【LIVE REPORT】
UNISON SQUARE GARDEN〈USG 2020 “LIVE(in the)HOUSE”〉
2020.07.15(無観客生配信ライヴ)
昨年、結成15周年を迎え、バンドみずから「盛大に祝ってくれないか」と公言し、祝祭モードの1年を過ごしたUNISON SQUARE GARDEN。2020年は、メンバーの言葉を借りるならば〈通常営業〉に戻り、4月の自主企画対バンツアー〈fun time HOLIDAY 8〉から動き出すはずだった。残念ながら〈fun time HOLIDAY 8〉は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となってしまったが、5月には「2020年内の活動計画5大トピックス」を発表。そのひとつとしてアナウンスされたのが、7月15日に行われたバンド史上初となる無観客生配信ライヴ〈USG 2020 “LIVE (in the) HOUSE”〉だ。
20時すぎ、おなじみのSEであるイズミカワソラの「絵の具」が流れる中、鈴木貴雄、田淵智也、斎藤宏介、といういつもの順番でステージへと向っていく。そんな彼らの後ろ姿から、ステージ正面を捉えるカットへと移り変わる。そして〈今日までの感情が明日を作るから〉というサビ始まりの新鮮なアレンジによる「mix juiceのいうとおり」から、16年目のUNISON SQUARE GARDENの最初のワンマンライヴはスタートした。「お待たせ!」という斎藤の言葉を挟み「オトノバ中間試験」、「桜のあと(all quartets lead to the?)」と久々のワンマンライヴの幕開けにふさわしい、ポップでカラフルなナンバーを続けざまにプレイ。そして3曲を終え、しばし暗転中のステージ上で黙々とチューニングを合わせたり、ドリンクを口にする3人が画面に映し出される。間を持たせるような会話などない、このちょっとした沈黙の瞬間もまた、いつも通りでなんだか心地よい。
そんな小休止を経て、「MCなし、UNISON SQUARE GARDENです!」と力強く言い放った斎藤の言葉から、「きみのもとへ」となだれ込む。「君の瞳に恋してない」で、おもむろに近づいてきた田淵とアイコンタクトで駆け引きをしながら、ステージ前方に飛び出し思い切りソロ弾く斎藤の姿や、「オリオンをなぞる」で時折スティックを回しながらビートを刻む鈴木の気持ちよさそうな表情から、久々にライヴができる喜びが伝わってきて、観ているこちらも〈軽くテンションMAX〉に(このフレーズが唄われた瞬間、田淵にフォーカスしたカメラワークも最高!)。そこから間髪入れず「I wanna believe、夜を行く」へと繋がる流れも見事だ。
晴れやかな前半から一転、たおやかな空気に包まれた中盤。斎藤の柔らかな歌声と弾き語りによる1コーラスめから、2コーラスめでバンドサウンドになり、〈1.2.3 僕の声を初めて君がキャッチした〉と唄われるアウトロで3人の声が重なっていくというアレンジにグッときた「スカースデイル」。続く隙間の多いサウンドで大人っぽいムードを纏った「静謐甘美秋暮抒情」では、間奏におけるスリリングなフレーズの応酬に耳を奪われ、また歌詞とリンクしたブルーとオレンジの照明のなか披露された「mouth to mouse(sent you)」からのドラムソロでは、ヘッドセットカメラを装着した鈴木目線の映像や、彼のドラミングがよくわかるステージ真上からの俯瞰ショットに目を奪われたのだった。
今回、事前に募った全楽曲対象のファン投票の上位30曲の中からセットリストが組まれるという〈リクエストワンマン〉でもあったのだが、リクエスト第1位を獲得した最新シングル「Phantom Joke」から後半戦へと突入。これまでの彼らのライヴではあまりなかった、バックスクリーンを使った映像演出とともに披露された「to the CIDER ROAD」から、鈴木のカウントで始まる「場違いハミングバード」では、もはやカメラが追いつけないほどの動きを見せる田淵。また、エフェクターのスイッチングを捉えた足元のカットが印象的だった「シュガーソングとビターステップ」に、不意打ちの斎藤のカメラ目線でドギマギさせられた「箱庭ロック・ショー」と怒涛の畳み掛けに、ぐいぐいとステージに引き込まれていく。そんなオーディエンスの感覚を代弁するかのような、メンバーに近いアングルを多用した後半のカメラワークも相まって、ライヴ会場で味わう興奮に近い、熱い感情が身体の中に湧き上がっていったのだった。
そして、斎藤がマイクから顔を外し、生声によるアカペラで大サビを唄うという、5年前の武道館ワンマンを彷彿とさせた「フルカラープログラム」で、ライヴはクライマックスへ。曲のラスト、画面にはメンバーから見える景色――誰もいない客席が映し出され、今の状況・現実に一瞬引き戻される。だが、清々しい表情を浮かべながら全力でアウトロを奏でる、いつものライヴと変わらぬステージ上の3人の姿を再び目にし、どんな形であろうと音と戯れる最高の遊び場は存在し続けるんだ、という思いを確かにする。
「今のでライヴはおしまいです。ここまで観てくださったみなさんに、ちょっとしたご報告を」と、先に2020年内のリリースが発表されていたニューアルバム『Patrick Vegee』の発売日が9月30日に決定したことを明かす斎藤。そして「ここからは、おまけなんだけど」という言葉から始まったエクストラタイムで、ニューアルバム収録の新曲「弥生町ロンリープラネット」を初披露した。たおやかなメロディと、シンプルなサウンド構成の新曲のラストフレーズ〈日常が変わる 冬の終わり/そして僕らの春が来る〉に呼応するかのように「春が来てぼくら」のイントロが始まるという心憎い流れに思わず唸る。またここで画面が3分割されメンバーそれぞれの姿が同時に映し出されるという、最後の最後で配信ライヴならではの映像エフェクトを使った演出をみせるところも、なんだか彼ららしくてよかった。そして、この日に向けてのリハーサル時の映像がエンドロールとして流れ、ライヴは幕を閉じたのだった。
終演後、先のリクエスト投票で31位から70位の楽曲をもとにした次なる配信ライヴ〈USG 2020 “LIVE(in the)HOUSE 2”〉を8月22日に開催することを告知。上位に入らなかった楽曲もしっかりと掬い上げていく、この感じもまた実にユニゾンらしく、どんなライヴになるのか楽しみだ。通算8枚目となるオリジナル・アルバム『Patrick Vegee』をはじめ、16年目のUNISON SQUARE GARDENからも目が離せそうにない。
なお、8月5日発売の『音楽と人』9月号では、このライヴの模様を収めた写真とともに、インディーズ時代からバンドを見続けてきたライター上野三樹さんによる原稿を掲載。こちらもどうぞお楽しみに。
文=平林道子
写真=Viola Kam (V'z Twinkle)
【SET LIST】
01 mix juiceのいうとおり
02 オトノバ中間試験
03 桜のあと(all quartets lead to the?)
04 きみのもとへ
05 君の瞳に恋してない
06 オリオンをなぞる
07 I wanna believe、夜を行く
08 スカースデイル
09 静謐甘美秋暮抒情
10 mouth to mouse(sent you)
ドラムソロ
11 Phantom Joke
12 to the CIDER ROAD
13 場違いハミングバード
14 シュガーソングとビターステップ
15 箱庭ロック・ショー
16 フルカラープログラム
17 弥生町ロンリープラネット
18 春が来てぼくら
〈USG 2020 “LIVE(in the)HOUSE 2”〉(無観客生配信ライヴ)
日付:2020年8月22日(土)
※詳細は後日発表
NEW ALBUM『Patrick Vegee』
2020.09.30 RELEASE
【CD収録内容】
「春が来てぼくら」「Catch up, latency」「Phantom Joke」「弥生町ロンリープラネット」ほか全12曲
【初回限定盤・受注生産限定盤付属Blu-ray / DVD収録内容】
「USG 2020 "LIVE(in the)HOUSE"」 + 4 tracks -Patrick Vegee Edition-
mix juiceのいうとおり/オトノバ中間試験/桜のあと(all quartets lead to the?)/きみのもとへ/君の瞳に恋してない/オリオンをなぞる/I wanna believe、夜を行く/スカースデイル/静謐甘美秋暮抒情/mouth to mouse(sent you)/Phantom Joke/to the CIDER ROAD/場違いハミングバード/シュガーソングとビターステップ/箱庭ロック・ショー/フルカラープログラム/弥生町ロンリープラネット/春が来てぼくら
等身大の地球/ため息 shooting the MOON/さよなら第九惑星/シャンデリア・ワルツ
UNISON SQUARE GARDEN オフィシャルホームページ https://unison-s-g.com/