違う人と一緒にやるとかは今も思ってないですね。誰かとバンドを組むのはもういい。それはplentyだけでいい
じゃあ今振り返ると、plentyに限らず、バンドってどんなものだと思いますか?
「自分とは別物の何かになるものなんだな、って思いますね。自分はてんびん座のせいか、バランスをとるっていうか、本質的にコントロール・フリークなんですよ。なんでもコントロールしたい。でもバンドって違う人間の集まりだから、摩擦が生じるでしょ? それが悪いわけじゃなくて、むしろ衝動や怒りに繋がって、グルーヴになっていくのがカッコいいものだと思うんです」
では、バンドというものを10年近くやり続けてきたのは何でだったと思う?
「意地、かな。『なんで君がバンドやってるのかわからない』って言われたことがあって。それを認めたくなかったんですよね。俺はバンドに埋まっている自分がいいんだ、って。でもひとりになってみると、やっぱり心地良くて」
なるほどね。
「バンドって共有していくというか、相手の答えを認めてひとつの作品を作っていくけど、ソロだと自分内でやり切れる。今回、ミックスも自分でやってみたんです。やりたかったけどやれなかったことを、全部やってみたんですよ」
全部打ち込みで作ったの?
「ほとんどそうです。事務所のミーティングルームにあるMacと家で。自分の中で完結させた、人の手が全然加わってないものが作りたかった。大きくて広いスタジオできれいな音を録るんじゃなくて、もっとリラックスできる空間で、リラックスしたテイクを重ねていきたかった。そういうアルバム作っていいですか?って聞いたら、いいよって言われたので」
誰か違う人と一緒にやるとかじゃなくて。
「それは今も思ってないですね。誰かとバンドを組むのはもういい。それはplentyだけでいい。もう十分。良かったことも嫌だったことも、あれ以上いらない……関係ないけど、人に説明しようとすると、過去がどうしてもマイナスに聞こえちゃうんだよなあ。それがうっとうしい(笑)」
ネガティヴなことばかりじゃないもんね。
「うん。パソコンで音楽作るのもplentyの中で生みだされたスキルだし、ストリングスアレンジもそうだし、バンドを経験したからこそわかったことだから。ソロとしては1年目ですけど、10年目みたいな感じなんです」
それまでの積み重ねが、『♯1』であると。
「10年目の作品というか、そういう感じもあって。そこでこういうフラットな作品ができたという喜びはすごくある。それを今噛みしめているところです」
さっき〈ピュア〉という言葉が出ましたけど、歌詞にそれを感じるフレーズが多いですよね。
「歌詞は相変わらず苦戦しましたけどね。意志表明みたいなわかりやすい曲も2曲ぐらいあるけど、でもそれも含めて、自分の歌詞の美意識から外れることなく、素直に包み隠さず書けたのがよかった。テクニックを駆使するわけでなく」
とてもフラットにいれるような。
「でもそれも今後どんどん変わっていくと思う。だから今回一番悩んだのはタイトルですね、アルバムのタイトルがそういうことになるから」
ファーストアルバムだから、一番意味を持つしね。
「だから意味ない言葉を探すのに必死だった。背負いたくないわけではないけど、最初に提示するとちょっと意味が違うというか」