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My Hair is Badのライヴ映像作品で見た、バンドの進化と揺るぎないもの

text by 宇佐美裕世

【LIVE REPORT】
My Hair is Bad ライヴ映像作品〈Youth baseball〉
2020.11.29 (上越市高田城址公園野球場にて収録したライヴ映像作品の配信)



余計な装飾なんて一切ない。言ってしまえば、究極にシンプルな見せ方だった。だからこそ、このバンドの根本にある魅力がダイレクトに伝わってきた。 


My Hair is Badが11月29日に配信した〈Youth baseball〉は、彼らの地元・新潟県上越市にある高田城址公園野球場を舞台に、無観客で収録されたライヴ映像作品。彼らは昨年8月からアルバム『boys』を携えて〈サバイブホームランツアー〉を開催していたが、新型コロナ感染防止のため、今年3月以降の公演は延期となってしまった。そこから約8ヵ月、久しぶりにワンマンという形で、3人で音を鳴らすことが決定したのだ。ちなみに、この球場は約16年前、椎木知仁(ヴォーカル&ギター)が少年野球で実際に使用していた場所だという。 


快晴が少ない新潟を象徴するような曇り空の下、向かい合ってグラウンドに立つ3人がドローンによって映し出されると、そのままバッタースコア、上越の街並みへと画面が切り替わったのち、椎木のギターが鳴り響いて幕が開いた。だだっ広い球場に立つ3人と、彼らを囲むようにカメラのレーンが敷かれ、その周りには数人のスタッフがいるだけの空間。それに対して味気ないと思うことはなく、むしろ久しぶりに地元と対峙する3人の姿になんだか緊張が走った。1曲目に披露されたのは「優しさの行方」。そういえばこの曲はMVの中でも草野球をしていたな、とそのリンクっぷりに冒頭から胸が高鳴ったし、〈愛するべき街〉と唄うタイミングで再び上越の街が、〈愛するべき友〉でメンバーが映し出されるのはなんとも憎い演出だ。このカメラワークだったり、初めて3人でステージに立ったライヴハウス・上越EARTHのTシャツを山田淳(ドラム)が着ていたり、至るところに地元に対するブレない愛情が滲んでいたが、そもそも久しぶりのワンマンでここを会場に選んだこと自体、大きな意味があるのだろう。 


雨上がりのグラウンドの上で、足元の不安定さに負けずに力強く音を鳴らす3人を観て改めて思うのは、このバンドの曲はやはりパフォーマンス込みで聴くべきだということ。言わずもがな、音源だけでももちろん素晴らしい。だが、今の感情を淀みなく100%乗せる3人のプレイや、3人で音を鳴らすことで生まれるグルーヴ、そして曲間にある椎木の独白のようなMC、歌詞のアレンジ、それらが全て合わさることで、曲に新たな命が吹き込まれていくような気がするのだ。一曲一曲の深みや説得力がより増していくというか。例えば、この日は「悪い癖」で〈この街でわかんなかったことが今ならわかる〉と歌詞にない言葉を唄っていたが、椎木が1人の人間としてこの上越で過ごしてきた背景を想起させるような生々しさを孕んでいてグッときたし、こういった感動を味わえるのもライヴならではだな、と痛感せざるを得なかった。 


エモーショナルな演奏に魅了される一方で、MCでの言い回しは以前と比べてどこか落ち着いているように思えた。と同時に脳裏に過ったのは、発売中の『音楽と人』での椎木の発言だ。「(コロナで)ライヴがなくなって、曲を書く以外やることがなくて。今までの自分らの映像を見直してみて、だんだん恥ずかしくなってきて。〈なんでそんな言葉選びするの?〉みたいな。『なんとかだぜー!』の『だぜー!』ってなんなの?みたいな(笑)。冷静に自分を客観視しながら、いろんなことを考えました。もっとカッコよくなれるんじゃないか、もっと自然にやればいいのに、とか」――その思いが反映されているのか真意はわからないが、口調は穏やかでいて、それでも熱量は失わずに思いを伝える術をこの8ヵ月の間に身に着けたような気がした。 


ここ最近のバンドの開き具合には、いい意味で期待を裏切られ続けている。昨年リリースされたアルバム『boys』では、唄う内容の普遍性がいっそう高まり、サウンドの幅の広がりも魅せてくれたことは記憶に新しいが、この日披露された新曲「白春夢」では、誰もが体感したであろう、あの不安を抱いた閉鎖的な春のことが、今まで以上にストレートな言葉で綴られている。この曲を披露する前、椎木は「本当に夢の中にいるみたいな2020年になった気がしてて、ずっと部屋の中にいて、目の前のことを書いた曲です」とだけ語っていたが、それは実にシンプルな言葉だと、こうして書き起こしている今も改めて思う。それを受けて思い出したのは、昨年の4月に行われた横浜アリーナでのMCだ。当時、椎木は「俺は、俺の歌詞に一度でも共感してくれたやつや、俺に似てるやつを救ってやりたい。つまり、ここにいるみんなを救ってやりたいんだ」と叫んでいた。あの時の剛速球のような言葉は、今回はない。だが、力任せに思いをぶつけるではなく、あくまで音楽を通じて聴き手の感情に真正面から向き合っていこうとするその潔さに、バンドとしての進化や、さらに先へ進んでやろうという腹の括り方みたいなものが伝わってきた。 


その一方で、彼らの変わらない魅力にも改めて気付かされた。この日の見どころは、なんと言っても3人で向かい合って音を鳴らしていたこと。「向かい合って演奏するの初めてだよね」と椎木が語りかければ、笑みを零しながら「なんか笑けてきちゃうんだよね」と山田が打ち明け、それに対して「俺の真面目が面白いわけ?(笑)。次(山田の)目の前で弾いてやっからな!」と山本大樹(ベース&コーラス)が返す和気藹々とした何気ないシーンだったり、曲中にアイコンタクトをとったり、いつも以上に互いの存在を確かめながら演奏する姿に、漠然と彼らの根っこにあるものはこの先もずっとなくならないんだろうなと思えた。その根っこにあるものが何かというと、一つは青春感だと思う。3人を見ていると、人は追及したり、夢中でいられるものを持ち続けている限り、年齢なんて関係なく青春は終わらないのだと思えてくる。(高田)北城のマックで、ノリでバンド名を決めた時の彼らの様子を知る由もないが、おそらくその当時から変わらないであろうテンションで、それでいて友情を超えた揺るぎない関係性が土台となっている限り、 この先バンドとして新しいことを取り入れたとしてもマイヘアはマイヘアのままなのだろうなと不思議と思えてくる。ラストの「夏が過ぎてく」で幕を閉じる頃、日はすっかり沈んでいた。だんだん暗くなっていく空の色に反して、3人の関係性や地元愛といった揺るぎないものがより浮き彫りになっていく様が美しくて、なんだかものすごく尊いものを観た気分になった。 


野球に夢中だったあの日の椎木少年に、再び成長してここに戻ってくることを約束しながら彼らは再び上越を離れる。そして、変わっていくものと変わらないもの、その両方が絶妙なバランスを保ちながらこれからもMy Hair is Badを更新し続けていくのだろう。今回の映像作品を観終わったあと、いの一番に思ったのは〈やっぱりマイヘアからは当分目が離せそうにない〉ということ。なんともありきたりな言葉で、いかにもライヴレポートの文末に使われそうな言葉だな、と自嘲気味になる自分がいる。しかし、素直にそう思わされるような期待に溢れた時間だったのだ。



文=宇佐美裕世
写真=藤川正典


全国59ヵ所のライヴハウスにて〈Youth baseball〉上映イベント開催
詳細はこちらから



NEW SINGLE「life」(CD)
2020.12.23 RELEASE

01 白春夢
02 心はずっと
03 子供になろう

TOWER RECORDで購入

HMVで購入

TSUTAYAで購入



NEW SINGLE「love」(配信)
2020.12.23 RELEASE

01 味方
02 グッド・バッド・バイ
03 予感


My Hair is Bad オフィシャルサイト https://www.myhairisbad.com/

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