ドキドキ、ワクワクする気持ちを忘れずステージに立ち続けたい――そんな思いを胸に、ハッピーロックンロールをかき鳴らす、THE TOMBOYS。2011年、中学校の同級生で結成され、一時は留学や受験で活動休止を挟みながらも、地元・神戸から日本全国のライヴハウスを飛び回り、さらには海外でのレコーディングやライヴも経験。楽しげで面白そうなことは決して逃さず、好奇心の赴くままに活躍の場をグイグイと広げてきた。
最新ミニアルバム『NOW’N’RUN』は、シンプルなロックンロールに、新たなスタートを切った今の彼女たちの気持ちが詰め込まれている。気づけば結成から今年で丸8年。この春、全員が大学を卒業し、ついに音楽一本の道を歩み始めた。そんな節目を迎えたことで、新作には、不安も期待も抱えながら、 まだ見ぬ世界へ走っていく勢いにあふれているのだ。なぜ彼女たちは真っ直ぐに、自分たちの信じる道を進んでいけるのか。メンバー全員に話を聞くと、バンドに魅了され、ここまで続けてきた4人の思いが見えてきた。心ときめくものを信じて突き進む彼女たちは、きっと今よりも広くて大きな場所にたどり着くはずだ。
3月にU.F.O. CLUBでライヴを観た時、バンドをもっと頑張りたいっていう覚悟みたいなものが伝わってきて。今作にも、前に進むんだっていう思いが出ていると感じたんですが、もともとどういう作品にしようと思っていましたか。
タバタヒナ(ヴォーカル&ギター)「今22歳になって、4人とも大学を卒業したんですけど、目の前には音楽しかないと実感したんですね。そこでこれからやるべきこととか、この先どうしたいのか、いろいろ考えて。今を駆け抜けて行くしかないなっていう気持ちになった時、リード曲の〈RUN〉ができたんです。で、そういう気持ちが出ているミニアルバムにしたいって思いましたね」
「RUN」がこの作品の方向性を決定づけたと。
ヒナ「そうだと思います」
大学を卒業すると、周りが就職したり、いろんな変化があると思うんです。みなさんはTOMBOYSを続けることに迷いはなかったですか?
ヒナ「はい。今までもそうだったので。中学の頃、1年間留学した時と、大学受験の時にバンドやってなかったんですけど、『続けようね!』って言ったことがないんです。(留学や受験が)終わったあとの話を先にしちゃってて」
ワキマドカ(ギター) 「何月ぐらいには復活できる、みたいな(笑)」
のん(ドラム)「就活の時期も、就職はせんでバンドやろうなっていう話はまったくしてなくて。結局誰ひとり就職しなかったし。バンドやっていくっていう空気が自然とありましたね」
マドカ「組んでから4人それぞれの真ん中にバンドというものがあって、それがずっと続いているというか」
GGワカナ(ベース)「なんか歯を磨く感覚みたいな(笑)」
(笑)この4人で音を鳴らし続けていくことが。
ワカナ「そう。〈今日歯磨こうかな?〉とは思わないじゃないですか。それと一緒で」
バンドが日常に溶け込んでいるっていうことですね。
マドカ「4人でいることがナチュラルに生活リズムの中にあるというか」
のん「家族より長い時間一緒にいるので。(ツアーで)一週間家に帰らず、4人でずっと同じ部屋で過ごしたり」
メンバーだったら気を遣わなくていいとか、そういう感覚もあります?
マドカ「お互いが無意識にちゃんとバランスをとっていますね。いい感じの、無言の空気の読み合いが続いているんだと思います(笑)」
ということは、各々性格は全然違うと。それぞれどういうキャラなんですか。
ヒナ「まずポンコツでしょ?(のんを見ながら)」
のん「なんでやねん!(笑)」
ヒナ「会話が通じないんですもん」
マドカ「シャンプーとリンスどっち使うって話をしている時に、ボディソープとか洗顔の話をぶっこんでくるタイプなんですよ」
聞いてることと違うことが返ってくるタイプなんですね(笑)。
ヒナ「で、やらかし隊長でしょ?(マドカを見ながら)」
ワカナ「だってライヴの日にギターを忘れてましたから」
一同「ははははは」
ヒナ「私は……」
マドカ「バンドの時は、作品のアートワークとか曲のディレクションをしてますけど、それ以外だとただの変人ですね(笑)」
ワカナ「(ヒナは)ボケまくるんですよ」
ワカナさんがツッコミ役ですか?
ワカナ「いや、お互いにボケる時もあるんで」
のん「ボケの渋滞(笑)」
それだと収拾がつかない気がしますが……。
ヒナ「でも、こんな4人のバランスを保つ係がベースの人なんです」
のん「お母さんみたい」
ワカナ「ってよく言われます(笑)」
のん「みんなでご飯食べに行っても一番最後に忘れ物はないかなって見てくれるのがワカナなんですよ」
ワカナさんがしっかり者で、バンド内の調整役というか。だけど、作品を作る時にディレクションするのがヒナさんということで、音楽的なまとめ役はヒナさんなのかなと思ったんですけど。曲作りはどうやって進めていくんですか?
マドカ「ひーちゃん(ヒナ)が曲のデモを持ってきて、それを聴いてからアレンジをみんなでしていきます」
ヒナさんはあくまで曲の土台だけ作る。
ヒナ「そうですね。と言いながら、めっちゃ指示しますけどね」
こういう曲にしたいっていうイメージを3人に伝えて。
ヒナ「伝えつつ、それをみんなで共有できたらそこから完成までけっこう早くて。自分が想像してることをどれだけちゃんと伝えられるかが重要やと思います」
でも最後は全員の意見を聞きたいんですよね。
ヒナ「うん。そのほうが楽しいし、〈あっこんなふうにもなるんや〉っていう発見もあるので、4人それぞれアイディアを出し合えたほうが断然いいものになると思っています。あと今回、予定では6曲入りにしたかったんですけど、1曲いいのができちゃったんで入れたいと思ったんです。レコーディング期間中に、デモ音源だけパッと(みんなに)送って、『これ入れるんで』って言いました」
マドカ「それが7曲目の〈なんにもない〉なんです」
この曲は〈拝啓十年後のわたし〉っていうフレーズが印象的ですけど、どんなきっかけでできたんですか?
ヒナ「さっきも話したんですけど、大学卒業して、これからのことを考えたり、(メンバーと)出会ってちょうど10年で、今までの自分たちを振り返ることがあったんです。自分って良くも悪くもバンドしかない人生だなと思って。でも、これ以外なんにもないって思えることってすごく幸せだなというか。そう気づいたのがきっかけです」
今、良くも悪くもバンドしかない人生だって言ってましたけど、TOMBOYSのライヴを観ると本当にバンドが好きなんだろうなって伝わってきて。でも、この曲を聴いてバンドをやる中で葛藤もあったのかな?と思ったんですね。そういうふうに感じた時もありましたか。
ヒナ「自分たちが頑張ってるとか、頑張ってきたって思ったことはなくて。良くも悪くもの、悪くもの意味は、この4人しか友達がいないこととか(笑)。中学の時からバンド中心でやってきたので、バンドやってなかったらもっと他の友達と遊んでたかもしれへん、ぐらいかな」
でも、自分にはバンドがあるから幸せだと思えるんですもんね。ここまで続けてきたことによって得たものはあります?
ヒナ「私、もともと授業中に発言するのも嫌っていうぐらい目立ちたくないタイプなんですけど、バンド始めてからだんだん怖いものがなくなってきた気がするんです。自分ひとりやったら、たとえば『海外行く?』って聞かれた時、やってみないとわからんことだらけやなって思いながらも〈別にいいかな〉ってなっちゃうかもしれへん。でも4人になった瞬間に、何でもやる!っていう気持ちが強くなると思います」
バンドだと、恐れずにいろいろチャレンジできると。
マドカ「それぞれがリスクより、それをやってみる面白さを見出すことが多くて」
ワカナ「ひとりやと1個の面でしか物事を見れないじゃないですか。でもメンバーがいると4方向からいいところを見つけられて、〈じゃ、やってみよう!〉ってなるんです。だから怖いものがないと思うし、4人でいると無敵なんやと思うんですよね」
他のメンバーの視点によって気づかされて、前向きになれることもあったり。
ヒナ「あと、基本的に目指しているところが一緒なんです、全員。みんな冒険心とか好奇心が強くて。何でも〈やりたい!〉ってすぐに思うタイプなんですよ」
そういうふうにお互い似た部分もあって、何かしたいという思いを共有しあっているから、全員が一緒にバンドをやり続けているというか。
マドカ「バンドしかやってないから、これしかできひんし(笑)」
じゃあ10年後はどうなっていたいと思いますか?
ヒナ「10年後も今とあんまり変わらんまま、バンドとか、好きなことだけやってると思います」
のん「(バンド)続けてたいね」
ヒナ「うん。10年後じゃなくても、ずっと」
文=青木里紗
5th MINI ALBUM『NOW’N’RUN』
NOW ON SALE
01 RUN
02 Vilgilia
03 やんなっちゃうわよ
04 What Are We Gonna Do?
05 DO IT!
06 ブルーアイズ
07 なんにもない
THE TOMBOYS 公式HP http://thetomboys.net/