面白い曲じゃないとみんな離れていっちゃうような気がして。でも今は真面目な曲で締めてもそうは思われへんかって
個人的にはこの曲を聴いて自分はもうヤバTの担当を外れたほうがいいんじゃないかって思ってしまいました。
こやま「え~っ!!」
ありぼぼ「なんでですか?」
ここでこやまくんが唄ってることって、こうして歌詞になるまでまったく気づけなかったんですよ。つまり〈ゆとり世代〉の人たちの気持ちをまったくわかってなかったと。だったらもっと若い世代にヤバTを担当してもらったほうがいいんじゃないかと思ったんです。
もりもと「寂しいなぁ(笑)」
つまり「ゆとりロック」は自分にとってはそういう刺さり方をした曲でありつつ、自分と同じ世代の人を肯定してくれるメッセージソングであるというか。
こやま「でも実際これ作ってる時はけっこう挑戦というか。どういう反応が来るかほんまにわからんくて。別に共感されたいと思って書いたわけじゃないけど、同じくらいの世代の人の中には共感する人もいるかもしれんし、〈何が言いたいのかわからん〉って言う人も出てくると思うし、いろんな受け取り方があるんじゃないかなっていうのは思ってて」
〈ああ もう「打たれ弱いな」って/ああ もう「我慢が足りんな」って/ああ もう うるせーなばか/って思っても言えんな心に秘めて〉って唄ってるじゃないですか。そういう世代の人たちにとって必要な音楽なんだなって。
こやま「そう言われると……なんかこれ、いい曲な気がしてきたな(笑)」
いい曲ですよ(笑)。で、この曲しかり、言いたいことをはっきり言ってるアルバムだと思うんですね。どうしてこのタイミングで言いたいことが言えるようになったんだと思います?
こやま「何なんですかねぇ……。しかも今年2枚目ですからね、アルバム出すの。ようできたなって思いますけど」
ありぼぼ「活動の幅も広がってるのもあると思います。幅が広がったぶん、こやまさんの中で思うこともあるだろうし。あと、シンプルに伝えたくなったのかなって」
シンプルに?
ありぼぼ「前はひっそり言うぐらい。『We love Tank‐top』とかは言いたいことをひっそり潜ませてる感じだったけど、アルバムが出るにつれてどんどん表に出てきて。それってたぶんメジャーデビューして2年半ぐらい経って、こやまさんの中にも安心が出てきたんじゃないかな?と」
安心というのは?
ありぼぼ「聴いてくれる人への。〈この人たちは、もしかしたら自分が何をしても受け入れてくれる〉っていう安心感が出てきたから、言いたいことを言えるようになったのかなって」
こやま「まさに〈ゆとりロック〉とかそういう感じなんですよ。これ、受け止めてくれるんかな……?っていう(笑)」
目の前にたくさんの人がいるっていう状況が、言いたいことを言えるアルバムを生み出したんでしょうね。
こやま「そうですね。安心して作ってるところはあると思います。それまでは〈こんなこと言ったら誰も聴いてくれんくなっちゃうんちゃうか?〉とか〈こんなこと言ったら、みんな離れていくんちゃうか?〉みたいなことを思いながら作ってたから」
さっきのリテラシーの話じゃないけど、根本はすごく真面目なんだと思います、このバンドって。
ありぼぼ「そうですね。ファーストの頃はそこを気にして作ってたぐらいで。〈真面目すぎてもな〉みたいな」
こやま「だからアルバムの最後も〈ネコ飼いたい〉で終わって。面白い曲じゃないとみんな離れていっちゃうような気がして。でも今は真面目な曲で締めてもそうは思われへんかって」
で、その真面目さはお父さん? お母さん?(笑)。
ありぼぼ「お父さん(即答)」
もりもと「お父さんですね」
こやま「お父さん、公務員やしなぁ……(笑)」
文=樋口靖幸
撮影=岩澤高雄_The VOICE