私、謝れない人がすごく嫌で(笑)。一緒にいて疲れちゃうんですよ。だから自分はできるだけ謝れる人間でありたいなと気をつけてる
「壊したんだ」には〈美しいままとっておきたかった〉という歌詞が出てきますけど。
「はなればなれ、よりもこっちのほうが多いですね。離れる時は、もう壊れてしまった場合がほとんど。やっぱり人との関係がうまく続かないんでしょうね。こういう感情になることはよくあります」
あのままでいれたら良かったのに、って。
「そうですね。終わりが最悪だったとしても、やっぱり楽しかった記憶はあるはずじゃないですか。でも終わり方次第では、そういう思い出まで、全部壊れていっちゃう。それってすごく悲しいですよね。楽しかったことを思い出そうとしても〈……でも〉ってなっちゃうんですよ。あの時楽しかったな、って気持ち以上に、壊れてしまったことのほうが大きいので。その楽しいことを、大切にしようってお互いが思えなかったんだもんな。本当に楽しい時間やいい思い出を、お互いが大切にできてたら、まず壊れないんですよ」
壊さないようにしようとは思いますよね。
「それってお互いが努力をしないと成り立たないじゃないですか。それをどっちかができなかった……てことは、そのあとに大事に思い出すようなことでもなくなっちゃうというか」
「壊したんだ」には〈だからあんなに泣いたんだ〉というフレーズもあります。最近どんなことで泣きましたか。
「私、めちゃめちゃ泣きますよ。見たらたぶん引きます(笑)。特にドラマとか、そういうのはエゲツないくらい泣きますから。次の日は目がパンパンになるし。ティッシュの山ができる(笑)」
どんなドラマで泣きましたか?
「最近は韓国の『トッケビ』っていうドラマですね。900年以上生きてる人が主人公なんですけど、その人、死にたくても死ねなくて、ずっとひとりで生き続けてるんです。でもある少女と出会って。前世とかそういう話にもいろいろ繋がっていって……チョー泣けます!」
すでにちょっと涙目ですけど(笑)。
「観てください。私、息できなくなって、2時間くらい嗚咽で立てなくなって。『もうやめて!』って言いながら観てました」
感情移入しちゃうんですね。
「しすぎちゃうんですよ。ちょっと前だと『リラックマとカオルさん』」
娘と観てますけど、あれ、泣けます?
「雪だるまたちが庭で踊るシーンで泣いちゃって(笑)。なんか、この雪だるまたちは暖かくなったら溶けちゃうのに、こんな笑顔で踊ってる。じゃあ私も毎日を大切に生きなきゃ……みたいに思ったら、ボロボロ泣けてきちゃって。なんか、自分に重ね合わせるとかよりも、描かれている部分以外を想像しちゃって泣くことが多いですね」
「ごめんね」という曲がありますが、自分は謝れる人だと思いますか?
「謝るようにしようと気をつけてますね。私自身、謝れない人がすごく嫌なので(笑)。一緒にいて疲れちゃうんですよ。だから自分はできるだけ謝れる人間でありたいなと気をつけています」
最近謝ったことってありますか?
「ちょっとしたやり取りですね。仕事でも行き違いがあるのは、片方が悪いばかりじゃないと思うので。たぶん、良くも悪くも全部に理由があるってことを信じてるんですよ。だから自分にまったく否がないとは、あんまり考えない。かといって、正しく行動できてるかはわからないんですけど」
「通り雨」から。雨は好きですか?
「好きです。家の中にいるなら晴れより好き。匂いですね。特に夏に雨が降った時の湿気。あれが好きです。わかりやすいのだったら〈熱帯夜〉とかは、夏が近づいてきた時のあの匂い、空気感を曲にしたいなと思ったし」
じゃあ最後に「夢で逢えても」から。最近、どんな夢を見ましたか?
「夢、毎日見るんですよ。ここ半年から1年」
どんな夢が印象に残ってますか?
「なんでもない夢です。実はすごく困っていて。確実に毎晩見るんですよ。それだけならいいんですけど、それが、現実と同じタイム感の夢なんです。例えば、夢の中でLINEが来て、それに返信するんですけど、起きたら返してないんで〈あれ、返してないじゃん……あ、夢か〉ってなる(笑)。あと、寝る前にサランラップが切れてて、買いに行かなくちゃと思ったまま寝ると、夢の中でサランラップ買いに行くんです。起きて、〈サランラップ買ったしな〉って思ってたら、当然買ってないんですよ(笑)」
それは困りますね(笑)。じゃあなりたいという夢はありますか?
「そういうのって昔からないんですよね。SHISHAMOの活動のあり方もそうなんですけど、今できること以外、あんまりよそ見しないで、それを全力でやることが続いてるからかな。こうなりたいと思って、目標を立てて、そこに向かってくようなことは、あまりない気がします」
要するに、目の前のことをひとつひとつやっていくしかない、というか。
「そうですね。それもちょっとずつです。自分たちのできることよりちょっと上のことを毎回やっていくから、成長できてることを実感して、またもうちょっと頑張ってみようってなって、またちょっと成長して。その積み重ねというか」
ドームツアーとか、大きな家に住むとか、そういう目標は持たないほうがいい?
「そういう目標を持っちゃうと、もしそれが達成されたらどうなっちゃうんだろう、って不安になるんですよ。それに、大きな家に住むとか、お金を稼ぐことなら、他のことでも叶えられるかもしれないじゃないですか。そういうことを考えるより、今できること、今やらなきゃいけないことに全力を出すことだけを考えるようにしてますね。もし、何か夢ができた時、今やれることを全力でやっておけば、その夢を叶える可能性は高くなっていくと思うし。どんな夢だとしても。だから一生懸命やっておくにこしたことはないと思うし、こうでなくちゃいけない、みたいな考えからは、遠くに行きたいんですよね」
ですね。確かにこのアルバムは、SHISHAMOという型にも、3人という型にも、何にもとらわれず、バンドとして自由にやれている、そこがいいと思います。
「出してる音楽だけじゃなくて、バンド自体がちょっと自由になってきた感じが、最近はすごくしてるんですよ。窮屈だなって思ってた時期も確かにあったと思うし、2人がどういう気持ちでやってるのかあんまりわからないところもありますけど(笑)、でも、そのまんまでいいなって感覚で居るというか。それが今はすごく楽なんですよ。いろいろ新しいことをやれたらなと思うし。だからインスタも今年からやっと始めたし(笑)。アルバムのブックレットに使った写真の表情も、今までよりも自由だと思う。今の状態はきっと、SHISHAMOにとってすごくいいんじゃないかな」
文=金光裕史
写真=岡田貴之
SHISHAMO
NEW ALBUM『SHISHAMO 7』
2021.06.30 RELEASE
■初回限定盤(CD+ブックレット)
■通常盤(CD)
〈CD〉 ※初回限定盤、通常盤共通
01 中毒
02 人間
03 警報
04 明日はない
05 君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!
06 かわいい
07 明日の夜は何が食べたい?
08 ドライブ
09 はなればなれでも
10 壊したんだ
11 ごめんね
12 通り雨
13 夢で逢えても
SHISHAMO オフィシャルサイト https://shishamo.biz/