【Live Report】
THE BOHEMIANS〈the popman’s tour 2019〜明るい旅〜〉
2019年12月13日 at 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
「今回のツアーは、今までで一番いいツアーだった」
アンコールを終えてそう話すヴォーカル・平田ぱんだの表情は、実に晴れやかなものだった。
最新アルバム『the popman’s review』を引っさげて、10月から全国ツアーを開催してきたボヘミアンズ。その終着点となった、渋谷 duo MUSIC EXCHANGEには、ファイナルを見届けようと各地から集まった観客で埋め尽くされていた。
SEにあわせメンバーがステージに登場し、大きな歓声があがる中、「ツイスターズのテーマ」でライヴをスタート。ポップなメロディで会場を色鮮やかに染めつつも、5人のグルーヴが塊となり前に押し出された演奏で観客の心に火を点ける。荒々しくソリッドな「male bee, on a sunny day. well well well well!」を叩きつけると、平田は「年末の忙しい時期にロックンロールの現場に来るなんて、もう人間じゃない! 人間やめてロックンロールだ!」と観客に言い放ち、フロアの熱量をグッと高めていく。そして星川ドントレットミーダウンが鳴らす骨太なベースを合図に「ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも」が投下されれば、ステージ前方に向かって観客がギュッと押し寄せ、平田が勢いよくフロアへダイブし、会場を一層沸かせたのであった。
序盤からロックンロールの爆発力を見せつけた後、ゆったりとしたリズムにあわせて〈どんな名盤(アルバム)でも一、二曲とばす曲ってあるよね?〉と唄い出される「 ▶︎▶︎| (とばす曲)」が披露され、会場の空気が一気に緩む。この曲について「こういうバカバカしいことがすごく好きなんです」「真面目な奴だと思われるのはイヤ。カッコつけても恥ずかしいから、こういう曲はもっと入っていてほしい」ということを平田と、バンドのメインコンポーザーでありギターのビートりょうがインタビューで話していたし、実際に披露する前、平田は、演奏中に移動したりトイレに行くなり自由に休んでいい、という旨を観客に伝え笑いを誘った。だが、この曲を通して、あらためて彼らのメロディセンスに思わずハッとしてしまう。すっと耳に馴染むそれは、「 ▶︎▶︎| (とばす曲)」以降に披露された「Introduction Girl」「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」といった、チャーミングでスウィートなロックンロールに共通する部分があるのだ。彼らが音楽的な土台をしっかり築いてきたからこそ、遊び心にあふれた「 ▶︎▶︎| (とばす曲)」がひとつの楽曲として成り立つことを実感したと同時に、そんなユーモラスな面を堂々と楽曲に落とし込むところに、今のボヘミアンズの風通しの良さを感じたのであった。
中盤のMCで、メンバーがこのツアーの充実ぶりについて口々に語る様子からは、今作を経て、より自分たちらしくロックンロールを鳴らせた喜びを感じていることが伝わってきた。また、今作の主導権を握ったビートりょうが、アルバム完成に至るまでの経緯を振り返っていたが、今作でボヘミアンズらしさをあらためて考え、これまで以上に心からやりたいことを形にしたことで、また一步踏み出せた感覚があったのではないだろうか。
だから「死ぬまでボヘミアンズをやるので、よろしく! ついて来いよ!」というビートりょうの力強い宣言は、このツアーで手応えを感じ、自分たちの可能性を信じて次を見据えたバンドの決意そのもののように思えた。そして、その直後に披露された「GIRLS(ボーイズ)」の〈自分の生き方は自分で決めれば良い〉〈好きなように生きようぜ〉という一節が、今の彼らの姿勢と重なり、胸に響いてくる。ボヘミアンズに、もう迷いは一切ない。間違いなく新しい季節を迎えたのだ。
そんな彼らの次なる道筋が見えたあとは、今という瞬間にすべてを懸ける、前のめりなロックンロールショーが展開されていく。平田が「拳と声をくれよ!」と観客に強く問いかけ、「シーナ・イズ・ア・シーナ」「太陽ロールバンド」が立て続けに披露されると、一斉に拳があがり会場は熱気に包まれた。その後も陽性のサウンドが響くロックンロールナンバーを次々とプレイ。本間ドミノの華麗な鍵盤が聴きどころの「Johnny B♭~地獄のピアノマン~」でロックンロールの楽しさがフロア中に充満し、「R&R第一発見者」「Jagger/Richards」でボルテージが最高潮に達したところで本編の幕は閉じた。
鳴り止まないアンコールに応え、メンバーが再びステージに登場。「ナナナナナナナ」では、観客にカラーボールが配布され、『the popman’s review』のジャケットに映る女性と同じようにメンバーも玉入れ用ネットを頭に被り、観客に玉入れをさせたかと思えば(笑)、「スペルまで」では、レコーディングに参加した林宏敏(カネコアヤノバンド/ex 踊ってばかりの国)、牛尾健太(おとぎ話)をゲストに迎え、約10分(!)にもおよぶブルースセッションを繰り広げ、その予測不可能な自由さに演者も観客も終始心を躍らせていた。その後「明るい村」「That Is Rock And Roll」を披露し、いよいよフィナーレかと思いきや、まだ物足りないのか「あと2、3曲やってもいいよね?」と平田。その言葉にフロアは沸き、急遽、その場で何を演奏するか話し合いを始める5人。ようやく決まったところで、千葉オライリー(と無法の世界)の跳ねるビートからスタートする「おぉ!スザンナ」へ。最後はジェリー・リー・ルイスのカヴァー「火の玉ロック」で大団円を迎えた。
ロックバンドとして、突き抜けたカッコよさを見せつつも、ユーモラスな部分もふんだんに盛り込んだライヴ。そこには彼らがやりたいことをとことん形にし、心から楽しんだ跡がしっかりと残っていた。彼らはかつて〈ロックンロール・アイドル〉というキャッチコピーを掲げた数年を経て、現在のデリシャスレーベルに移籍したわけだが、しばらく試行錯誤を続けている印象があった。だが今作のインタビューで平田が「この歌どういうふうに唄おうか?とかそうやって考えるのはなくなった。迷いがなくなったんです。俺は全部前のめりだと。ロックンロールなんで」と語ってくれたように、頭で考えるのではなく、自然と胸に湧き上がる衝動のようなもの。それを一気に出し切るのがロックンロールなのだとあらためて気づいたのだ。こうしたい、そうせずにはいられない。そんな純粋な思いに動かされ、自らの信じるものを鳴らし続けてきたからこそ、冒頭で触れた平田の発言も出てきたに違いない。
自身最高を更新し、さらなる道を開いたボヘミアンズ。これからも彼らがロックンロールの楽しさやカッコよさを追求し、その先にどんな景色を見せてくれるのか期待したい。
文=青木里紗
写真=釘野 孝宏
【SET LIST】
01 ツイスターズのテーマ
02 male bee, on a sunny day. well well well well!
03 I Don’t Care That Pretty Girl
04 ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも
05 La-La-La Lies
06 THE ALWAYS
07 Please Mr.Yes-Man
08 SHOPPING
09 the popman’s review
10 ▶︎▶︎| (とばす曲)
11 It’s Alright, It’s Alright
12 憧れられたい
13 Introduction Girl
14 恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン
15 GIRLS(ボーイズ)
16 シーナ・イズ・ア・シーナ
17 太陽ロールバンド
18 Johnny B♭~地獄のピアノマン~
19 ダーティーリバティーベイビープリーズ
20 I am slow starter
21 R&R第一発見者
22 Jagger/Richards
ENCORE 01
01 THE ROBELETS
02 ナナナナナナナ
03 スペルまで
04 明るい村
05 That Is Rock And Roll
ENCORE 02
01 おぉ!スザンナ
02 NEW LOVE
03 火の玉ロック
THE BOHEMIANS オフィシャルHP http://the-bohemians.jp/b/