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  • #錯乱前戦

錯乱前戦が企画した、自主制作音楽番組。そこにある、彼らの創作欲とは

text by 青木里紗

平均年齢21歳のロックンロールバンド、錯乱前戦。ファーストフルアルバムのリリースを記念し、3月21日に下北沢BASEMENTBARでワンマンライヴの開催を予定していた。だが、3月16日に中止を発表。その4日後、バンドの公式Twitterで約37秒に渡る、フィルムのような質感の予告映像とともに、21日の夜、自主制作音楽番組『ベースメント ア ゴーゴー』をYouTubeで放送するということがアナウンスされた。無観客ライヴ配信と似たものであることは想像がつくが、これはちょっとわけが違そうだ。21日の夕方から、BASEMENTBARで番組収録を行うと聞き、これを企画した彼らの思いを知りたくて、現場に伺った。


当日16時、BASEMENTBARに到着すると、会場設営の真っ最中だった。「あー、もうちょっとこっち!」「OK!」と、脚立の上に立ち、壁に黒い大きな布を吊るそうとしている、ヤマモトユウキ(ヴォーカル)と森田祐樹(ギター)。それを「いいんじゃない?」と、離れた位置から見ている成田幸駿(ギター)とサディスティック天野(ドラム)。どうやら今日はステージ上ではなく、フロアで演奏するらしい。作業がひと段落したところでメンバーと挨拶を交わし、1日の流れをざっくりと確認。そして「こんな時だからひとり1セットしか買えなくて」と話す成田は、防護服を手にしている。この日の衣装として調達したらしい。防護服と、カラースプレーを携え「今から外に行ってきます」とメンバーが移動し始める。一体何をするのだろうか。


外の駐車場に移動すると、防護服を広げ始め、〈錯乱前戦〉というロゴの型を手にしているヤマモト。どうやらバンドのロゴを入れて、オリジナルの防護服にしようという企みらしい。ちなみに、この型は、ヤマモトの自作なのだという。その型は、左胸あたりと、背中の中央部分に置かれ、スプレーを噴射し、ロゴを転写していったのだった。


防護服が5着横たわる光景は、まるで殺人事件の現場検証に見え(笑)、スプレーが跳ねて真っ赤になった手を見て「犯人だ!」など、みんなでワイワイと盛り上がったところで撤収。


ライヴハウスに戻ると、撮影チームが準備を進めていた。今回参考にしているのが、ザ・マミーズ(註:アメリカのガレージバンド)の映像ということで、そのレトロな質感に近づけるべく、昔ながらのホームビデオが用意された。


テストで撮ってもらった映像の、フィルムのような画質に「おおー!」とテンションがあがるメンバー。そして、慌ただしくセッティングが進行していく。ヤマモトはドラムを叩き出し、ギターの2人とセッションを開始したかと思えば、そのままドラムのサウンドチェックへ。それが終わったあとも、演奏は止まらない。気づけばブルースセッションに突入し、3人の世界が確立されていた。キリのいいところで全員が揃い、ようやくリハーサルへ。防護服に着替え、マスクをつけ、ゴム手袋も装着。その姿は、なんとも異様。だが、ウイルスのせいでライヴができない状況に対する、彼らなりのアンチテーゼだったり、それすらも逆手にとって面白いことを実践するのだ、というバンドのポジティヴさやユーモアを感じる。


「暑いー!」「手袋してると弾けない!」とこぼしながらも、実際に1曲演奏。メンバーは、汗びっしょり。その後、番組のMC役に抜擢された、BASEMENTBARの店長であるクックヨシザワも交えて、流れを確認。前半に2曲披露したあと、一旦CMを挟み、後半に4曲披露するのだという。番組の始まりの合図や、CM明けの振り、エンドロールの文言といった細かい部分まで調整。そして「一発で成功させましょう!」という撮影チームの掛け声に、全体の士気も一層あがるのであった。


いよいよ本番がスタート! バンドの紹介MCを挟み、天野のカウントで「ハンマー」の演奏が始まったかと思いきや……「すみません!」と佐野(ベース)が叫び、中断。アンプに繋げていたシールドが抜けてしまったのだ。思わぬハプニングだったが、気を取り直してもう一度。演奏しづらい状況であろうと、目の前に観客がゼロであろうと関係ない。内側に抱えているエネルギーを今、この瞬間に全員がすべてぶちまけているのだ。そうして間髪入れずに「タクシーマン」へ。曲の終盤、成田がギターのシールドにぐるぐる巻かれて、床に寝そべりながらギターを弾いたり、森田と佐野はぶつかりそうなぐらいの距離感で、それぞれのプレイに熱中したりと、なんともカオスで破壊的なステージになっていたのだった。ここで小休憩しつつ後半の流れを再度確認。(実際の放送では、物販で販売しているTシャツと、発売中のファーストアルバムの告知CMが流れた)


後半戦。ここでは通常の衣装にチェンジ。演奏されたのは、新曲「ミルクティー」。彼ららしい王道のロックンロールでありながら、すっと耳になじむポップなメロディが印象的だ。そこから「君のハートはブルーだよ」「夕焼けニャンニャンズのテーマ」を披露。ピュアな衝動をむき出しにして、爆音を鳴らし続ける5人。


ヤマモトの発案がきっかけで始まった、音楽番組形式の今回の企画。そしてメンバー間で意見を出し合い、さらには日ごろお世話になっているライヴハウスや、本来のワンマンで撮影してくれるはずだったカメラチームらを巻き込み、中止発表後から本番までわずか5日間で準備が進んだという。もともと彼らは創作に対する興味が人一倍強いようで、過去のMVで自ら小道具を手作りしたり、できればMVも自分たちだけですべて作りたいと思っているのだそう。やりたいことをやり遂げようとする真っ直ぐな思いの裏にあるのは、わずかなモヤモヤとした感情から来る、もっと面白い何かを探したいという気持ちなのではないかと思う。


「みんな本気で、自分が楽しいと思うことに向かっているじゃないですか。バンドの人たちって。自分の好きなことをやって生きるのはすごくカッコいいなって思う」


そんなふうにインタビューでヤマモトが語ってくれたが、彼らも憧れのロックンロールバンドのように、ほんのちょっとでも楽しい方向へ向かいたいのだ。日々の退屈や手持ち無沙汰な感覚を持て余してしまわぬように。よって今回も、制限がある中だからこそ、だったら普段できない面白いことをやってみよう。自分たちの好きなものを詰め込んで、自由にかき鳴らそう――そんな気持ちが、通常のライヴ配信というスタイルではなく、このような企画を動かす大きなきっかけになったのではと思うし、それが彼らにとって最もワクワクすることだったはずだ。


〈つまんない つまんない 楽しいクスリがほしいよ つまんない つまんない 退屈してるよ いつでも〉――最後に演奏された、ボ・ディドリーのカヴァー「ピルズ」。ヤマモトがつけたオリジナルの日本語の訳詞だが、彼らはどんな状況であったって、何か心が動くものを求めアンテナを張り、湧き上がる衝動とともに、やりたいことをひとつずつ形にしていくのだろう。


「OK!」


そう撮影チームが声をあげる。みんな〈やり遂げた!〉と言っているような、いい表情を浮かべていた。


撮影後、急ピッチで編集作業が行われたのち、当日の23時半から、予定通りYouTubeで放送がスタート。DIY精神がにじむ、どこか懐かしさを感じる映像には、何があっても音を止めたくない! やりたいことをやるのだ!と言わんばかりの気迫が画面からあふれていた。


4月1日の22時からは、この番組が期間限定で放送される。どんなことがあろうと自らが信じるロックンロールをドカンと鳴らす、彼らのクリエイティヴィティと情熱に触れてみてほしい。



文=青木里紗



自主制作音楽番組『ベースメント ア ゴーゴー』
2020年4月1日 22時から、期間限定で放送
視聴URL: https://youtu.be/7j0O1Q8kM8Y


NEW ALBUM『おれは錯乱前戦だ!!』
NOW ON SALE


01 ドンドア
02 ロッキンロール
03 ハンマー
04 君のハートはブルーだよ
05 僕のハーモニカ
06 boy meets boys
07 ロンドンブーツ
08 タクシーマン
09 また旅
10 カレーライス
11 モンキー・オ・マンキー


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錯乱前戦 オフィシャルTwitter  https://twitter.com/sakuranzensen

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