五十嵐律人による同名小説をKing & Princeの永瀬 廉主演で映画化。法曹の道を目指す久我清義(永瀬 廉)と幼なじみの織本美鈴(杉咲 花)が通うロースクールでは、在学中に司法試験に合格した結城 馨(北村匠海)が主宰者の模擬裁判“無辜ゲーム”が日々行われていた。数年後、晴れて弁護士となった清義のもとに、馨から久しぶりに無辜ゲームの誘いがくる。しかし、呼び出された場所で目にしたのは、血の付いたナイフを持つ美鈴と、すでに息絶えた馨の姿だった――。本作は、ロースクールに通う同級生の3人が、やがて弁護士、容疑者、死者という立場で複雑に絡み合う本格法廷ミステリー。本作の見どころや撮影裏話を橋本恵一プロデューサーに教えてもらいました。
(これはQLAP!2023年11月号に掲載された記事です)
映画化のいきさつや原作の魅力、映像化する上で意識したことを教えてください。
僕が五十嵐律人さんの小説『法廷遊戯』と出会ったのは2021年の春。弁護士を目指す主人公のセイギこと清義と、セイギの幼なじみの美鈴、模擬裁判ゲームを主宰する天才・馨という3人の物語がとてもフックがあるなと。耳なじみのない法廷用語も出てくるのですが、そういった難解さを凌駕するような二転三転して伏線を回収する展開がとても魅力的だと感じたんですよね。わりとボリューム感のある小説ですが、これを映画の尺のスピード感で描いたらおもしろいのではないかと思って、映画化の話を進めていきました。
それぞれ過去や秘密を抱える3人の少年少女たちが、たまたま出会ったことで不幸な出来事に見舞われてしまう。でも、そんな状況下でお互いに認め合う部分があったりと、一概に善悪だけでは語れない3人の駆け引きや友情といった一筋縄ではいかない三角関係がおもしろい。物語の軸となる3人のキャラクター性を大事に描いたので、そこもぜひ楽しんでいただけたらと思います。


主演の永瀬 廉くんのキャスティング理由や魅力とは?
セイギは原作でも感情が読み取りづらいキャラクター。感情に関する描写が書かれてはいるのですが、それが表に出てきづらいところがある。永瀬さんは、以前ご一緒した『うちの執事が言うことには』の頃から、瞳に力を感じつつも、良い意味でどこか感情が読み取れないミステリアスな魅力があるなと感じていました。そこから数年が経ち、さらに深みのあるお芝居をされるようになり、良い成熟のされ方をされているなと。年齢的にも、セイギにぴったりだと思ってお声掛けさせていただきました。
クランクイン初日がお寺にお墓参りをするシーンの撮影日だったんですが、積極的に深川栄洋監督に芝居や役作りについての質問や提案をされていて、初日からすごく良い空気感でしたね。弁護士の役を演じるにあたって、実際の裁判を傍聴されたりもしていて。裁判の傍聴はスタッフが事前に予約できるものでもなく、ご自身で行っていただくしかないので、役と向き合う真摯な姿勢にもとても感激しました。

杉咲 花さん、北村匠海さんのそれぞれの魅力は?
杉咲さんは、まだ20代半ばとは思えないほど、お芝居に深みがある方。美鈴という役は感情が出しづらく、かなり難易度が高い役だったと思うのですが、演じきった杉咲さんの演技力はさすがでした。接見室で美鈴とセイギが感情をぶつけ合うシーンは緊張感が伝わってきて、モニター越しに見ていて震える感覚を覚えましたね。
馨は、カリスマ性とミステリアス性の両方を掛け合わせたような役で、非常に存在感がある。そこで、立っているだけで説得力を感じさせる北村さんにお願いしました。永瀬さんとも共演経験があり、お二人は現場でも楽しそうでしたね。存在感のある同世代の3人がこのタイミングで揃ったことも見どころの一つだと思うので、どんな化学反応を見せるのかにも期待していただけたらと思います。


深川監督の演出や、監督とキャストのやりとりで印象的だったことはありますか?
深川監督は「そう来ますか!」というような、俳優も予測のできない演出のボールの投げかけをされる方で。永瀬さんはそれを柔軟に受け止めて、自分なりに解釈して、監督とのキャッチボールを楽しんでいる印象でしたね。セイギの想いが溢れるシーンでは、監督が永瀬さんに「泣きそうだと思っている時は泣いちゃダメだ」と伝えていたのも印象的でした。
北村さんは以前にも深川監督作品に出演経験があり、顔合わせの段階から監督のことをとても好きなことがにじみ出ていて。元々仲がいい永瀬さんにも事前に深川監督の話をされていたみたいです。杉咲さん含め、皆さんが監督の演出に意表を突かれながらも目を輝かせていました。

“模擬裁判”と“法廷”、印象的な2つの裁判シーンのロケ地のこだわりは?
原作では法廷を模した教室が舞台だった“無辜ゲーム”のシーンは、終盤の法廷シーンとは雰囲気を変えたくて、映画では大学の敷地内にある地下の洞窟という設定で撮影をしました。クレバーに見えるであろうロースクール生が、実際の大人の裁判のシリアスさとはまた違って、裏で人の目を盗んでやっている感を出すためにもミステリアスな洞窟が良いなと思ったんですよね。気温が10度くらいの洞窟ですごく寒かったのですが、出演者の皆さんも理解してくださり、良いシーンになりました。
セイギが弁護士になってからの法廷シーンは、裁判所でのリアルな法廷。緊張感が高まる中で、専門用語を交えた長ゼリフは大変だったと思うのですが、永瀬さんは大変さを全く見せずに落ち着いてこなされていて。しっかりと準備をされたんだろうなとあらためて感じましたね。


現場での永瀬くんの様子や、チームの雰囲気はいかがでしたか?
永瀬さんは、自然体で柔らかい雰囲気を醸し出す方。早朝でも夜遅くでも、爽やかにあいさつしてくださって。主役の永瀬くんがそういう人だからこそ、現場はニュートラルな空気に包まれていましたね。メインキャストの3人は同世代ということもあり、合間は雑談したり穏かな空気感。永瀬くんと杉咲さんのどちらとも共演経験のある北村さんがハブとして、会話のノリを作っている印象でした。3人とも集中力が高く、オンオフの切り替えが素晴らしくて驚きましたね。

文=小松香里
映画『法廷遊戯』
(東映配給/公開中)
出演:永瀬 廉、杉咲 花、北村匠海 ほか
©五十嵐律人/講談社 ©2023「法廷遊戯」製作委員会