LAMP IN TERRENのニューアルバム『The Naked Blues』は、松本大(ヴォーカル)が自身の内面の深いところまで掘り下げ、そこにある心の声がそのまま形になったような作品だ。それは前作『fantasia』をリリースしてから悩み続けた葛藤と戦いの記録であり、さらに声帯ポリープ切除手術による活動休止を経てたどり着いた、バンドの軌跡のようでもある。
『音楽と人1月号』では松本に、この作品に至るまでのこと、その中で気づいた自身の弱さを思い切り語ってもらっているが、ここでは彼以外の3人にインタビューを決行。フロントマンのことを一番近くで見てきた3人に、松本大という人物について、そしてバンドのことをとことん話してもらった。荒波を乗り越えてたどり着いた今。絶対的な関係と信頼があるから、このアルバムは重たくも、しっかりと未来を望む強さがあるのだ。
大屋真太郎(ギター)「俺らだけで何話すんですか?(不安そうな表情)」
松本大がどういう人なのかっていうことをいろいろ聴けたらと。
中原健仁(ベース)「あ、そういう話なら話せる。一気に安心した(笑)」
(笑)その前に、新しいアルバムの手応えや感想を、それぞれ教えてください。
大屋「大の心の状態がけっこう出たなと思ってて。前作『fantasia』とか前々作に比べて自分を隠そうとしない感じになってるのと、大の届けたいっていう意志を俺たちも感じて、聴いてもらうために、より伝わるために、歌と言葉に寄り添うっていうのをちゃんと実践して、うまく形にできたアルバムだなと思います」
中原「ポリープの手術があったことで、歌詞も変わったなと思って。新しい声になるっていう不安が窺える曲もあるし、不安もあるけどここから新しい自分になるんだって覚悟を決めた曲もあるし。そういう状況だったから、より自分の素直な部分を曝け出す必要があったんだろうなって思うし、アイツ自身も出したかったんだろうなって。誰が聴いてもすぐに理解できるような歌詞にどんどんなってきてて。アルバムの名前のとおり、裸と覚悟が見えるアルバムだなって思います」
川口くんはどうですか。
川口大喜(ドラム)「あの、人と音楽がちゃんとリンクしてるなって。単純に普段の大と会話をしてる感じ(笑)。とくに歌詞はそうですよね」
はい。とても深いところまで自分を掘り下げて、弱さとか自信のなさとかを綴ってますよね。しかも、かなり赤裸々に。
大屋「ここまで大が自分のことを歌詞にするっていうのは意外でしたね」
川口「音楽家の松本大、詩人の松本大が出してくる詞としてはびっくりしたけど、でもよくよく考えるとそんなに不思議なことではない(笑)」
中原「〈ま、これが大だよね〉ってなる(笑)」
ふふふ。ここまで自分の内側をえぐるような歌詞を書くって、そうとうシンドイと思うんですよ。そんな彼をそばで見ていて、3人はどういうふうに感じていたのかなと。
大屋「このアルバムで最初にとりかかったのが〈New Clothes〉と〈花と詩人〉?」
中原「そうだね」
川口「〈俺辛えんだ〉みたいなことは口にはしてこなかったけど、まあでも、あの頃は辛そうだった」
大屋「うん。『fantasia』の曲で、大が最終的にちょっと素直になりきれなかった曲がある、みたいなことを言ってて。『fantasia』を出してからも、なかなか新曲ができなかったんですね。で、どうやったら人に受け入れてもらえるんだろうみたいな悩みがある中で出したのが〈New Clothes〉で」
悩んでる時に「俺は恥ずべき裸の王様」って唄い出す曲が来たと(笑)。
中原「コイツ大丈夫かなって思いましたよ(笑)。〈凡人ダグ〉って曲も、歌詞を読んでて俺はちょっと辛くなったんですよね。俺がそう感じるってことは、大はもっと苦しさを味わってるんだろうなと思うし。一緒にいると弱いなとも思うんですけど、なんとかしてやろうって抗ってもがいてるやつでもあって。10何年もアイツとバンドやってるんですけど、今回の歌詞を読んでより近づけた気はしましたね」