生活から出てきた曲を、生活の延長上で発表できるようになることが、今は理想だと思ってます
今の話を聞くと、大事なライヴが延期になって、これまでのバンド活動でしたことのない経験の中でメンタルが崩れそうになったけど、それを立て直したのが日常の生活だったってことじゃないですか。
「そうですね」
そういう経験をした今、自分にとって音楽って以前と違ったものになってますか?
「違ってますね。当たり前だったことがいとも簡単に変わってしまう経験をして思うのは……もっと音楽自体を日常生活の延長上でできたらいいなってことで。もともとライヴだって衣装とか着るわけでもなく普段の格好でやってるんだし、最近できてる曲も生活にすごく影響されてるし。だから生活から出てきた曲を、生活の延長上で発表できるようになることが、今は理想だと思ってます」
そういう経験をした上で、今回みたいなベストを出すことについてはどう思いますか?
「このタイミングでベストを出すことって、あんまり意味がないんだけど、だからこそ出す意味があるんじゃないかと思ってて。サブスクがあれば自分でプレイリストを作れる時代に、既存曲のベストをパッケージにして出す意味ってないんじゃない?みたいなことを、何年か前に知り合いに言われたことがあって。だったら逆に出そうかなって思った自分がいたというか」
あまのじゃくな性格は相変わらずだと。
「だから……あんまり変わってないのかな、とも思ったり」
ベストとしてパッケージした楽曲を並べた上で聴いてみて、どうですか? 昔の曲は恥ずかしいって思ったりとか。
「まぁ恥ずかしさはあるっていうか……〈なんでこんなことやってんだろう?〉みたいな(笑)」
あはははは! 実際に昔のtacicaは取材も受けないバンドだし、アーティスト写真も例のロゴだし、とにかく面倒くさい存在で(笑)。
「ははは」
で、ようやく取材ができることになったけど、やっぱり当時の猪狩くんは面倒くさい人で(笑)。でもさっきの犬の話じゃないけど、そこからずいぶんニュートラルに音楽と向き合えるようになったんだなって。
「そうですね。新曲の〈dear, deer〉っていうタイトルは、2回目の配信ライヴの公演名につけたのと同じなんですけど、僕がその〈dear, deer〉っていうタイトルをえらく気に入って(笑)、そのままベストのタイトルにしたんです。で、そのタイトルから今回の新曲を作ったんですけど」
鹿って昔のtacicaのロゴのイメージがあるけど、今さらそれをライヴのタイトルにしようと思ったと。それはどうして?
「たぶん……改めて鹿に頼ったところがあったのかな。このロゴマークって、もともとは本人たちよりも主張の強いものというか、このバンドにとってすごく大事なものになってたような気がして。そこを今の自分が認めた上で、このバンドを再定義するイメージというか」
それぐらいコロナで追い詰められてたってことなんでしょうね。
「やっぱり当時はすごく気負ってたんだと思います。けど、そういう時期を経て、そのタイトルでベストを出すことになって、すごくニュートラルに音楽と向き合えるようになって。バンドに対してもそうだし」
新曲もそうですよね。いろいろ大変だったけどここから仕切り直し、みたいな気持ちが感じられます。
「これ、自分的には感謝っていうイメージがあって。お客さんに対してもそうだし、今までの環境もそうだし」
今の猪狩くんは元気を取り戻しているのがわかる曲だと思います。
「はい、元気です。今はアルバムも作ってるので。昨日も夜中まで作業してました」
元気じゃないと作れないからね。
「めっちゃいいと思うんで、完成したら聴いてください」
どんなアルバムになりそうですか?
「どうだろう……? でも、犬の歌は作りました(笑)」
楽しみだな。でも、どれが犬のことを書いた曲なのか知らないままで聴きたいから、内緒でお願いします(笑)。
「そうですね(笑)」
最後にもう一回犬の話をしたいんだけど。
「いいですよ。〈たぬきち〉って名前なんですけど、最初うちに連れてきた時は狸っぽい顔だったんですよ。でも少ししたら、たぶん栄養のバランスが変わったからだと思うんだけど、ブワーって毛が抜けて、そしたら狸じゃなくて狐みたいな顔になっちゃって。〈狸じゃないね〉って(笑)」
今までの猪狩くんのインタビューで一番いい話を聞いたような気がする(笑)。
「ははははは」
文=樋口靖幸
BEST ALBUM『dear, deer』
2021.12.22 RELEASE
■初回生産限定盤A(CD+BD)
■初回生産限定盤B(CD+DVD)
■通常盤
〈CD〉※初回生産限定盤A、B、通常盤共通
01 HERO
02 黄色いカラス
03 アースコード(ver.118STG)
04 人鳥哀歌
05 メトロ
06 神様の椅子
07 命の更新
08 ハイライト
09 newsong
10 HALO
11 LEO
12 発熱
13 ordinary day
14 煌々
15 aranami
16 dear, deer
〈Blu-ray / DVD〉※ 初回生産限定盤A 、Bのみ収録
tacica結成15周年記念公演 <象牙の塔> @中野サンプラザホール 2021/04/03
01 烏兎
02 aranami
03 命の更新
04 YELLOW
05 SUNNY
06 象牙の塔
07 冒険衝動
08 煌々
09 ordinary day
10 回転盤
11 ねじろ
12 アースコード
〈Blu-ray〉※ 初回生産限定盤Aのみ収録
TIMELINE for "sheeptown ALASCA" 第2部panta rhei @新木場コースト 2019/04/21
01 トワイライト
02 刹那
03 煌々
04 name
05 ordinary day
06 中央線
07 WAKIME
08 Lynx
09 SUNNY
10 ホワイトランド
11 wonder river
12 latersong
〈tacica BEST ALBUM TOUR 2022 “dear, deers”〉
1月23日(日) 京都磔磔
1月29日(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
2月5日(土) 名古屋Electric Lady Land
2月6日(日) 心斎橋Music Club JANUS
2月20日(日) 東京キネマ倶楽部
OPEN 16:45 / START 17:30
※東京公演のみOPENは16:30となります。
※各会場ソールドアウト後にキャパシティ制限が緩和された場合、追加販売を行う可能性がございます。随時SNS等で情報を発信してまいります。