成田大致インタビュー
今年の夏の魔物は、昨年の出演者と比べると、サブカルおよびアイドル関係の出演者が姿を消し、これまでの〈なんでもあり〉ではなく、純粋な音楽フェスに回帰したように思えます。
「まさに〈原点回帰〉しようと思ったんですよ。ここ数年いろんなことがあったので、フェスをちゃんと仕切り直そうとしたんです」
高円寺のデニーズに強引に呼び出され、相談を受けたのが去年の年末でした。
「とにかくいろんなものに流されすぎてた自分を反省しました!」
当初の夏の魔物は、ロック不毛の地である青森でフェスを開きたい、という成田少年の純粋な夢だったはずなんだけど、いつのまにか名前が独り歩きして〈なんでもありだから面白い〉というフェスになっちゃったわけですよ。
「〈夏の魔物とは何か〉を定義しなきゃいけなかったんですけど、面白ければいいじゃんって、ふわっとさせたままやってきたんですよね。そしたらいつの間にか〈成田大致〉って存在が一人歩きを始めてしまって」
だからいきなりは無理だけど、今回から、青森で開催した頃を思い出して、成田くんが面白いと思うロックバンドを集めたらいいんじゃないかと。
「全ラインナップのブッキングを自分の意思だけで行う形に戻し、若手も強化したいと金光さんに相談もして」
Age Factory、ステレオガール、CRYAMY、Teenager Kick Ass、NITRODAY……ひと通り挙げていったら、1週間もしないうちに「ライヴ観に行きました。出てくれるそうです!」って連絡が来て。行動力だけはほんとすごいな、と思いました(笑)。
「『ライヴに行って、本当にいいと思ったら、本人やスタッフと顔合わせて、夏の魔物ってフェスをこうしたいから出てくれ、って伝えたほうがいいんじゃない?』っておっしゃってたじゃないですか。あれをすぐやったんですよ」
だって1から仕切り直しだからね。不信感を払拭してくれるのは、成田くんの思いみたいなものを見せるしかないから。
「そう。仕切り直しなんですよ。だからいろんなしがらみを捨てて、こういうアーティストに出てほしいなって部屋の中で考えてたら、昔の自分にもう1回会えたような気がします」
だってAge FactoryとTHA BLUE HERBがヘッドライナーをつとめるフェスって、普通ないよ(笑)。
「そこは自信あります」
こういう形に回帰したのは良かったと思いますよ。でも、昨年までのアイドルやサブカルを含めた〈なんでもあり〉な夏の魔物を面白がってた人たちは、梯子外された気持ちだろうね。
「文化人の方によるトークやプロレスの試合も準備はしていますが、あくまで1日の流れや全体のバランスを考えてブッキングしているので、これまでと意味合いが違います。いろんな噂や誤解や嘘も多いけど、これからの〈夏の魔物〉を続けていく中で証明するしかないですから」
まあそれしかないよね。
「自分の中では、こうしたいんだ、というのがハッキリしたから、すごくスッキリしてるんですよね。いまさらかもしれないですけど、もっとお客さんが楽しめて、アーティストが演奏に集中できて、そして自分自身も納得のいくフェスを作りたいという気持ちで今、動いています」
でも、さんざん迷惑かけてるけど、音楽関係、特にミュージシャン本人が、どっかで成田大致のことを気にしてるんだろうね。
「ありがたいです」
それが夏の魔物を15年近く続けてきた財産だと思うよ。
「その期待にもちゃんと応えなきゃ、と思ってます。今までは、ただなんとなく〈成田大致〉をかつぐ神輿に乗って、激流下りをしてる感じでしたけど、それをもっと意識的にやります。さっきの若手3人が語っていた、未来へのヴィジョンのように。3人ともマインドがちゃんとしてますよね」
見習いなさい(笑)。
「意思表示、していきます!」
文=金光裕史
夏の魔物2019 in SAITAMA 2DAYS
日程:2019年9月28日(土) / 29日(日)
場所:埼玉・東武動物公園
時間:9:30 開場 / 9:45 開演
公式HP:http://natsunomamono.com/