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【編集部通信】伝えることの難しさ――不器用な自分を受け入れた先に見えるもの

text by 青木里紗

『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回は若手編集者が、自身の悩みと、そこで気づいたことを綴ります。



最近、初めて電子書籍で漫画を読んでいる。それは、椎名軽穂の『君に届け』という作品だ。主人公の黒沼爽子は、高校に入学したものの、黒い長髪で暗い見た目であることから、周囲に〈貞子〉と呼ばれ怖がられてしまい、クラスに馴染めずにいた。そんな彼女は、心優しく、男女問わず誰からも慕われるクラスメイトの風早翔太と出会い、世界が変わる。それまで一歩踏み出せずにいた彼女は、少しずつ自分から行動し、思いを伝え、相手と向き合い心を通わせていく。そんな健気な爽子や、彼女に寄り添う温かい友人たちの姿に、〈なんてピュアで優しい世界なのだろう……〉と泣きそうになってしまうのは、ここだけの話にしておきたい(笑)。


そもそも私は、この作品を中学生の頃に少しだけ読んだことがある。当時も〈すごくいい話だな〉と思ったのを覚えているけれど、なぜ今、また読んでみたいと思ったのだろうか。それはきっと、私も爽子のように、何かしようと思っても二の足を踏んでしまったり、言いたいことをうまく伝えられない、素直になりたいけれどなれない部分があるからだと思う。


私は、小学生の頃から、「人とは違うことをしたい」と親に話すようなところがあって、例えば周りが右に行くとしたら、何も考えずにそれに着いていく、みたいなことは嫌いな性格だ。だけど、周りの目が気になってしまい、変に目立つことをしてみんなから避けられたらどうしようと怖くて仕方がなかった。そんな矢先、理不尽な理由でクラスメイトからハブられたり、部活のミーティングで勇気を出して意見を言った時に、先生には通じても、同世代の仲間には理解してもらえず、それを機になんとなく周囲から避けられてしまうようなこともあった。そういう経験をしたことで、人に対して〈どうせわかりあえないでしょ〉と分厚い壁を作り、自分の殻に閉じこもっていったような気がする。


今振り返れば、きっとそれは自分の思い込みや誤解も大きかった。あの時そっと優しい言葉を掛けてくれたり、寄り添ってくれた人はいたのだ。そこで自分が素直になって心を開いていたとしたら、また違う世界が見えたのではないだろうか。じゃあ今はどうだろう。例えば仕事で、会議中に〈あ、こう言おうかな〉と思っても緊張して口が開かないといった具合で、いろんな場面において〈どう思われちゃうんだろう。怖いな〉と感じ言えなかったり、〈それってほんとなのかな?〉と相手を疑い、信じることが怖くなることも。そういう素直になれない、言いたいことが言えない自分――つまり人目を気にしたり、自信のない自分がイヤで、無理に変わろうと焦った挙句、失敗もした(笑)。でもそれを〈まあそういうこともあるか。それも自分なんだ〉と、思っていいんだと気づかせてくれたのは、音楽と人11月号(10月5日発売)でインタビューした、大阪を中心に活動する3ピースバンド・TETORAの上野羽有音の発言だった。


印象的なのは、言いたいけれど言えない、それでも本当は言いたい。そういう矛盾だと思えることも含めて、自分の正直な気持ちだから、それは全部大事にしたいときっぱり言い切っていたこと。その真っ直ぐで力強い彼女の言葉にハッとした。私はうまく言えないことや、素直になれないことがイヤだな、と思ったり、そんな自分はダメだと思ってばかりで、今の自分を受け入れていなかったのかもしれない。それに、そういう私でも昔に比べたら少しずつ変わってきているところはあるのだ。例えば、好きな人に「好き」と自分から伝えられたこと、高校生の時、大学進学が普通でしょという空気が漂っていた中でも、今の仕事に就く目標を掲げて、大学には行かなかったこと――よく考えたら、他にも一歩踏み出せたな、と思う瞬間はたくさんある。


とはいえ今もうまくできなくて、自分の殻に閉じこもりそうになる不器用な自分がいるのも確かだ。だけど、そういう自分がいるから、少しずつ〈あ、変わったのかも〉と実感できる瞬間がやってくるのだろうし、その時に頑張れたんだろうなと認めることもできる。だから、悩んだり試行錯誤した分だけ、ちょっとずつ視野が広がっていくのかもしれない。


冒頭で触れた『君に届け』は、全30巻で完結する物語。今は5巻目を読み終えたところなので、物語の序盤なわけだが、爽子も自身の誤解に気づき、相手とわかり合おうと懸命に向き合い、打ち解けていこうとしていた。これから彼女が高校生活の中で、さまざまな人と触れ合いどう成長していくのか。その姿を見守りながら、私自身も焦らず、そして変に恐れずに誰かとコミュニケーションをとって、いろんなことを知り、自分のこともうまく伝えられるようになりたいなと思う。


文=青木里紗

タブレットだと読みやすいことに気づいた。これまで漫画にあまり触れてこなかったけれど、大人になった今だからこそ、胸に響くものがあるのかなと思うこの頃


『音楽と人』2020年11月号にてTETORAのインタビューを掲載!

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