の曲もあったんですけど、今はたまに入る感じで。僕らもメロディックハードコアとかパンクロックの畑でずっとやってきたんで、そういう仲間がたくさんいるんですけど、〈俺らはこれなんだ〉っていう太い軸を持ったまま、ここまでいろんなことを展開してきたバンドはいないなって思います」
では次に「goes on feat. 氣志團」。
「これも聴いてて氣志團が大作戦のステージに出てる絵が浮かんでくるんですよ。〈あれ? 一緒にレコーディングしたんかな?〉みたいな融合感がすごい」
翔やん(綾小路 翔/ヴォーカル)の歌って青春してる感じがすごいするんですよね。
「そうですね。カッコよくて楽しくて面白いっていう、学校で人気があるヤンキーの先輩みたいな人が、そのままバンドやった姿やなと思うんですけど。やっぱりこういう場面になると、音楽愛というか僕らに対する愛みたいなものもしっかり感じさせるような作品をぶつけてきてくれるっていう。さすがやなと思います」
「ハローフィクサー”CHAGE AND BASS REMIX“ feat. Dragon Ash」はリミックスというアプローチが斬新でした。
「『6-feat』の時はKj(ヴォーカル&ギター)に〈RIVER〉をやってもらってるんですけど、大作戦でもよくウチらのカヴァーをやってくれるバンドなんで、またやってもらいたくて」
選曲に意外性を感じましたが。
「実はこれ僕らから〈ハローフィクサー〉やってもらえへんかなって話をしてるんですよ。というのも〈ハローフィクサー〉は僕らなりにミクスチャーを感じてる曲で、それをDragon Ashがやったらカッコよくなるんじゃないか?みたいな」
ミクスチャーといえば彼らですからね。
「でもよくよく考えたら、ミクスチャーやってるバンドにミクスチャーの曲渡してさらにアレンジしてくれって、どういうことやねんっていう(笑)。〈ミクスチャーの曲を違うミクスチャーにすんの? それは困るよな〉って思ったんですけど、できたのを聴いて〈そう! これ!〉みたいになってて、さすがやなって」
意外と言えば「シガードッグ feat. 山下康介楽団」。存じあげなかったので調べてみたんですが、映画界はじめいろんな方面で活躍されてる作曲家さんで。ストリングスのアレンジがアルバムの中でも異彩を放っています。
「これは地方にライヴをしに行ってる時に、たまたまつけたテレビで玉置浩二さんがオーケストラをバックにライヴをしていたのを観たんですけど、その時指揮をとっていたのが山下さんで、めちゃめちゃよかったんです。個人的には今までロックとかいろんなものにオーケストラを混ぜるアレンジってそこまで興味がなかったというか、僕は〈わかってないヤツ〉って感じだったんですけど、そんな僕でもビックリするぐらい素晴らしくて。で、その番組で山下さんがインタビューを受けてて、その話もめちゃめちゃよくてファンになったんです。で、今回の企画でオーケストラアレンジの話になった時、『テレビでこういう人観たんですけどダメ元で聞いてみてもらっていいですか?』ってお願いしたらOKもらえて」
山下さんは10-FEETのことを知ってたんですかね?
「知らなかったと思います。ジャンルと世界も全然違うので。それなのにこのアレンジ……もうヤバいですよ! もうこの曲あげちゃおうかなって(笑)。それぐらいの名作が生まれたと思います」
「蜃気楼 feat. Hakubi」も素晴らしいコラボレーションですね。
「これは京都のバンドで、今まで対バンはないんですけどメンバーとは面識があって。ある時このバンドの片桐(ヴォーカル&ギター)っていう女の子がラジオで〈蜃気楼〉を弾き語ってくれていて、それがまた絶品で。で、その放送のデータをもらって練習スタジオでメンバーに聴かせたら〈うわー!〉ってなって。で、この企画が浮上した時に『これはHakubiに頼まへんか?』っていう話になり、お願いしました。めちゃめちゃいいバンドです。めっちゃ熱いんやけど、洗練されていて、それを荒いギリギリ手前までいって表現するみたいな。ライヴを観てもらったら一番早いですけど、言葉で言うならば、そんな感じ。『音楽と人』のテイストに合ってると思いますよ」