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【編集部通信】モチベーションを保つためには。走りながら辿り着いた答え

text by 樋口靖幸

『音楽と人』の編集部員がリレー形式で、自由に発信していくコーナー。エッセイ、コラム、オモシロ企画など、編集部スタッフが日々感じたもの、見たものなどを、それぞれの視点でお届けしていきます。今回は、ジョギングを日課にしている編集者が、今の思いを綴ります。



4月以降、ずっとマスクをして走っているけど、そろそろ辛くなってきた。


先日、『音楽と人』9月号に掲載するNothing’s Carved In Stoneの4人の撮影で駒沢公園に行った時のことだ。雨上がりの湿気で不快指数がハンパないジョギングコース。そこでガチ走りするランナーをひなっち(日向秀和)と一緒に遠目に見ながら、ジョギング時のマスク着用の是非について語り合った。彼もジョギングを日課にしている男で、今はマスクを必ずつけて走っているという。でも意外とノーマスクで走っている人が多いね、という話になり、この時見かけたランナーもほとんどがそうだった。ていうかあんな暑い中でマスクをつけて猛スピードで走ること自体ヤバい。ひなっちも前日の昼過ぎに走ったら死ぬかと思ったと言っていた。夏が近づいてきてランナーのマスク着用の是非はこれまで以上に問われているけど、はたから見ればマスクをして走ってる人はヘンタイにしか見えないだろう。ちなみに心肺機能を上げるためのトレーニング用マスクというアイテムが以前からあって、そいつをつけることで低酸素、つまり高地トレーニングの環境を作り出すことができるという。


走る時はポリウレタン製の何度も洗って使えるマスクを重宝してたけど、7月に入ってからはそのマスクですら汗でグショグショになってまともに呼吸できなくなってきた。なので人通りがないところではマスクを外して走り、人がいる時はつけ直すという面倒なことをしている。バフ、という本来は日焼け防止で顔を覆う布を口元に巻くと、多少マスクよりは息がしやすいこともわかったものの、やっぱり息苦しさと暑さからは逃れられない。いつもの夏にはない過剰なストレスと不快感がずっとつきまとう中で、例年と同じトレーニングを続けるのはなかなかしんどい。


今年の2月以降、エントリーしていたマラソン大会はすべて中止となった。それでも来年の大会に出ることに気持ちを切り替え走り続けてきた。駒沢公園でひなっちと見かけた激走ランナーみたいにマスクをしないで走ればもっといい練習ができるかもしれないが、今シーズンそれをやるのは諦めた。来年の大会に出て、自分のタイムに納得できればそれでいい。そう思って走ってきた。でも、そろそろモチベーションが危うくなってきた。来年の大会自体も開催されるかどうか雲行きが怪しいのだ。こうなると自分は何のために走っているのかわからなくなってくる。健康とか体重維持も走る理由ではあるけど、それだけのためにマスクをつけて走るほどの根性はない。ストレスや負荷を自分にかけるなら、それを上回る充実や達成感がモチベーションとして必要なのだ。


ライヴがいつになったらできるのか、ずっとわからない状況下でミュージシャンたちがモチベーションを維持するのは辛いだろう。それこそいろんなストレスと負荷がかかりまくっているに違いない。ましてやそれが稼業であるというのが深刻だ。飯が食えなくなって路頭に迷う可能性だって十分にある。モチベーションを失って走ることをやめても生活には困らないけど、音楽で飯を食ってる人はそうはいかない。じゃあ他の何かで飯が食えるのか? や、それができないからこの世界にいるんだろう。だったら野垂れ死ぬのを待つだけか? でもそれって甘えなんじゃないか? とっとと他にできることを自分なりに努力して見つけたり探したり考えたりすべきなんじゃないか? 当事者でもないのに、最近はそんなことを取材前に考えてしまう。


こないだリモートで取材した安部コウセイは、音楽でしか生きていけない典型的な社会性のない人間だ。昔も今もそれは変わらない。けどそんな彼が、どうやったらこの状況下でお金を回してバンドを続けていけるのかを真剣に考えていた。世間を藪睨み、バンドを俯瞰し、この出口の見えない現実と必死に向き合っていた(註:安部コウセイ(SPARTA LOCALS/HINTO)インタビュー。コロナ禍で僕が考え続けてきたこと)。この数ヵ月、そうやっていろんなミュージシャンとの対話や発信される音楽を前に考えさせられることが多かった。音楽どころじゃないと悶々としている人もいれば、ビジネスチャンスだと前向きにとらえる人もいる。ライヴハウスの支援に奔走する人、家族との時間を大切にする人、いろんな人がいろんな思考で現実と向き合っていた。そういうミュージシャンのあり方を目の当たりにして、とにかく自分も考え続けることが大事だと結論づけた。でも音楽ってここまで考えないとできないものだっけ?と思う自分もいる。無心で音楽を向き合いたい。我を忘れて音楽の風に吹かれたい。それ以外のことはどうでもいいじゃんか、と。


なかなかそう思うのが難しいから、今はマスクが苦しくても音楽を聴きながら走っている。あの苦しさの中では何も考えることができないからだ。苦しさ以外何もない空白の中、音楽だけが鳴っている。そこに唯一、走ることのモチベーションを見いだしている自分がいる。何も考えず、ただ音楽に身体を埋める時間を獲得するために。



文=樋口靖幸

多摩川沿いのランニングコース。
5月から感染予防対策を促す看板が設置された

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