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LOSTAGEの活動から考える、地方と音楽、〈もうひとつのバンドのあり方〉について

text by 清水浩司

地元の奈良で、インディペンデントな形で活動を続けているロックバンド、LOSTAGE。地方在住、東京との距離、レーベル運営、日々の生活……そんな中から生まれてくる音楽と自分の関わり方は、どこか明らかに違う。同じく地方在住のライター、清水浩司が描く〈もうひとつのバンドのあり方〉について。



(これは『音楽と人』4月号に掲載された記事です)



東京から広島に戻ってきたのが東日本大震災の年だったので、あれからもう10年が経とうとしている。


10年前、私は個人的な事情があって20年以上続いた東京での暮らしを畳み、故郷である広島に戻ってきた。広島での生活は高校以来となるので、ほぼゼロからのスタートだった。


広島にすまいを移して驚いたことのひとつに、この街で多くのミュージシャンが活動しているということがあった。それはここ数年そうなのか、以前からそうだったのか(当時は高校生だったので街のディープな部分については知る由もない)わからないが、知り合いに連れられてイベントなどに出向くと、いろんな人がいろんな音楽を演奏していた。当たり前のことかもしれないが、私にはこれが新鮮に映った。


彼らはいわゆる〈アマチュア〉ミュージシャンである。中には歌の先生などして食っている人もいるかもしれないが、いわゆる事務所やレコード会社に所属して、それで生計を立てているという意味での〈プロ〉ではない。そういうアマの存在に驚いたと書くと、自分がどれだけ世間知らずの業界野郎だったか恥ずかしくなるが、さらに恥の上塗りをするならば、私は彼らの演奏技術や音楽性の高さにもまた驚かされることとなる。


「なに、これ、全然メジャークラスじゃん!」
「広島にもこんなすごい人たちがいるんだ……」


この感想自体すでに地方蔑視の色眼鏡が付いていることは後に述べるが、私はその中のひとりのシンガーソングライターに目が留まった。彼は非常にセンスがよく、通好みの音楽を奏でていた。歌詞もサウンドも洗練されていて、どこか浮世離れした感じがあった。率直に言って、私の好きな音であった。


私はそれから何度か彼のライヴに足を運び、新譜発売のライヴを観に行った。彼が自主制作でCDを作ったというのだ。ライヴ終了後、本人サイン付きの即売会の列に並んでいると、ふとした想いが頭をかすめた。


「彼の音楽はいいんだけど……でも、これって結局〈趣味〉の世界でしかないんじゃないか?」


私は列の向こう側でサインを書いている彼の姿をじっと見つめた。大人しそうで神経質そうな彼は普段は別の仕事をして生計を立て、こうしてコツコツと自分の好きな音楽の追求を続けているという。いわゆる趣味である。アマチュアというのは、つまり趣味である。音楽が好きで休日に音楽をやっている。「それの何が悪いのか?」という話である。


しかし当時の私は〈趣味の音楽〉というものがどうにも受け入れられずにいた。それは文字どおり毒にも薬にもならない快適な雑貨のようなものである。当時の私はそれが引っ掛かった。引っ掛かった理由を説明するなら、たとえば当時の私は竹原ピストルの「カウント10」という曲を好んで聴いており、その曲のこんな力強いフレーズが急に蘇ってきたのである。


〈ぼくは"人生勝ち負けなんてないんだ"という人の人生に心動かされたことは、一度たりとも、無い。〉


趣味の音楽に人生の勝ち負けは関係ない。なぜならそれは趣味であり、自分が好きなものを空いた時間で好きなように作ってみました、ということでしかないからだ。


はたして私はこの音楽に心動かされるのだろうか? そしてこうした音楽に心の平安を求める自分でいいのだろうか?


おかしな葛藤が私の中で生じた。ひとりの私は「おいおい、音楽に人生を背負わせるなよ」と笑った。「音楽は音楽で評価する。それがいい音楽ならプロもアマも関係ないじゃないか」と理知的に語った。しかしもうひとりの私は「いやいや、それに人生懸かってない人の音楽にどれだけの強さがあるのかね?」と反論してきた。「いくら良質でもしょせん道楽の草野球。おまえはずっと切った張ったの真剣勝負に魅了されてきたんじゃなかったのかい?」といささか感情的につっかかってきた。


私自身の価値観は真っ二つに割れていた。
頭の中で両者は言い合いになったまま譲らず、結局その時はCDを購入することなく列を離れてしまった。


プロとアマの違いは何なのか? それに対して、自分はどんな立ち位置を取るのか? ――それ以降、私はこの問題から目を背けてすごしたが、どうやら自分にとってこの問題が抜き差しならないものであることは頭の片隅で気づいていた。

30年前、〈勝ち〉は東京にしかなかった。一方で田舎には〈負け〉しかなかった。今ではもう違うのかもしれない

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